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小規模企業共済制度を活用した相続対策のポイント

泣きながらほほえむ妻

1 小規模企業共済制度とは?

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

小規模企業共済制度は、中小企業の経営者や役員、個人事業主の方が、将来の退職や廃業に備えて資金を積み立てる制度です。掛金は全額が所得控除の対象となり、毎年の所得税・住民税の節税効果が期待できます。

本制度は、老後資金の確保という本来の目的だけでなく、加入者が亡くなった場合には相続税対策としても活用することが可能です。

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2 共済金と相続税の関係

小規模企業共済の共済金が死亡退職金として扱われ、非課税枠の適用を受けるためには、以下の事業継続要件と3年以内支給確定要件を満たす必要があります。

死亡退職金として認められる要件

事業継続要件:共済契約者が死亡する直前まで、個人事業主または会社等の役員として事業に従事していること

3年以内支給確定要件:相続開始から3年以内に共済金の支給が確定すること

これらの要件を満たさない場合、共済金は死亡退職金ではなく「債権」として本来の相続財産に含まれ、非課税枠の適用を受けることができません。

たとえば、個人事業主が事業を廃業してから数年後に亡くなった場合や、会社役員が退任してから亡くなった場合には、共済金の受給権は相続財産として課税対象となりますので注意が必要です。

共済金の受け取り方によって、課税の取り扱いが異なります。加入者本人が生前に共済金を受け取った場合には所得税の課税対象になりますが、本人が亡くなり、遺族が共済金を受け取る場合には「死亡退職金」として相続税の対象となります

この死亡退職金は、相続税法上の「みなし相続財産」に該当し、以下の非課税枠が適用されます。

非課税枠:500万円 × 法定相続人の数

たとえば、法定相続人が2人いる場合は1,000万円まで非課税となり、相続財産の総額から除外されます。

3 制度活用時の注意点

相続税対策として小規模企業共済を活用する際には、いくつかの重要な注意点があります。

情報元:共済サポートnavi 中小機構

1. 老後資金としては使えない場合がある

共済金を老後資金として生前に使ってしまうと、相続税の非課税枠は適用できません。相続対策として活用するには、共済金を死亡時に遺族が受け取ることが前提になります。

2. 受取人を自由に指定できない

小規模企業共済では、生命保険とは異なり、共済金の受取人を契約者が自由に指定することができません。共済金の受給権者は、法律で配偶者が第1順位と定められており、民法上の法定相続とは異なる点に注意が必要です。

3. 二次相続への影響

配偶者が共済金を受け取ると、一次相続では配偶者控除により税額が軽減される可能性がありますが、その配偶者が亡くなった際の「二次相続」では、取得した共済金も含めて課税対象となります。将来の二次相続まで見据えた資産配分の検討が必要です。
配偶者控除と二次相続について >

4. 契約者貸付のある場合の取り扱い

小規模企業共済では、掛金の一定範囲内で契約者貸付を受けることができますが、相続発生時の取り扱いには注意が必要です。

相続税での取り扱い 契約者貸付がある場合でも、相続税の計算では「借入れを差し引いた純額」ではなく、「共済金の総額」が相続財産に計上されます。これは生命保険の契約者貸付とは異なる取り扱いです。

具体例 共済金総額:2,000万円 契約者貸付残高:300万円 相続財産計上額:2,000万円(←貸付残高を控除しない) 実際の受取額:1,700万円(←貸付残高を差し引いた金額)

この場合、非課税枠の計算も共済金総額の2,000万円を基準に行われます。一方、貸付残高の300万円は被相続人の債務として債務控除の対象となります。

このため、契約者貸付を多用している場合には、相続税の計算において想定以上の税負担が生じる可能性があります。

5. 過納掛金・前納減額金は「本来の相続財産」になる

小規模企業共済の共済金とは別に、以下の金額がある場合には、これらは共済金には含まれず、相続時には「未収金」として本来の相続財産に含まれます。

本来の相続財産となるもの 過納掛金:納付済み掛金のうち、共済金の計算に含まれない部分 前納減額金:掛金を前納した際の割引相当額 その他未収金:中小機構からの各種還付金等

