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相続税の「連帯納付義務」とは?他の相続人が払わないとあなたの財産が狙われる可能性も

1 はじめに

相続が発生すると、様々な手続きに加えて、相続税の申告・納税が必要になります。通常、相続税は各相続人が自分の相続分に応じて計算し、納付するものです。

しかし、「もし他の相続人が税金を納めなかったらどうなるの?」と疑問に思ったことはありませんか?

相続税制度には「連帯納付義務」という仕組みがあり、これを知らないと予期せぬ税負担を負わされたり、自分の財産に影響が及んだりする可能性があります。

連帯責任

連帯納税義務国税庁1

連帯納税義務国税庁2

(出典:国税庁 ➌ 相続税の 納 付

今回は、この重要な制度について詳しく解説します。


2 相続税の連帯納付義務とは?

相続税の連帯納付義務とは、同じ被相続人から財産を受け取った人の中で、誰かが相続税を納めなかった場合に、他の相続人等連帯してその未納分を納めなければならない義務のことです。

この義務は財産を相続した時点から自動的に発生し、原則として解除することはできません。

税金を確実に徴収することを目的として法律で定められており、一度発生すると原則として回避することはできない重要な制度です。


3 連帯納付義務の対象者

3-1 対象となる人

連帯納付義務の対象となるのは以下の人たちです:

法定相続人

遺言によって財産を受け取った人(受遺者)

相続時精算課税制度を利用して生前に財産を贈与された人

3-2 相続放棄をした場合

家庭裁判所で正式な相続放棄手続きをした人は、原則として連帯納付義務から外れることができます。

ただし、相続放棄をしていても死亡保険金や死亡退職金を受け取っている場合は注意が必要です。これらは「みなし相続財産」として課税対象となるため、受け取った人は連帯納付義務の対象に含まれます

また、遺産分割協議での「相続分の放棄」は法律上の相続放棄とは異なり、連帯納付義務は発生するので注意しましょう。


4 いくら払う可能性があるのか?

4-1 負担額の上限

連帯納付義務で負担する税額には上限があります。

限度額 = 相続で取得した遺産の額 – 納付済みの相続税額

例えば、相続で1,000万円の遺産を取得し、自分の相続税として200万円を既に納付していた場合、連帯納付義務の限度額は800万円となります。自分が相続した金額以上の税金を負担する必要はありません。

4-2 加算される税金と延納の可否

連帯納付義務によって納める税金には、利子税が加算されます。これは相続税が完納されるまでの日数に応じて計算されます。さらに、督促状が届いた日の翌日から2ヶ月を経過すると、延滞税が加算される場合もあります。

また、通常の相続税では延納や物納が認められることもありますが、連帯納付義務による納税については延納が認められていません。税務署から納付を求められた場合、原則として期限内に現金で一括納付する必要があります。


5 他の相続人が滞納した場合の手続きの流れ

相続税の申告・納税期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。期限内に納税がない場合の流れは以下の通りです:

5-1 滞納処分の流れ

税務署が滞納者本人に督促状を発送

本人の財産調査・差し押さえ・競売の実施

滞納者本人に差し押える財産がない場合、連帯納付義務者への請求

5-2 連帯納付義務者への具体的な手続き

「完納されていない旨のお知らせ」が発送され、相続人同士で解決するよう促される

「納付通知書」が発送され、納付すべき税額と納付期限(通知書発送から原則2ヶ月以内)が通知される

2ヶ月経過しても完納されない場合、督促状が発送され、連帯納付義務者も滞納処分の対象となる


6 財産の差し押さえについて

6-1 拒否した場合のリスク

「自分が払うべき税金ではないのに…」と連帯納付を拒否したくなる気持ちは当然です。しかし、連帯納付義務は法律上の義務であり、拒否することはできません。拒否を続けた場合、最終的にはあなたの財産が差し押さえられてしまいます。

6-2 差し押さえの順番

差し押さえの順番は法律で明確に決められていません。一般的には本来の納税義務者から差し押さえることが多いとされていますが、本来の納税義務者に差し押さえできる財産がない場合や、不動産など換金しづらい財産しかない場合は、連帯納付義務者の財産が差し押さえられる可能性が高くなります。

