1 死亡一時金とは?制度の概要
こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。
国民年金の「死亡一時金」とは、老齢基礎年金や障害基礎年金を一度も受け取らないまま亡くなった方について、一定の条件を満たす遺族に支給される一時金です。これは、遺族基礎年金や寡婦年金が受給できない場合の救済制度として設けられています。
2 支給要件(故人側)
以下のすべてを満たしている場合に支給されます:
- ■国民年金第1号被保険者であったこと(自営業・無職など)
- ■保険料納付済期間が36ヶ月以上あること(※免除期間も一部換算されます)
- ■老齢基礎年金や障害基礎年金を一度も受け取っていないこと
3 支給対象者(受け取れる遺族)
支給対象は、以下の順位で故人と生計を一にしていた者です:
- ■配偶者
- ■子
- ■父母
- ■孫
- ■祖父母
- ■兄弟姉妹
※「生計を一にする」とは、同居の有無を問わず、生活費の送金など経済的つながりがあれば該当します。
4 支給されないケースと選択制
以下のケースでは支給されません:
■遺族基礎年金を受給できる場合
■寡婦年金を受給している場合(※ただし、どちらか一方を選択可能)
ポイント:寡婦年金か死亡一時金のどちらかを選ぶ必要があります。
5 支給額と付加保険料
死亡一時金の金額は以下の通り、納付月数に応じて変わります。
保険料納付済月数 | 一時金額 |
---|---|
36~59月 | 120,000円 |
60~119月 | 145,000円 |
120~179月 | 170,000円 |
180~239月 | 220,000円 |
240~299月 | 270,000円 |
300月以上 | 320,000円 |
■付加保険料を36ヶ月以上納付していた場合、さらに8,500円が加算されます。
6 税務上の取り扱い(税金はかかる?)
結論として、死亡一時金は非課税です。
■所得税:非課税
■相続税:非課税
この理由は、国民年金法により「租税その他の公課を課すことができない」と明記されており、遺族の固有の権利としての支給とされるためです。したがって、相続財産にも含める必要はありません。
⚠️注意:「死亡保険金」や「退職金」などと違い、「みなし相続財産」にも該当しません。
7 請求手続きと必要書類
提出先:
お住まいの市区町村役場(国民年金窓口)
主な必要書類:
■国民年金死亡一時金請求書
■死亡者の住民票除票
■請求者の住民票
■死亡者の戸籍謄本
■請求者の戸籍抄本(故人との続柄確認)
■年金手帳(あれば)
■預金通帳の写し(受取口座)
■死亡診断書(必要な場合)
8 請求期限に要注意
死亡一時金の請求には2年の時効があります。
■起算日:死亡日の翌日
■期限:2年以内に申請しないと時効により受給権が消滅
9 まとめ:忘れずに請求を
国民年金の死亡一時金は、受給者が年金を一度も受け取っていないまま亡くなった場合の納付保険料の事実上の清算的制度です。相続財産ではなく、遺族の固有権として請求できます。
以下のようなご家庭は、制度の活用を検討しましょう。
■老齢基礎年金をもらう前に急逝した方がいる
■遺族基礎年金や寡婦年金の対象外になった
■保険料納付月数が36ヶ月以上あった