重要な注意点 これらの金額には死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)の適用はなく、他の遺産と同様に相続税の課税対象となります。

具体例 共済金:1,500万円(死亡退職金・非課税枠適用あり) 過納掛金:100万円(本来の相続財産・非課税枠適用なし) 前納減額金:50万円(本来の相続財産・非課税枠適用なし)

このため、相続税の申告においては、共済金と過納掛金等を明確に区分して計上する必要があります。

相続税の全体像について >

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4 制度の活用にあたって

小規模企業共済は、老後の備えとしての有効性はもちろん、相続税の節税手段としても高い効果が期待できます。特に生命保険と併用することで、それぞれの非課税枠を活かした合理的な資産承継が可能となります。

ただし、制度には独自の制約や注意点があるため、相続人の構成や財産状況を踏まえたシミュレーションが不可欠です。制度の特性を正しく理解し、相続税対策として有効に活用するためには、専門家への相談が推奨されます。

まとめ

小規模企業共済制度は、掛金の全額所得控除に加えて、遺族が共済金を受け取る場合には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が適用される相続税対策にもなり得る制度です。

生命保険と組み合わせて活用すれば、節税効果をさらに高めることができます。ただし、老後資金として使ってしまうと非課税枠は使えなくなり、また、受取人指定や二次相続などの面で注意点も多くあります。

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飯野明宏税理士
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飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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国民年金の死亡一時金とは?相続や税金との関係

1 死亡一時金とは?制度の概要

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

国民年金の「死亡一時金」とは、老齢基礎年金や障害基礎年金を一度も受け取らないまま亡くなった方について、一定の条件を満たす遺族に支給される一時金です。これは、遺族基礎年金や寡婦年金が受給できない場合の救済制度として設けられています。

情報元:日本年金機構 死亡一時金

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2 支給要件(故人側)

以下のすべてを満たしている場合に支給されます:

  • ■国民年金第1号被保険者であったこと(自営業・無職など)
  • ■保険料納付済期間が36ヶ月以上あること(※免除期間も一部換算されます)
  • ■老齢基礎年金や障害基礎年金を一度も受け取っていないこと

情報元:日本年金機構 死亡一時金を受けるとき


3 支給対象者(受け取れる遺族)

支給対象は、以下の順位で故人と生計を一にしていた者です:

  • ■配偶者
  • ■子
  • ■父母
  • ■孫
  • ■祖父母
  • ■兄弟姉妹

※「生計を一にする」とは、同居の有無を問わず、生活費の送金など経済的つながりがあれば該当します。

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4 支給されないケースと選択制

以下のケースでは支給されません

  • ■遺族基礎年金を受給できる場合

  • ■寡婦年金を受給している場合(※ただし、どちらか一方を選択可能)

ポイント:寡婦年金か死亡一時金のどちらかを選ぶ必要があります。


5 支給額と付加保険料

死亡一時金の金額は以下の通り、納付月数に応じて変わります。

保険料納付済月数に応じた一時金額
保険料納付済月数一時金額
36~59月120,000円
60~119月145,000円
120~179月170,000円
180~239月220,000円
240~299月270,000円
300月以上320,000円
  • ■付加保険料を36ヶ月以上納付していた場合、さらに8,500円が加算されます。


6 税務上の取り扱い(税金はかかる?)