税務署は差し押さえしやすい財産(預金など)を持っている人から順に手続きを進める可能性もあり、納税者側には「本来の納税者から先に差し押さえてほしい」と申し立てる権利は法律上認められていません。


7 連帯納付義務の回避・軽減策

7-1 事前の対策

一度発生した連帯納付義務を回避する確実な方法はありませんが、負担を軽減するための対策はあります:

遺産分割協議での慎重な話し合い

  • 相続税の納税資金も考慮に入れ、現金や預金などの金融資産の取得割合を適切に決める
  • 特定の相続人に不動産などの換価しにくい財産ばかりが集中しないよう配慮する
  • 納税が困難そうな相続人がいる場合は、納税資金も含めて相続させる工夫を検討する

納税資金の管理サポート

  • 特定の相続人に滞納の不安がある場合、他の相続人が納税手続きを代行する
  • 相続税分の現金を一時的に預かり、納税完了後に本人に渡すことを決めておく

7-2 連帯納付義務が免除されるケース

以下のいずれかに該当する場合、連帯納付義務が免除されます:

申告期限から5年を経過した日までに、税務署から滞納者本人に対する納付通知書等が発せられない場合

本来の納税義務者が延納の許可を受けた場合

本来の納税義務者が納税猶予の適用を受けた場合

ただし、申告期限から5年が経過しても、その間に税務署から連帯納付義務者に対して通知が発送されている場合は解除されません。


8 連帯納付した場合の権利と注意点

8-1 求償権について

他の相続人の代わりに税金を納付した場合、本来納めるべきだった相続人に対して、支払った税金の返還を求める権利(求償権を持つことになります。

しかし、税金を滞納するような相手からお金を取り戻すのは現実的に困難なケースが多いのが実情です。

8-2 贈与税の問題

本来支払うべき人の相続税を他の相続人が負担した場合、その負担した金額に対して贈与税が課税される可能性があります。


9 まとめ

相続税の連帯納付義務は、あまり知られていない制度かもしれませんが、知らずにいると自分にとって大きな負担となる可能性がある重要な制度です。

重要なポイント

  • 法律で定められた義務であり、原則として拒否することはできない
  • 他の相続人が滞納した場合、最終的には自分の財産が差し押さえられるリスクがある
  • 一度発生した義務を完全に回避する方法はない
  • 事前の対策が非常に重要

対策のポイント

連帯納付義務によるリスクを避けるためには、遺産分割協議の段階から相続人全員が納税できるよう現金預金の配分などを考慮し、お互いに協力して確実に納税を進めることが非常に大切です。

特定の相続人に滞納のリスクを感じる場合は、納税手続きの代行なども検討する必要があるかもしれません。

相続が発生した際は、相続人同士で相続税の連帯納付義務についてもしっかりと認識を共有し、納税がスムーズに進むよう細心の注意を払いましょう。

もしご不安な点がある場合や、対策について詳しく知りたい場合は、相続税に詳しい専門家(税理士など)に早めに相談することをお勧めします。

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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生活費・教育費の贈与が非課税の場合

1 相続対策としての生活費・教育費贈与とは?

こんにちは。富士市・富士宮の税理士、飯野明宏です。

相続税の節税対策として「生前贈与」がよく知られていますが、日常的に行われている「生活費や教育費の援助」も、やり方によっては贈与税が非課税になる手軽な相続対策となります。

本記事では、非課税となる「扶養義務者間の生活費・教育費の贈与」について、その根拠と具体的な活用法、注意点を解説します。

リンク 国税庁 贈与税がかからない場合

 

相続税法より

(贈与税の非課税財産)
第二十一条の三 次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの

2 税務上の非課税根拠

原則として、個人間の贈与には贈与税がかかります。しかし、扶養義務者から生活費や教育費として贈与された財産のうち「通常必要と認められるもの」は、贈与税の課税対象としないと規定されています。

この非課税枠は年間110万円の贈与税基礎控除とは別に利用できるため、計画的に活用すれば相続対策に大きな効果を発揮します。


3 非課税になる「扶養義務者」とは?

