交通事故の損害賠償金に税金はかかる?相続税・所得税の課税関係

2025年5月21日 管理人

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

事故は身体的・精神的な負担に加え、損害賠償金の受け取りに伴う税金の取扱いについても、不安や疑問が生じる場面です。

本記事では、交通事故により損害賠償金を受け取った場合に、相続税所得税がかかるのかどうか、その考え方を解説します。


1 交通事故の損害賠償金に相続税はかかる?

交通事故によって被害者が亡くなり、遺族が加害者から損害賠償金を受け取る場合、原則としてその損害賠償金は相続税の課税対象とはなりません

その理由は、損害賠償金(慰謝料など)が「亡くなった方の財産」ではなく、「遺族自身の権利」として支払われるものであると考えられているためです。したがって、遺族が受け取る慰謝料等は、相続によって取得したものではなく、固有の権利による受領と位置付けられます。

情報元:国税庁 課税される所得と非課税所得

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2 所得税の課税関係~多くは非課税に

遺族が受け取る損害賠償金については、所得税法上も原則非課税とされています。

次のような損害賠償金は非課税となります。

非課税の損害賠償金(主な例)

  • ■事故による負傷に対する治療費
  • ■事故による慰謝料
  • ■事故により収入を失ったことへの休業補償
  • ■車両や建物などの資産の破損に対する物損賠償金
  • ■社会通念上相当と認められる範囲の見舞金

このように、身体や財産への損害に対して支払われる損害賠償金は、所得税の課税対象にならないのが原則です


3 例外的に課税されるケースもある

損害賠償金がすべて無税というわけではありません。以下のようなケースでは相続税や所得税の対象となることがあります。

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1. 被害者本人が「受け取る権利」を有していた場合

加害者に対して損害賠償請求をしており、裁判中または和解が成立していたようなケースで、被害者本人が損害賠償金を受け取ることが確定していた場合、その「損害賠償請求権」が相続財産とされ、相続税の対象となります。

2. 損害賠償金が「事業に関する補填」の場合

事業に関連する以下のような賠償金は、所得税法上の非課税対象とはならず、事業所得雑所得として課税されることがあります。

  • ■壊れた商品に対する賠償金(棚卸資産の補填)

  • ■仮店舗の家賃補償など経費補填に相当する金額

  • ■配送用車両の破損に対する補填(ただし損金算入の関係に注意)

このような場合には、損害賠償金の一部または全部が課税対象となるため、個別の検討が必要です。

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4 損害賠償請求権が相続された場合の評価方法

損害賠償請求権が相続された場合、その評価額は財産評価基本通達に基づいて計算されます。ただし、具体的な損害額が未確定である場合には、相続開始後の和解や判決内容に基づき、受け取った金額をもって評価されるのが一般的です。

実務では、相続税申告において「請求権があることを申告書に記載し、後日修正申告する」という対応になる可能性が高いです。


5 まとめと実務上の注意点

交通事故に伴う損害賠償金の税務処理は、支払目的や受領者、事故との関係性によって異なります。主な整理は以下のとおりです。

損害賠償金の所得税・相続税における取扱い比較
項目所得税相続税
遺族への慰謝料(死亡慰謝料)非課税非課税
被害者本人が生前に受け取る権利を有していた損害賠償金非課税課税対象(請求権)
物損賠償(私用車・家屋等)非課税非課税
事業資産の補填(営業車・機材など)原則課税該当すれば課税対象

損害賠償金のように、相続財産として見落とされがちな項目についても、場合によっては課税対象となる可能性があります。不安がある場合や判断に迷う場合は、税理士などの専門家にご相談されることをおすすめします。

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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