結論として、死亡一時金は非課税です。

  • ■所得税:非課税

  • ■相続税:非課税

この理由は、国民年金法により「租税その他の公課を課すことができない」と明記されており、遺族の固有の権利としての支給とされるためです。したがって、相続財産にも含める必要はありません。

⚠️注意:「死亡保険金」や「退職金」などと違い、「みなし相続財産」にも該当しません。

退職金について >

みなし相続財産について >


7 請求手続きと必要書類

提出先:

お住まいの市区町村役場(国民年金窓口)

主な必要書類:

  • ■国民年金死亡一時金請求書

  • ■死亡者の住民票除票

  • ■請求者の住民票

  • ■死亡者の戸籍謄本

  • ■請求者の戸籍抄本(故人との続柄確認)

  • ■年金手帳(あれば)

  • ■預金通帳の写し(受取口座)

  • ■死亡診断書(必要な場合)


8 請求期限に要注意

死亡一時金の請求には2年の時効があります。

  • ■起算日:死亡日の翌日

  • ■期限:2年以内に申請しないと時効により受給権が消滅


9 まとめ:忘れずに請求を

国民年金の死亡一時金は、受給者が年金を一度も受け取っていないまま亡くなった場合の納付保険料の事実上の清算的制度です。相続財産ではなく、遺族の固有権として請求できます。

以下のようなご家庭は、制度の活用を検討しましょう。

  • ■老齢基礎年金をもらう前に急逝した方がいる

  • ■遺族基礎年金や寡婦年金の対象外になった

  • ■保険料納付月数が36ヶ月以上あった

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飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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【相続税】“死んだらあげる”という口約束に法的効力はあるのか?

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

相続の現場では、「父が生前に“死んだらこの家はお前にやる”と言っていた」「母から“預金はあなたに”と伝えられていた」といった、口頭での財産の約束に関するご相談を多くいただきます。これらは法的に有効なのでしょうか?そして、実際にその財産を受け取るにはどうすれば良いのでしょうか?

今回は、「口頭での死因贈与契約」に焦点を当て、法的な取扱いやリスク、トラブル回避の方法について詳しく解説します。

口頭での生前贈与について >

1 「死因贈与契約」とは何か?

「死因贈与契約」とは、贈与者の死亡を条件に、受贈者に財産を与える契約です。遺言と異なり、当事者双方の合意により成立する契約であり、死亡により効力が発生します。

死因贈与と遺言の違い

死因贈与契約と遺言の比較
項目死因贈与契約遺言
成立要件契約(双方の合意)一方的意思表示
書面の必要性書面でなくても可(立証困難)民法に定められた法定方式が必須
効力発生時贈与者の死亡時遺言者の死亡時
放棄の可否原則として放棄できない受遺者は放棄可能

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2 口頭の死因贈与契約は有効?有効性とリスク

口頭による死因贈与も法的には契約として成立する可能性があります。ただし最大の問題は、立証の難しさです。

実務上のリスク

  • ■他の相続人が「そんな約束は聞いていない」と否定する可能性
  • ■証拠がないと相続財産から除外される

遺留分侵害のリスク

死因贈与契約で取得した財産も、他の相続人の遺留分を侵害する場合は遺留分侵害額請求の対象となります。特に財産の大部分を一人に贈与する場合は、他の相続人から請求を受ける可能性があります。

相続税の課税対象

死因贈与により取得した財産は、贈与税ではなく相続税の課税対象となります。相続税の計算や申告においても、他の相続財産と合算して評価されることに注意が必要です。

3 死因贈与契約のトラブルを防ぐには?

推奨される対策

  • ■死因贈与契約書を作成(公正証書が望ましい)
  • ■契約時に証人を立てる
  • ■他の相続人の同意を得ておく

とにかく、書面化がもっとも重要です。裁判になった場合でも契約書があれば立証が容易になり、相続人間の紛争を避ける有効な材料になります。

契約書に記載すべき重要事項

死因贈与契約書には以下の事項を明記することが重要です:

  • ■対象財産の特定(不動産なら地番・家屋番号、預金なら金融機関名・口座番号)
  • ■贈与の条件(負担がある場合はその内容)
  • ■契約の撤回に関する取り決め
  • ■契約成立の日付と当事者の署名・押印