贈与税法上で非課税となる扶養義務者とは、次の親族関係を指します:

  • ■配偶者
  • ■直系血族(父母・祖父母・子・孫など)
  • ■兄弟姉妹
  • ■裁判所により扶養義務者と認められた三親等内の親族
  • ■生計を一にする三親等内の親族

祖父母から孫への生活費・教育費の援助も、この枠組みに含まれれば非課税の対象となります。


4 どこまでが非課税?生活費・教育費の具体例

生活費の例

  • ■家賃、食費、光熱費
  • ■医療費、出産費用、介護費用
  • ■結婚・婚姻に伴う家具家電購入費

教育費の例

  • ■授業料、教材費、文房具代
  • ■塾・予備校の月謝
  • ■通学費、修学旅行費、受験料
  • ■留学費用

これらが生活・教育のために直接充てられる場合に限り、非課税扱いになります。

子供の学校


5 「通常必要と認められる」範囲の考え方

「通常必要と認められる」とは、被扶養者の年齢や生活状況、扶養者の資力などにより社会通念上妥当と認められる範囲を指します。

例えば、大学生への家賃や生活費支援は通常必要とされますが、数百万円の高級車購入費となると、社会通念上その範囲を超えると判断される可能性があります。


6 非課税とするための3つの条件

  • ■必要な都度:生活費や教育費が生じるたびに都度贈与されること。
  • ■必要な金額:贈与された金額が過大でないこと。
  • ■直接充当:預金などに回さず、生活費・教育費にすぐ使用されること。

これらを満たさないと、贈与税の課税対象となる可能性があります。


7 非課税を確実にするための実務上の工夫

  • ■学校や塾に直接振込する
  • ■贈与専用口座を設け、支出管理を明確にする
  • ■領収書や振込記録を保存する

これらの対策により、税務調査への備えも万全になります。


8 活用できるその他の非課税制度

  • ■教育資金の一括贈与(最大1,500万円)
  • ■住宅取得等資金の非課税贈与

これらと併用すれば、さらに多角的な相続対策が可能となります。


9 まとめ|生活支援と節税を両立させる贈与の考え方

扶養義務者間での生活費・教育費の援助は、要件を満たすことで非課税で行える実効性の高い相続対策です。

特に「必要な都度」「必要な金額」「直接充当」が最大のポイントです。税務上のルールを理解したうえで計画的に行えば、家族を支援しながら円滑な資産移転を実現できます。

判断が難しい場合は、私たちにご相談ください。

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小規模企業共済とiDeCoの違いを比較

こんにちは。富士市・富士宮の税理士、飯野明宏です。

小規模企業共済とiDeCoは、どちらも中小企業の経営者や個人事業主が利用できる制度であり、将来の資金準備と節税メリットを兼ね備えています。ただし、制度の目的や仕組み、税制の扱いには明確な違いがあります。本記事では、両者の違いを税制面を中心に解説します。


1 制度の概要と目的の違い

  • 小規模企業共済:中小企業基盤整備機構が運営する「退職金積立制度」。退職・廃業時などに備えた資産形成が目的。


リンク 中小機構 共済制度

  • iDeCo:個人が自ら運用し、老後の年金資産を準備する制度。リスクを取って資産形成を目指す私的年金制度


リンク iDeCo公式


2 加入対象者の違い

  • ■小規模企業共済中小企業の経営者、役員、個人事業主など。業種や従業員数に制限あり。
  • ■iDeCo国民年金被保険者であれば原則加入可能。企業年金制度の有無で掛金上限が異なる。

3 掛金と変更の柔軟性

  • ■小規模企業共済月1,000円~70,000円まで、1,000円単位で変更可能。
  • ■iDeCo:掛金上限は個人事業主で68,000円、会社経営者は23,000円(企業年金なしの場合)。変更は年1回のみ。

 


