相続税評価額の基本と計算方法|土地・建物・預金・株式などの評価
目次
第1章|「相続税評価額」とは?
相続税評価額とは、相続税を計算するために国が定めた“評価のルール”に基づいて算出される金額です。
現金や預金であれば「相続開始時(被相続人が亡くなった時等)の残高」で評価できますが、不動産や株式などは「市場価格」と「評価額」に、原則としてズレが生じるため、一定の計算ルールが用意されています。
たとえば1億円の土地でも、評価額は8,000万円以下になることもあります。
第2章|土地の評価方法は2種類|路線価方式と倍率方式
2-1. 路線価方式
国税庁が毎年7月に公表している「路線価」に、土地の面積と持分割合をかけて算出します。
実務的には次の式の減額割合の部分に専門性が必要であり、相続税が難しいといわれる理由でもあります。
計算式:
地積 × 路線価 × 持分 × 減額割合= 相続税評価額
例)200㎡ × 180,000円 × 1/2 = 1,800万円
用意するもの:
固定資産税の納税通知書(地積確認)
登記簿謄本(持分割合の確認)
国税庁の路線価図(路線価の確認)
2-2. 倍率方式(市街化調整区域や郊外)
固定資産税評価額に、国税庁の倍率表に記載された「倍率」を掛けます。
倍率評価だとしても、簡単というわけではなく、どの倍率を適用するのか、雑種地の評価をどうするか等、難しい論点もあります。
計算式:
固定資産税評価額 × 倍率 × 持分 = 評価額
例)1,000万円 × 1.1 × 1/1 = 1,100万円
第3章|土地の評価を下げるための減額要素とは?
土地の相続税評価は、さまざまな事情に応じて減額されることがあります。
3-1. 貸家建付地
アパートや貸家が建っている土地は、約20%の評価減。
3-2. 借地権・借家権
借りている土地や貸している建物の権利部分も評価に影響。借地権割合や借家権割合を考慮します。
3-3. 地積規模の大きな宅地
500㎡以上の広大な土地は、最大35%以上の評価減となる可能性もあります。
3-4. 小規模宅地等の特例
一定の要件を満たす自宅や事業用の土地は、最大80%の評価減が認められます。
第4章|建物の評価方法は「固定資産税評価額」でOK
建物の評価は、固定資産税評価額でシンプルに行われます。
自己使用 → 固定資産税評価額
賃貸中 → 固定資産税評価額 × 70%
固定資産税評価額は、各自治体から送られる「納税通知書」で確認できます。
第5章|金融資産の評価方法まとめ
5-1. 預金
普通預金:相続開始日時点の残高
定期預金:残高+既経過利息
5-2. 上場株式
相続発生日を含む以下4パターンのうち「最も低い株価」を採用。
相続開始日の終値
当月の平均
前月の平均
前々月の平均
5-3. 投資信託
基準価額 × 口数 - 解約時の税金や手数料
5-4. 非上場株式
純資産価額方式、類似業種比準価額方式、配当還元方式など複雑な評価。税理士による個別評価が必須。
第6章|時価との違いに注意!相続税評価額は低めに設定されている
相続税評価額は、原則として時価の8割程度。これは納税のしやすさや、不動産の換金性を考慮したものです。
区分 | 概算比率(例) |
---|---|
時価 | 100% |
相続税評価額 | 約80% |
固定資産税評価額 | 約70% |
第7章|相続税評価額の理解が、相続対策の第一歩
不動産を中心とした相続財産を把握するためには、「評価額の正しい理解」が欠かせません。
評価の仕方ひとつで、相続税が数百万円単位で変わることもあるのが現実です。
特に土地評価の計算や減額特例は専門的で複雑なので、「土地をどう評価するか」で節税の成否が決まると言っても過言ではありません。
第8章|まとめ
相続税評価額は、資産の「時価」ではなく、評価基準に基づいた金額で算出される。
土地の評価には「路線価方式」と「倍率方式」の2種類がある。
減額特例や小規模宅地の特例を活用すると、大幅な評価減が可能なケースも。