名義変更手続きの準備

  • ■不動産の場合:相続登記に必要な書類の準備
  • ■ 預金の場合:金融機関への届出と必要書類の確認
  • ■ 契約書以外の立証資料の保管(録音・録画、第三者の証言等)

相続人への事前説明

他の相続人に対して事前に説明し、可能であれば同意を得ておくことで、後日の紛争を大幅に減らすことができます。透明性を保つことが円満な相続の鍵となります。

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4 まとめ:確実な承継のためには書面化が必須

  • ■口頭での死因贈与は法的に無効ではないが、立証が非常に困難です。
  • ■贈与の意思があるなら、必ず契約書を作成しましょう。
  • ■トラブルを避けるためにも、公正証書や相続人の承諾が有効です。

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相続時の注意点 老人ホームの入居一時金、返還金は遺産?

こんにちは。富士市・富士宮市の飯野明宏税理士事務所です。

高齢の方が老人ホームに入居する際、多くの場合「入居一時金」というまとまった費用を支払います。この入居一時金、被相続人が亡くなった後に一部返還されることがありますが、この返還金は相続税の対象になるのでしょうか? 今回は、老人ホームの入居一時金の返還金が「相続財産」にあたるのか、また課税関係や注意点について詳しく解説いたします。


1 老人ホームの入居一時金とは?

老人ホームに入居する際に支払う「入居一時金」は、居住費やサービス提供に対する前払い金として扱われ、入居者が退去または死亡した際に、一定期間分の未償却分が返還される仕組みです。

返還金は契約内容により異なり、償却期間の途中で亡くなった場合、その未償却分が一定の計算式に基づいて戻ってくることがあります。

返還金の相続税上の取扱い

入居一時金の返還金は、原則として相続税の課税対象となる相続財産です。被相続人の死亡時点で、契約に基づき返還される権利(債権)として相続財産を構成します。

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2 入居時の課税関係にも注意

入居一時金は、入居者本人以外が支払った場合に贈与税の問題が発生することがあります

贈与税が非課税になるケース

夫が妻のために一時金を負担したような場合で、

  • 要介護状態で介護が困難
  • 入居者に資金力がなかった
  • 入居施設が必要最小限で合理的

などの要件を満たせば、「扶養義務に基づく生活費」として贈与税は非課税になります。
生活費の贈与について >

贈与税が課税されるケース

一方で、1億円以上の高級施設などに入居し、要介護でもない場合には、贈与税が課税された判例もあります。入居施設の性質や金額、負担者の動機等が重視されます。


3 返還金は誰のもの?トラブルになりやすい相続上の注意点

入居契約で返還金の「受取人」が指定されている場合でも、その指定が法的効力を持たないことがあります。たとえば、孫など相続人でない者が指定されている場合、他の法定相続人から「贈与にあたるのでは?」と争われるケースもあります。

相続人同士のトラブルを避けるためには、

  • 返還金の扱いを遺言書などで明記する
  • 法定相続人を受取人に指定する

などの対策が重要です。

契約上の受取人指定の効力

入居契約で返還金の受取人を指定した場合:

  • 生命保険金のような固有の権利ではないため、指定があっても相続財産として扱われるのが原則
  • ただし、契約内容や施設の規約によっては指定が有効となる場合もある
  • 受取人指定の有効性については、契約書の詳細な検討が必要

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4 その他の関連論点

利用料の債務控除

死亡後の利用料(特に未払い分)は、相続税計算において「債務控除」の対象となります。また、医療的ケア部分については所得税上の「医療費控除」も受けられる場合があります。


5 まとめ|返還金の税務判断は専門家に相談を

入居一時金の返還金は、原則として「相続財産」に該当しますが、契約内容や支払者、施設の性質によって贈与税の課税が生じる場合もあります。

判断が難しいケースも多いため、相続税や贈与税の専門知識を有する税理士に早めにご相談ください。

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特別寄与料とは?相続税の課税関係と注意点

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

今回は、令和元年の民法改正により新設された「特別寄与料」と、その支払いに伴う相続税の課税関係について詳しく解説します。

 

1 そもそも「特別寄与料」とは?