4 掛金の税制優遇(共通点)

両制度ともに、掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除対象となり、所得税・住民税の節税が可能です。


5 運用方法とリスクの違い

  • ■小規模企業共済:中小機構が運用。元本保証に近く、受取額が安定。
  • ■iDeCo:加入者が自己責任で運用。運用益は非課税だが、元本割れのリスクあり。

小規模企業共済とideco


6 受取時の税金と控除の違い

同じです。同一年内に両制度を年金形式で受け取ると、控除枠を「食い合う」場合もあります。同一年における2つの一時金は合算されて1つの退職所得控除しか適用されません。また、年金形式で両方を受給した場合は、公的年金等控除は合算で計算されます。

  • ■小規模企業共済
    • □一時金:退職所得として退職所得控除適用。
    • □年金:雑所得として公的年金等控除適用。
  • ■iDeCo
    • □一時金:退職所得として退職所得控除適用。
    • □年金:雑所得として公的年金等控除適用。

受取形態により、適用される控除や課税方法が異なるため、総合的な所得との兼ね合いが重要です。


7 併用の可否と戦略

小規模企業共済とiDeCoは併用可能。共済で安定性を重視しつつ、iDeCoでリスクを取り資産形成することで、節税と資産形成の両立が可能です。


まとめ|どちらを選ぶべきか?

  • 小規模企業共済:安定志向。退職金としての性格が強く、元本保証型。
  • iDeCo:積極的な資産形成志向。運用益非課税だが、元本割れリスクあり。

いずれの制度も掛金時の節税効果が高く、併用もできるため、事業状況やライフプラン、リスク許容度に応じて適切に選択することが重要です。

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iDeCoを年金形式で受け取った場合にかかる税金と計算方法

こんにちは。富士市・富士宮の税理士、飯野明宏です。

老後の生活資金を確保する手段として注目されているiDeCo(個人型確定拠出年金)。掛金拠出時には所得控除が受けられ、運用益も非課税といった税制優遇が用意されていますが、受け取り時には課税される点に注意が必要です。

この記事では、iDeCoの給付金を「年金形式」で受け取る場合にかかる税金と、その計算方法について解説します。


1 年金形式で受け取ると「雑所得」に

iDeCoを年金として分割で受け取る場合、受取額は雑所得として扱われます。この雑所得は総合課税の対象となり、他の所得(たとえば公的年金や給与所得など)と合算されて課税額が決まります。

雑所得の課税対象になるという点は、年金形式の受け取りにおける注意点です。

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2 「公的年金等控除」が適用される

雑所得として課税される一方で、iDeCoを年金形式で受け取る場合には公的年金等控除を適用できます。これにより、実際の課税所得額を抑えることが可能です。

控除額は年齢と年金収入によって異なります。

公的年金等に係る雑所得は、次の表のとおりです。

公的年金等控除の範囲内であれば、iDeCo年金に対する所得税はかからない可能性があります。

公的年金控除

公的年金控除2

(出典:国税庁ウェブサイト)公的年金等の課税関係


3 年金受取時の注意点

年金形式で受け取る際は、以下のようなポイントに注意が必要です。

  • ■他の年金との合算に注意:iDeCo以外の公的年金も雑所得として合算されます。

  • ■源泉徴収の仕組み:iDeCoの年金は支給時に源泉徴収が行われることがあります。確定申告により還付される可能性もあります。

iDeCoは、お金を積み立てるときだけでなく、将来お金を受け取るときにも確定申告をしなければならない場合があります。どんなときに必要になるのか、具体的に見ていきましょう。

1. 年金の合計が年間400万円を超える場合

iDeCoを年金として毎月少しずつ受け取る場合、iDeCoと他の年金を合わせた1年間の収入が400万円を超えると、確定申告が必要です。

2. 年金以外の収入が年間20万円を超える場合

年金の合計が400万円以下でも、年金以外の収入(働いて得た給料、家賃収入、株の配当金など)が年間20万円を超える場合は、確定申告をしなければなりません。年金をもらいながら働いている方は特に注意が必要です。

