賃貸用不動産を相続したときの相続税評価
目次
第1章|賃貸物件の相続税はなぜ評価が下がるのか?
賃貸物件は自宅などの「自用不動産」とは異なり、相続税評価額が低くなるケースが多くあります。理由は、「貸している=自由に使えない」ため、経済的価値が制限されていると判断されるからです。
賃貸物件の相続税評価には、次の3つの要素が影響します:
借地権割合
借家権割合
賃貸割合(入居率)
第2章|建物の相続税評価額はどう決まる?
2-1.固定資産税評価額がベース
相続税評価額の算定は、「固定資産税評価額」をベースに計算されます。賃貸中の場合は、以下の式で評価額が下がります。
建物の評価式:固定資産税評価額 ×(1-借家権割合×賃貸割合)
2-2.【新しい例】アパートの建物評価
固定資産税評価額:5,400万円
借家権割合:30%(法令により一律)
賃貸割合:75%(全8室中6室が賃貸中)
計算式:5,400万円 ×(1-0.3×0.75)=5,400万円 × 0.775=4,185万円
したがって、この建物の相続税評価額は4,185万円になります。
第3章|土地(貸家建付地)の評価方法
賃貸物件が建っている土地は「貸家建付地」とされ、以下の式で評価額を圧縮できます。
土地の評価式:自用地価格 ×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
3-1.【新しい例】土地の評価
自用地価格:4,800万円
借地権割合:60%
借家権割合:30%
賃貸割合:75%
計算式:4,800万円 ×(1-0.6×0.3×0.75)=4,800万円 × 0.865=4,152万円
この土地の相続税評価額は4,152万円になります。
第4章|賃貸割合と床面積の確認方法
4-1.賃貸割合の確認
全体の床面積:400㎡
入居中の部屋の床面積:300㎡
→ 賃貸割合:300㎡ ÷ 400㎡ = 75%
空室が一時的で、入れ替えによるものである場合は、判断によって賃貸扱いに含められるケースもあります。
4-2.面積の確認方法
登記簿謄本または登記事項証明書で「専有部分の面積」を確認可能です。
第5章|ローンがある場合の控除
賃貸物件にローンが残っている場合、その残高は「債務控除」として相続財産から差し引けます。
5-1.【新しい例】
評価額合計(建物+土地):4,185万円+4,152万円=8,337万円
アパートローン残高:6,000万円
→ 差引:8,337万円-6,000万円=2,337万円
基礎控除(相続人1人):3,000万円+600万円×1人=3,600万円
→ 課税対象にならず、相続税は発生しない可能性あり
第6章|小規模宅地等の特例でさらなる節税
6-1.概要
No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
賃貸事業用の土地に関しては、一定の条件を満たすことで、最大200㎡までの評価額を50%に減額できます。
6-2.【新しい例】
対象土地面積:180㎡(特例適用可)
評価額:4,152万円
→ 減額後:4,152万円 × 50%=2,076万円
第7章|まとめ
賃貸用不動産は評価が圧縮される要素が多く、生前の相続対策により、相続税が減少する可能性があります。
借家権割合や借地権割合の把握
賃貸割合と床面積の確認
小規模宅地等の特例活用
ローンによる債務控除