被相続人の介護や看護など、無償で長年にわたって尽力した親族がいた場合、その労務提供に見合う財産的な対価を「特別寄与料」として請求できる制度が、令和元年7月1日より施行されました。

これにより、相続人でない親族(例:長男の妻など)であっても、相続において金銭請求ができるようになった点が大きなポイントです。

特別寄与料の金額はどう決まる?

特別寄与料の金額は、以下の要素を総合的に考慮して決定されます:

  •  労務提供の期間・頻度・内容
  •  被相続人の介護度や必要性の程度
  •  専門業者に依頼した場合の費用相当額
  •  相続財産の総額に対する割合

実際の金額算定では、介護期間×日当×寄与度といった計算式が用いられることが多く、日当は地域の介護報酬単価(時給1,000円程度)を参考にするケースが一般的です。

 

請求期限に注意

特別寄与料の請求は、相続開始を知った時から1年以内に行う必要があります。この期限を過ぎると請求権が消滅してしまうため、該当する方は早めの行動が重要です。
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特別寄与料が認められる要件

  • ■被相続人の親族であること(民法第1050条)
  • ■被相続人に対して、無償で療養看護その他の労務提供を行っていたこと
  • ■相続人との間で協議が成立するか、家庭裁判所の審判で認定されること

2 特別寄与料と相続税の課税関係

特別寄与料は「遺贈」とみなされる

特別寄与者が相続人から金銭を受け取る場合、その金額は「遺贈により取得したもの」として扱われます(相法4条2号)。したがって、相続税の課税対象となります。

ただし、以下のように税務上の取り扱いには独自の論点があります。

① 特別寄与料の支払者と取得者の関係

  • ■相続人が負担して支払った場合 → 特別寄与者が被相続人から遺贈を受けたとみなす

  • ■被相続人の遺産分割の一環で支払われた場合 → 各相続人の取得財産が減額される形で調整

② 課税対象の金額

  • ■特別寄与料の額が確定すると、その金額は特別寄与者が「遺贈により取得した金額」として、相続税申告書に記載する必要があります。

③ 具体的な計算例

【設例】
被相続人:父(相続財産5,000万円)
相続人:長男、次男
特別寄与者:長男の妻(特別寄与料300万円を取得)

この場合の相続税計算:

  • ■長男の妻:300万円を遺贈により取得→相続税の課税対象
  • ■長男・次男:各自の相続分から特別寄与料分を控除した金額が課税対象

税額軽減の特例について

特別寄与者が被相続人の配偶者や一親等の血族でない場合、相続税額が2割加算される点にご注意ください。長男の妻などは通常この対象となります。


3 課税時期と申告期限の注意点

特別寄与料の支払額が協議または審判で確定した場合には、確定日から10ヶ月以内に申告する必要があります(相法29条、基通29-1)。

特例:相続税申告後に確定した場合

  • ■更正の請求や修正申告により、税務処理をやり直す必要があります(相基通32-1)。

実務上よくあるトラブル

  • ■協議がまとまらず調停・審判に移行するケース
  • ■特別寄与料の支払いが分割払いになる場合の税務処理
  • ■他の相続人が支払いを拒否する場合の対応策

これらの問題を避けるためには、生前から家族間での話し合いや、遺言書での明記を検討することが効果的です。


まとめ

特別寄与料は、家族による献身的な介護や労務に正当な評価を与える仕組みです。ただし、相続税の課税関係が発生するため、専門的な税務判断が不可欠です。

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被相続人の準確定申告の還付金 相続税の取り扱いと注意点

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

相続が発生すると、被相続人が亡くなった年の所得について「準確定申告」を行う必要があります。準確定申告の結果、すでに支払っていた税金の一部が還付金として戻ってくることがありますが、そのとき気になるのが相続税との関係です。

