こんにちは。富士市・富士宮の税理士、飯野明宏です。
相続人同士の関係が複雑な場合や、申告内容に意見の相違がある場合には、申告の方法が大きな影響を与えることになります。
今回は、相続税の申告方法として「共同申告」と「単独申告」の違いと、それぞれのメリット・デメリット、特に単独申告に伴うリスクについて整理します。
1 相続税申告書は共同で提出できる
相続税の申告書は、相続人全員で1つの書類として作成・提出する「共同申告」が可能です。これは義務ではなく、任意の方式ですが、以下のようなメリットがあります。
- ■相続人間で情報を共有しやすく、財産の評価や遺産分割の内容に一貫性が出る
- ■手続きが一本化され、申告全体の効率が高まる
- ■税理士費用を一本化できる可能性がある
多くの実務でも、共同申告が推奨されています。ただし、どうしても事情により他の相続人と連携できない場合には、「単独申告」も認められています。
2 単独申告を選んだ場合の4つのリスク
相続税の申告を相続人ごとに個別に行う「単独申告」は、特定の事情により選択されることもありますが、以下のようなリスクが伴います。
2-1. 申告内容の不一致による税務調査リスク
財産評価や控除の適用方法が相続人間で食い違うと、税務署が矛盾に気づき、調査対象となる可能性が高まります。
2-2. 過少申告・延滞によるペナルティ
申告漏れや誤りがあった場合、過少申告加算税や延滞税が課せられる可能性があります。
2-3. 手間や費用の増加
個別に申告書を作成するには、各人が別々に財産調査や税理士対応を行う必要があり、報酬や準備の手間が重複します。
2-4. 特例の適用ができない場合がある
未分割状態のまま申告をすると、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」など、大きな減税につながる特例が使えなくなるリスクがあります。
3 共同申告を行う場合の申告書の書き方
共同で相続税申告を行う場合は、第1表と第1表(続)に共同申告を行う相続人の氏名や取得財産などを記載します。
連名で提出する形式となり、他の相続人が単独で申告する場合は、その者の情報は記載しません。
共同申告は、「連名で申告することによる責任の共有」ともいえるため、内容をしっかりと合意のうえで進めることが重要です。
(出典:国税庁)
4 専門家のサポートでリスク回避を
申告内容に不安がある、相続人間で情報共有が難しい、申告内容の調整が必要といった場合には、税理士などの専門家の関与が効果的です。
税理士が入ることで、次のようなメリットが得られます。
■財産の評価方法が統一される
■法律・税法に基づく判断ができる
■税務調査リスクを軽減できる
■節税の観点からも最適な方法を検討できる
まとめ|原則は共同申告。単独申告には慎重な判断を
相続税申告は、特別な事情がなければ「相続人全員での共同申告」が基本です。申告内容に相違があると、税務署から指摘を受け、思わぬ追徴課税が発生することもあります。
相続税の申告は、財産の評価や分割状況など、複雑な要素が絡みます。後から「こうすればよかった」と後悔しないためにも、申告方法を選ぶ段階から専門家と相談しながら進めていくことをおすすめします。