1 相続対策としての生活費・教育費贈与とは?
こんにちは。富士市・富士宮の税理士、飯野明宏です。
相続税の節税対策として「生前贈与」がよく知られていますが、日常的に行われている「生活費や教育費の援助」も、やり方によっては贈与税が非課税になる手軽な相続対策となります。
本記事では、非課税となる「扶養義務者間の生活費・教育費の贈与」について、その根拠と具体的な活用法、注意点を解説します。
第二十一条の三 次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
2 税務上の非課税根拠
原則として、個人間の贈与には贈与税がかかります。しかし、扶養義務者から生活費や教育費として贈与された財産のうち「通常必要と認められるもの」は、贈与税の課税対象としないと規定されています。
この非課税枠は年間110万円の贈与税基礎控除とは別に利用できるため、計画的に活用すれば相続対策に大きな効果を発揮します。
3 非課税になる「扶養義務者」とは?
贈与税法上で非課税となる扶養義務者とは、次の親族関係を指します:
- ■配偶者
- ■直系血族(父母・祖父母・子・孫など)
- ■兄弟姉妹
- ■裁判所により扶養義務者と認められた三親等内の親族
- ■生計を一にする三親等内の親族
祖父母から孫への生活費・教育費の援助も、この枠組みに含まれれば非課税の対象となります。
4 どこまでが非課税?生活費・教育費の具体例
生活費の例
- ■家賃、食費、光熱費
- ■医療費、出産費用、介護費用
- ■結婚・婚姻に伴う家具家電購入費
教育費の例
- ■授業料、教材費、文房具代
- ■塾・予備校の月謝
- ■通学費、修学旅行費、受験料
- ■留学費用
これらが生活・教育のために直接充てられる場合に限り、非課税扱いになります。
5 「通常必要と認められる」範囲の考え方
「通常必要と認められる」とは、被扶養者の年齢や生活状況、扶養者の資力などにより社会通念上妥当と認められる範囲を指します。
例えば、大学生への家賃や生活費支援は通常必要とされますが、数百万円の高級車購入費となると、社会通念上その範囲を超えると判断される可能性があります。
6 非課税とするための3つの条件
- ■必要な都度:生活費や教育費が生じるたびに都度贈与されること。
- ■必要な金額:贈与された金額が過大でないこと。
- ■直接充当:預金などに回さず、生活費・教育費にすぐ使用されること。
これらを満たさないと、贈与税の課税対象となる可能性があります。
7 非課税を確実にするための実務上の工夫
- ■学校や塾に直接振込する
- ■贈与専用口座を設け、支出管理を明確にする
- ■領収書や振込記録を保存する
これらの対策により、税務調査への備えも万全になります。
8 活用できるその他の非課税制度
- ■教育資金の一括贈与(最大1,500万円)
- ■住宅取得等資金の非課税贈与
これらと併用すれば、さらに多角的な相続対策が可能となります。
9 まとめ|生活支援と節税を両立させる贈与の考え方
扶養義務者間での生活費・教育費の援助は、要件を満たすことで非課税で行える実効性の高い相続対策です。
特に「必要な都度」「必要な金額」「直接充当」が最大のポイントです。税務上のルールを理解したうえで計画的に行えば、家族を支援しながら円滑な資産移転を実現できます。
判断が難しい場合は、私たちにご相談ください。