今回は、準確定申告によって戻ってきた還付金や還付加算金(利息部分)が、相続税の対象になるのかどうかを分かりやすく解説いたします。


1 準確定申告とは?まずは基本を確認

被相続人が死亡した年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わりに申告する手続きが「準確定申告」です。

  • 申告期限:相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内

  • 提出先:被相続人の納税地を所轄する税務署

この準確定申告によって、過払いとなっていた所得税が還付されることがあります。

注意点として、納税が必要な準確定申告は4ヶ月以内が厳格な期限ですが、
還付のみの場合は5年以内まで申告可能です。ただし、相続税申告がある場合は、
還付金を相続財産として計上する必要があるため、相続税の申告期限(10ヶ月以内)
までに還付申告を完了させることが実務上重要です。

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準確定申告について >

2 還付金と還付加算金の違いとは?

還付に関連するお金は、大きく2つに分かれます。

還付金と還付加算金の税務上の取扱い
種類内容税務上の取扱い
還付金本来支払う必要がなかった税金の返金(相続税・所得税など)相続税の課税対象となる
還付加算金還付金に対して支払われる「利息的な金額」所得税(雑所得)として課税

3 還付金は相続財産になる!

準確定申告で戻る還付金本体は、相続税の課税対象です。

なぜ相続財産になるのか?

還付金は、被相続人が生前に納めすぎた税金を「取り戻す権利」に基づいて発生するものです。この還付請求権は、死亡時点で被相続人に潜在的に帰属していた財産権とされるため、死亡によって相続人に引き継がれる「相続財産」として扱われます。

したがって、還付金は他の預金や不動産と同様に、相続税の課税価格に算入する必要があります。

還付金の受け取り方法

還付金の受け取りには以下の2つの方法があります:

①各相続人が個別に受け取る方法

  • ■準確定申告書の付表に各相続人の口座情報を記載
  • ■相続分に応じて自動的に按分されて振り込まれる

②代表者が一括受け取りする方法

  • ■「還付金の受領に関する委任状」の提出が必要
  • ■委任状には相続人全員の署名・押印が必要
  • ■後日、代表者から各相続人への分配が必要

4 還付加算金は相続税の対象外!でも所得税がかかる

一方、還付金に付随して受け取る還付加算金(いわば利息)は、性質が異なります。

還付加算金は誰のもの?

これは、被相続人ではなく、還付を受けた相続人本人の所得として扱われます。つまり、相続によって取得したものではないため、相続税の課税対象ではありません。

どんな税金がかかる?

還付加算金は、所得税法上の「雑所得」に分類されます。

  • ■雑所得として確定申告の対象になります。

  • ■他の所得と合算され、総合課税により税額が決まります。

還付加算金の計算方法

還付加算金は以下の計算式で算出されます:
還付金額 × 特例基準割合 × 日数 ÷ 365日

令和6年の特例基準割合:1.6%

計算例

  • ■還付金額:100,000円
  • ■還付までの日数:60日
  • ■計算:100,000円 × 1.6% × 60日 ÷ 365日 = 263円

※1,000円未満の場合は還付加算金は付かない
※100円未満は切り捨て

よくある申告漏れと注意点

還付加算金の申告漏れに注意!
還付加算金は金額が少額のため申告を忘れがちですが、税務署は把握しているため、
申告漏れがあると連絡を受ける可能性があります。

確認方法

  • ■「国税還付金振込通知書」の「内還付加算金」欄をチェック
  • ■通帳の入金額と申告書の還付金額の差額を確認

給与所得者の特例
年末調整を受けたサラリーマンで、給与以外の所得が年20万円以下の場合は
還付加算金も申告不要となります。

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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