賃貸用不動産を相続したときの相続税評価

2025年5月9日 管理人

賃貸用不動産を相続したときの相続税評価


第1章|賃貸物件の相続税はなぜ評価が下がるのか?

賃貸物件は自宅などの「自用不動産」とは異なり、相続税評価額が低くなるケースが多くあります。理由は、「貸している=自由に使えない」ため、経済的価値が制限されていると判断されるからです。

賃貸物件の相続税評価には、次の3つの要素が影響します:

  • 借地権割合

  • 借家権割合

  • 賃貸割合(入居率)


第2章|建物の相続税評価額はどう決まる?


No.4614 貸家建付地の評価(貸家が建つ土地の評価)

2-1.固定資産税評価額がベース

相続税評価額の算定は、「固定資産税評価額」をベースに計算されます。賃貸中の場合は、以下の式で評価額が下がります。

建物の評価式:
固定資産税評価額 ×(1-借家権割合×賃貸割合)


2-2.【新しい例】アパートの建物評価

  • 固定資産税評価額:5,400万円

  • 借家権割合:30%(法令により一律)

  • 賃貸割合:75%(全8室中6室が賃貸中)

計算式:
5,400万円 ×(1-0.3×0.75)=5,400万円 × 0.775=4,185万円

したがって、この建物の相続税評価額は4,185万円になります。


第3章|土地(貸家建付地)の評価方法

賃貸物件が建っている土地は「貸家建付地」とされ、以下の式で評価額を圧縮できます。

土地の評価式:
自用地価格 ×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)


3-1.【新しい例】土地の評価

  • 自用地価格:4,800万円

  • 借地権割合:60%

  • 借家権割合:30%

  • 賃貸割合:75%

計算式:
4,800万円 ×(1-0.6×0.3×0.75)=4,800万円 × 0.865=4,152万円

この土地の相続税評価額は4,152万円になります。


第4章|賃貸割合と床面積の確認方法

4-1.賃貸割合の確認

  • 全体の床面積:400㎡

  • 入居中の部屋の床面積:300㎡
    → 賃貸割合:300㎡ ÷ 400㎡ = 75%

空室が一時的で、入れ替えによるものである場合は、判断によって賃貸扱いに含められるケースもあります。

4-2.面積の確認方法

登記簿謄本または登記事項証明書で「専有部分の面積」を確認可能です。


第5章|ローンがある場合の控除

賃貸物件にローンが残っている場合、その残高は「債務控除」として相続財産から差し引けます。

5-1.【新しい例】

  • 評価額合計(建物+土地):4,185万円+4,152万円=8,337万円

  • アパートローン残高:6,000万円

→ 差引:8,337万円-6,000万円=2,337万円

基礎控除(相続人1人):3,000万円+600万円×1人=3,600万円

→ 課税対象にならず、相続税は発生しない可能性あり


第6章|小規模宅地等の特例でさらなる節税

6-1.概要


No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

賃貸事業用の土地に関しては、一定の条件を満たすことで、最大200㎡までの評価額を50%に減額できます。


6-2.【新しい例】

  • 対象土地面積:180㎡(特例適用可)

  • 評価額:4,152万円
    → 減額後:4,152万円 × 50%=2,076万円


第7章|まとめ

賃貸用不動産は評価が圧縮される要素が多く、生前の相続対策により、相続税が減少する可能性があります。

  • 借家権割合や借地権割合の把握

  • 賃貸割合と床面積の確認

  • 小規模宅地等の特例活用

  • ローンによる債務控除

相続税の専門院

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

 

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