相続税評価額の基本と計算方法|土地・建物・預金・株式などの評価

2025年5月9日 管理人

1 「相続税評価額」とは?

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

相続税評価額とは、相続税を計算するために国が定めた“評価のルール”に基づいて算出される金額です。

現金や預金であれば「相続開始時(被相続人が亡くなった時等)の残高」で評価できますが、不動産や株式などは「市場価格」と「評価額」に、原則としてズレが生じるため、一定の計算ルールが用意されています。

たとえば1億円の土地でも、評価額は8,000万円以下になることもあります。

なぜ相続税評価額を正確に把握する必要があるのでしょうか?
相続税の申告義務は、相続財産の合計額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に発生します。評価額を正しく算出できなければ、申告の必要性すら判断できません。また、過大評価による無駄な税金の支払いや、過少評価による税務調査のリスクも避けられます。

建物


2 土地の評価方法は2種類|路線価方式と倍率方式

2-1. 路線価方式

情報元:国税庁  土地家屋の評価(相続税評価額の基本)

情報元:国税庁 路線価方式による宅地の評価

国税庁が毎年7月に公表している「路線価」に、土地の面積と持分割合をかけて算出します。

実務的には次の式の減額割合の部分に専門性が必要であり、相続税が難しいといわれる理由でもあります。

計算式:

地積 × 路線価 × 持分 × 減額割合= 相続税評価額

例)200㎡ × 180,000円 × 1/2 = 1,800万円

用意するもの:

  • 固定資産税の納税通知書(地積確認)

  • 登記簿謄本(持分割合の確認)

  • 国税庁の路線価図(路線価の確認)

路線価評価について >

2-2. 倍率方式(市街化調整区域や郊外)

情報元:国税庁 倍率方式による土地の評価

固定資産税評価額に、国税庁の倍率表に記載された「倍率」を掛けます。

倍率評価だとしても、簡単というわけではなく、どの倍率を適用するのか、雑種地の評価をどうするか等、難しい論点もあります。

計算式:

固定資産税評価額 × 倍率 × 持分 = 評価額

例)1,000万円 × 1.1 × 1/1 = 1,100万円


3 土地の評価を下げるための減額要素とは?

土地の相続税評価は、さまざまな事情に応じて減額されることがあります。

3-1. 貸家建付地

アパートや貸家が建っている土地は、約20%の評価減。

賃貸用不動産について >

3-2. 借地権・借家権

借りている土地や貸している建物の権利部分も評価に影響。借地権割合や借家権割合を考慮します。

3-3. 地積規模の大きな宅地

500㎡以上の広大な土地は、最大35%以上の評価減となる可能性もあります。
情報元:国税庁 地積規模の大きな宅地の評価

3-4. 小規模宅地等の特例

一定の要件を満たす自宅や事業用の土地は、最大80%の評価減が認められます。

小規模宅地等の特例について >

3-5. 評価減適用時の注意点

これらの減額特例を適用する際は、要件の確認が重要です。特に小規模宅地等の特例は、居住継続要件や事業継続要件など、厳格な条件があります。適用要件を満たさない場合、後から特例が否認され、追徴税額が発生する可能性もあるため、事前の入念な検討が必要です。

土地


4 建物の評価方法は「固定資産税評価額」でOK

建物の評価は、固定資産税評価額でシンプルに行われます。

  • 自己使用 → 固定資産税評価額

  • 賃貸中 → 固定資産税評価額 × 70%

固定資産税評価額は、各自治体から送られる「納税通知書」で確認できます。


5 金融資産の評価方法まとめ

5-1. 預金

普通預金:相続開始日時点の残高
定期預金:残高+既経過利息

5-2. 上場株式

情報元:国税庁 上場株式の評価

相続発生日を含む以下4パターンのうち「最も低い株価」を採用。

  • 相続開始日の終値

  • 当月の平均

  • 前月の平均

  • 前々月の平均

上場株式の評価について >

5-3. 投資信託

基準価額 × 口数 – 解約時の税金や手数料

投資信託の評価について >

5-4. 非上場株式

純資産価額方式、類似業種比準価額方式、配当還元方式など複雑な評価。税理士による個別評価が必須。

5-5. その他の資産

生命保険金:500万円×法定相続人数の非課税枠あり
退職金:500万円×法定相続人数の非課税枠あり
ゴルフ会員権:時価の70%程度で評価
貴金属・宝石:鑑定価額や売買実例価額

みなし相続財産について >


6 時価との違いに注意!相続税評価額は低めに設定されている

相続税評価額は、原則として時価の8割程度。これは納税のしやすさや、不動産の換金性を考慮したものです。

区分概算比率(例)
時価100%
相続税評価額約80%
固定資産税評価額約70%

7 相続税評価額の理解が、相続対策の第一歩

不動産を中心とした相続財産を把握するためには、「評価額の正しい理解」が欠かせません。

評価の仕方ひとつで、相続税が数百万円単位で変わることもあるのが現実です。

特に土地評価の計算や減額特例は専門的で複雑なので、「土地をどう評価するか」で節税の成否が決まると言っても過言ではありません。


8 まとめ

  • 相続税評価額は、資産の「時価」ではなく、評価基準に基づいた金額で算出される。

  • 土地の評価には「路線価方式」と「倍率方式」の2種類がある。

  • 減額特例や小規模宅地の特例を活用すると、大幅な評価減が可能なケースも。

 

コラム最下署名

相続税の専門院

飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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