3. 所得控除を受けたい場合

年金をもらうと「公的年金等の源泉徴収票」という書類がもらえますが、この書類に載っていない控除(生命保険料控除、医療費控除など)を受けたい場合は、確定申告が必要です。これらの控除を使うことで、税金を安くできる可能性があります。

4. 年金と一時金の両方で受け取る場合

iDeCoは「毎月少しずつもらう(年金)」か「一度にまとめてもらう(一時金)」か選べますが、両方を組み合わせて受け取る場合は、税金の計算が複雑になるため確定申告が必要です。

受け取り方によって税金の種類が変わります。年金として受け取ると「雑所得」、一時金として受け取ると「退職所得」となり、それぞれ使える控除が違います。また、亡くなった方のiDeCoを遺族が受け取る場合は、相続税がかかることもあります。

このように、iDeCoでお金を受け取るときは、自分の状況に応じて確定申告が必要かどうか確認することが大切です。

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4 計画的な受け取りで節税効果を高める

受け取り方法を工夫することで、iDeCoの節税効果を最大限に活かすことが可能です。具体的には以下のような方法があります。

  • ■非課税範囲に収まるように受給額を抑える

  • ■公的年金の支給開始年齢と調整する

  • ■一部を一時金で、残りを年金で受け取る併用方式を活用する


まとめ|年金形式でも控除を活かせば税負担を抑えられる

iDeCoの給付金を年金形式で受け取る場合、その収入は雑所得として課税対象になりますが、公的年金等控除によって一定額までは非課税とすることが可能です。

他の年金収入や所得と合算される点、源泉徴収や確定申告が必要になる場合がある点にも注意し、受給計画を立てることで老後の資金をより効率的に活用できます。

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相続税申告、単独でする?それとも共同で?

こんにちは。富士市・富士宮の税理士、飯野明宏です。

相続人同士の関係が複雑な場合や、申告内容に意見の相違がある場合には、申告の方法が大きな影響を与えることになります。

今回は、相続税の申告方法として「共同申告」と「単独申告」の違いと、それぞれのメリット・デメリット、特に単独申告に伴うリスクについて整理します。


1 相続税申告書は共同で提出できる

相続税の申告書は、相続人全員で1つの書類として作成・提出する「共同申告」が可能です。これは義務ではなく、任意の方式ですが、以下のようなメリットがあります。

  • ■相続人間で情報を共有しやすく、財産の評価や遺産分割の内容に一貫性が出る
  • ■手続きが一本化され、申告全体の効率が高まる
  • ■税理士費用を一本化できる可能性がある

多くの実務でも、共同申告が推奨されています。ただし、どうしても事情により他の相続人と連携できない場合には、「単独申告」も認められています。

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2 単独申告を選んだ場合の4つのリスク

相続税の申告を相続人ごとに個別に行う「単独申告」は、特定の事情により選択されることもありますが、以下のようなリスクが伴います。

2-1. 申告内容の不一致による税務調査リスク

財産評価や控除の適用方法が相続人間で食い違うと、税務署が矛盾に気づき、調査対象となる可能性が高まります。

相続税の税務調査について >

2-2. 過少申告・延滞によるペナルティ

申告漏れや誤りがあった場合、過少申告加算税延滞税が課せられる可能性があります。

過少申告加算税について >

2-3. 手間や費用の増加

個別に申告書を作成するには、各人が別々に財産調査や税理士対応を行う必要があり、報酬や準備の手間が重複します。

2-4. 特例の適用ができない場合がある

未分割状態のまま申告をすると、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」など、大きな減税につながる特例が使えなくなるリスクがあります。

配偶者控除について >

小規模宅地等の特例について >


3 共同申告を行う場合の申告書の書き方

共同で相続税申告を行う場合は、第1表と第1表(続)に共同申告を行う相続人の氏名や取得財産などを記載します。
連名で提出する形式となり、他の相続人が単独で申告する場合は、その者の情報は記載しません。

