【相続税評価】投資信託の種類別の評価方法と注意点

2025年5月17日 管理人

近年、NISAなどの非課税制度の普及により、一般の方でも「投資信託」への投資が身近になりました。もし投資信託を保有している方に相続が発生した場合、投資信託は相続税の対象となり、適切に評価して申告する必要があります。

この記事では、投資信託の種類ごとに相続税評価方法を解説し、申告時に注意すべき点を整理します。

情報元:国税庁 貸付信託・証券投資信託の評価


1 投資信託の相続税評価における区分

1 日々決算型(MRF・外貨建てMMFなど)

日々決算型とは、毎営業日に運用損益の計算(決算)を行い、利息等を日次で再投資する投資信託です。主に安全性の高い短期金融資産(公社債等)に投資する。

  • MRF(マネー・リザーブ・ファンド):普通預金の代替商品として、証券会社の買付余力に利用されるファンド。

  • 外貨建てMMF:外貨建てで運用されるマネー・マーケット・ファンド。利子は日々発生し、再投資される。

一般的に元本割れリスクが低く、短期運用資金の待機場所として利用される。

2 上場投資信託

(ETF・J-REITなど)

上場投資信託とは、証券取引所に上場している投資信託であり、株式と同様に市場でリアルタイムに売買可能な金融商品です。

  • ETF(Exchange Traded Fund):株価指数等に連動するように設計されたファンド。

  • J-REIT(Japan Real Estate Investment Trust):複数の不動産に投資し、賃貸収入や売却益を投資家に分配するファンド。

価格は需給により変動するが、透明性が高く、流動性も高いのが特徴。

3 一般投資信託(上記以外)

一般投資信託とは、証券取引所に上場していない投資信託で、証券会社や銀行を通じて購入・解約する非上場型のファンドを指します。

  • インデックスファンド:日経平均やTOPIXなどに連動するファンド。

  • アクティブファンド:運用者が独自の戦略で収益を目指すファンド。

原則として1日1回、基準価額(NAV)が算出され、その価格で売買される。長期運用に適した設計が多い。

投資信託へ投資


2 種類別の相続税評価方法

● 日々決算型投資信託

評価額 = 基準価格×口数+未収分配金-源泉税-信託財産留保額・解約手数料

※再投資未済の分配金、外貨建てMMFは邦貨換算(TTB)に注意。

MRF・MMFの相続税評価について >

● 上場投資信託

評価額 = 「最も低い価格」× 口数

  • 相続開始日の終値
  • 当月平均終値
  • 前月平均終値
  • 前々月平均終値

上場株式と同様に、相続開始日が休日なら前後の取引日の平均を使用します。

● 一般投資信託(私募も含む)

評価額 = 基準価格×口数-源泉税(※私募のみ控除可)-信託財産留保額・解約手数料


3 投資信託を相続する手続きと実務上の注意点

手続きの流れ

  1. 証券会社へ死亡連絡 → 口座凍結
  2. 残高証明書を取得
  3. 遺言書の確認・提出(自筆は検認必要)
  4. 遺産分割協議書を作成
  5. 相続人名義で証券口座開設 → 相続移管

注意点

  • 残高証明書は評価額とは異なる → 評価益・税・手数料を控除し再計算
  • 含み益・含み損も相続対象(譲渡益課税の可能性)
  • 日々変動のある資産であることを認識 → 遺産分割トラブル防止策も必要
  • 未収分配金・配当期待権の取り扱いも忘れずに

4 まとめ

投資信託の相続税評価は、種類や管理口座に応じて異なる計算ルールがあり、源泉徴収税額や留保額等の扱いにも注意が必要です。特に、評価額の過大申告による税負担や、逆に過小評価による申告漏れには十分な注意が必要です。

 

 

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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