雑誌『週刊税務通信 No.3720』の取材により、相続税・贈与税に関する特別国税調査官による実地調査の状況が明らかになりました。令和元年事業年度とは、令和元年7月から令和2年6月のことです。
特別国税調査官(以下、「特官」)は、主として規模の大きな事業者を担当していたのですが、現在は、さまざまな担当を担っているようです。その中に税目横断調査というものがあり、所得税・法人税・相続税・消費税などを、すべて同時に調査するということもあります。今回は、特官に対する取材ですので、かなりの富裕層に関する相続税・贈与税に関する調査ということでしょう。このデータから、一般の相続税調査についても、一定の示唆が得られると思います。
相続税の調査完了件数は、2075件そのうち要更正件数つまり、強制的に税金を課税された件数は1752件であり84.4%です。他は、何も問題がなかったか、修正申告となったのでしょう。
贈与税について、調査完了件数677件。そのうち要更正件数は654件で96.6%となっています。つまり特官のターゲットとなった案件については、かなり高い確率で更正となっています。特に、贈与税については100%弱であり、申告を失念しないよう、特に注意が必要です。
注目すべきなのは、相続税の重加算税の賦課率です11.2%と10%を超えています。特官のターゲットとなったもののうち、仮装隠蔽、つまり「悪質」と判断された人が10%超もいるということです。個人的には、「大変な思いをして、蓄財した資産について税金をとられたくない。代々引き継いできた財産を守りたい。」という気持ちはとてもよくわかります。しかし、私は税理士です。税法どおりに相続税の申告をすることが仕事です。個人的な観点、あるいは、税理士としての観点、いずれの観点からであっても、この数字を見ると、「悪質」とみなされる申告であったり、無申告はやめておいた方がよいということが、よくわかります。
富裕層の方はくれぐれも、重加算税の対象とならないように、慎重かつ誠実に、相続税の申告を行わなくてはいけません。
一般の方も、更正ではなく、多くは修正申告となるものと思いますが、この調査結果を真摯に受け止め、正確な相続税の申告を行った方がよい、ということを肝に銘じるべきだと思います。