共同申告は、「連名で申告することによる責任の共有」ともいえるため、内容をしっかりと合意のうえで進めることが重要です。

国税庁相続税共同申告単独申告

(出典:国税庁


4 専門家のサポートでリスク回避を

申告内容に不安がある、相続人間で情報共有が難しい、申告内容の調整が必要といった場合には、税理士などの専門家の関与が効果的です。

税理士が入ることで、次のようなメリットが得られます。

  • ■財産の評価方法が統一される

  • ■法律・税法に基づく判断ができる

  • ■税務調査リスクを軽減できる

  • ■節税の観点からも最適な方法を検討できる

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まとめ|原則は共同申告。単独申告には慎重な判断を

相続税申告は、特別な事情がなければ「相続人全員での共同申告」が基本です。申告内容に相違があると、税務署から指摘を受け、思わぬ追徴課税が発生することもあります。

相続税の申告は、財産の評価や分割状況など、複雑な要素が絡みます。後から「こうすればよかった」と後悔しないためにも、申告方法を選ぶ段階から専門家と相談しながら進めていくことをおすすめします。

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法人化は節税になる?個人事業主の所得税率と法人の法人税率を比較

こんにちは。富士市・富士宮の税理士、飯野明宏です。

個人で事業を営んでいる方で、事業が軌道に乗ってくると「法人成り(ほうじんなり)」、つまり会社を設立して個人事業から法人へ切り替えることを検討される方も多いのではないでしょうか。法人化を検討する大きな理由の一つに「節税」が挙げられます。

では、なぜ法人化が節税に繋がると言われるのでしょうか?それは、個人が納める「所得税」と法人が納める「法人税」では、その税率の仕組みが大きく異なるためです。

今回は、個人の所得税率と普通法人の法人税率を比較し、法人化による税負担への影響について解説します。

個人と法人

第1章|個人の所得税率は「超過累進課税制度」

日本の所得税は、”超過累進課税制度” を採用しています。これは、所得金額が増えるほど税率が高くなる仕組みです。

課税所得金額税率
195万円以下5%
195万円超330万円以下10%
330万円超695万円以下20%
695万円超900万円以下23%
900万円超1,800万円以下33%
1,800万円超4,000万円以下40%
4,000万円超45%

このように、所得が多くなるほど負担率が上がり、高所得者ほど高い税率が課されるのが特徴です。

リンク 国税庁 所得税の税率


第2章|法人税は比例税率が基本

法人税は、所得金額に関係なく一定の税率がかかる “比例税率” が基本です。特に中小法人(資本金1億円以下)に対しては軽減税率も設けられています。

法人の所得税率(中小法人)
年800万円以下15%
年800万円超23.2%

ただし、資本金が1億円超の法人や、大法人に完全支配される中小法人など一部例外があります。

リンク 国税庁 法人税の税率


第3章|どこからが節税になるライン?

課税所得が900万円を超えたあたりから、個人の所得税率(33%以上)が法人税率(23.2%)を上回ります。これが法人化を検討する目安の一つになります。

さらに、法人化により次のような経費項目が追加可能になります:

  • 役員報酬
  • 社宅制度の活用
  • 生命保険料の経費化

これらをうまく活用することで、法人の課税所得を抑えることが可能です。

税率比較


第4章|法人化のその他の影響

法人化の影響は税率だけではありません。他にも次のようなポイントが検討事項となります。

メリット

  • 欠損金の繰越期間が10年(個人は3年)
  • 消費税の免税期間の再取得が可能
  • 経費項目の拡大

デメリット

  • 赤字でも法人住民税の均等割(約7万円~)が必要
  • 記帳義務・決算書作成・申告手続きの複雑化
  • 税務調査対象となる可能性が上昇

第5章|まとめ:法人化は総合的な視点で判断を

法人化は、一定以上の所得を得ている事業者にとって、節税手段として有効です。ただし、単純に税率だけで判断せず、将来の事業計画や事務負担、資金繰りへの影響も考慮して総合的に判断することが重要です。

法人化を検討されている方は、私たちにご相談ください。事業の成長に最適な体制を選択しましょう。

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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