1 はじめに
税金は法律で決められた期限内に正しく申告し、納税することが基本です。しかし、申告内容に間違いがあった場合、本来納めるべき税金との差額だけでなく、ペナルティとしての税金(加算税)も合わせて納める必要があるかもしれません。
この記事では、加算税の中でも特に「過少申告加算税」に焦点を当て、どのような場合に課されるのか、その計算方法、課税されないケース、そして対策について詳しく解説します。
2 過少申告加算税とは
過少申告加算税とは、期限内に確定申告書を提出したものの、その申告納税額が実際に正しく計算した納税額より少なかった場合に課される税金です。
この過少申告加算税が課されるのは、主に税務調査によって申告内容の間違いが見つかり、その後に修正申告をしたり、税務署から更正を受けたりした場合です。つまり、税務当局からの指摘があってから初めて、追加で税金を納める際に発生するペナルティといえます。
一方で、確定申告後に税務調査や税務署からの通知を受ける前に、自分で誤りに気付き、自主的に修正申告を行った場合には、過少申告加算税は課されません。そのため、もし申告内容に間違いを発見した場合は、税務調査を受ける前に、なるべく早く修正申告を行うことが大切です。
過少申告は意図的でない計算ミスの場合もあれば、売上除外や経費水増しといった意図的なケースもありますが、税務調査、第三者からの密告、取引先への税務調査、SNS等での発信、銀行の資産状況など、様々な理由で発覚する可能性が高いです。
3 過少申告加算税の計算方法
過少申告加算税の計算方法は、新たに納めることとなった税金の額によって税率が異なります。
基本的な計算式
新たに納めることとなった税金 × 10%
ただし、新たに納める税金が、当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている部分については、税率が15%に引き上げられます。
具体的な計算例
例1
- 当初の申告納税額:80万円(50万円より多いので基準は80万円)
- 新たに納める税金:100万円(80万円を超えている)
- 計算:基準となる80万円 × 10% = 8万円
- 超過部分:(100万円 – 80万円) × 15% = 3万円
- 過少申告加算税合計:8万円 + 3万円 = 11万円
例2
- 当初の申告納税額:30万円(50万円より少ないので基準は50万円)
- 新たに納める税金:40万円(50万円を超えていない)
- 計算:基準内の40万円 × 10% = 4万円
- 超過部分はないため、15%部分はなし
- 過少申告加算税合計:4万円
例3
- 当初の申告納税額:200万円(50万円より多いので基準は200万円)
- 修正後の課税額:700万円
- 新たに納める税金(増差額):700万円 – 200万円 = 500万円(200万円を超えている)
- 計算:基準となる200万円 × 10% = 20万円
- 超過部分:(500万円 – 200万円) × 15% = 45万円
- 過少申告加算税合計:20万円 + 45万円 = 65万円
この場合、新たに納める税金である増差額500万円と過少申告加算税65万円、さらに延滞税が追加で課税されることになります。
4 重加算税との違いについて
過少申告加算税は、申告における計算ミスや見解の違いなど、誤りによる税額の不足に対して課されるものです。
これに対して、納税者が事実の全部または一部を仮装・隠蔽した場合に課されるのが重加算税です。重加算税は、適正に税金を納める人との公平を図るために設けられており、加算税の中でも最も重いペナルティとなります。
重加算税が課されるのは、過少申告加算税に代えて、または無申告加算税や不納付加算税に代えて行われ、その税率は過少申告加算税に代わる場合は35%、無申告加算税に代わる場合は40%、不納付加算税に代わる場合は35%と、非常に高くなっています。
典型的な仮装・隠蔽の事例としては、二重帳簿の作成、売上等の収入の除外、架空仕入れ・架空経費の計上、棚卸資産の除外(隠蔽)や、証拠書類の改ざん、他人名義の使用、虚偽答弁、取引先への虚偽帳簿作成依頼(仮装)などがあります。
5 延滞税も一緒に課される可能性について
過少申告加算税が課される場合、同時に延滞税も発生するケースが多いです。
延滞税は、法定期限までに納めるべき税金を納付しなかった場合に発生する、利息のような性質を持つ税金です。過少申告加算税が課されるということは、本来納めるべき税金が期限内に納付されていなかったことになるため、不足していた期間に応じた延滞税も課されるのです。
延滞税は納付が遅れると高額になる可能性があるため、過少申告加算税と合わせて追加で納税する必要がある点に注意が必要です。
6 過少申告加算税が課されないケース
税務調査で過少申告を指摘されると課税される過少申告加算税ですが、いくつかの条件に合致する場合は課税されずに済むことがあります。
過少申告加算税が課されない主なケースは以下の3つです。
6.1 更正を予知しないで修正申告をした場合
税務調査などによって「更正(税務署が税額を訂正すること)があるだろう」と予測される前に、自主的に誤りに気付いて修正申告をした場合には、過少申告加算税は課されません。
具体的には、税務調査の連絡を受ける前や、税務署からの問い合わせを受ける前に自主的に修正申告した場合などが該当します。税務調査の連絡を受けた後や、調査の実施日を決めた後に修正申告をしても、このケースには該当しないので注意が必要です。
6.2 正当な理由がある場合
納税者の申告が過少であったことについて、納税者を責められないような、やむを得ない客観的な事情があると認められる場合にも、過少申告加算税は課されません。加算税を課すことが不当または酷になる場合に適用されます。
6.3 過少申告加算税が少額の場合
過少申告加算税を含め、算出した加算税の金額が5,000円未満である場合は、「少額不徴収」というルールにより課税されません。
ただし、この場合も加算税が課税されたという記録は税務署内に残ります。
7 過少申告加算税を防ぐための対策
過少申告加算税や延滞税を課税されないためには、そもそも過少申告が起きないように対策を講じることが重要です。また、万が一間違いに気付いた場合は、速やかに対処することも大切です。
過少申告を防ぐための対策としては、以下の点が挙げられます。
7.1 不正は行わず正しく申告する
脱税目的での過少申告は税務調査で発覚する可能性が高く、重加算税が課されるだけでなく、社会的信用も失ってしまいます。隠蔽や仮装を疑われないよう、常に正確な情報の申告を心がけましょう。
7.2 適切な記帳を心がける
申告内容の誤りを防ぐためには、日々の取引を漏れなく、丁寧に記帳することが不可欠です。確定申告直前にまとめて行うとミスが生じやすいため、日頃から余裕を持って記帳するようにしましょう。会計ソフトの連携機能なども活用し、正確性を高めることも有効です。
7.3 領収書など資料の保存を徹底する
税務調査では、記帳の正確性や申告内容の根拠となる領収書などの資料の提出を求められます。これらの資料が保存されていなければ、申告内容が正しいことを証明できません。紙の領収書だけでなく、電子データでの保存方法もあるため、適切に保管しましょう。
7.4 信頼できる税理士に依頼する
税務の専門家である税理士に依頼することで、申告内容の正確性が向上します。また、税理士が関与していることで、税務調査の対象となる確率が低くなる傾向があるほか、万が一税務調査が入った場合もサポートを受けることができます。
8 まとめ
過少申告加算税は、期限内に申告したものの、本来納めるべき税額が少なかった場合に課される税金です。税務調査によって指摘されると、不足していた税額に加え、過少申告加算税や延滞税といった追加の負担が生じます。
これを防ぐためには、日々の適切な会計処理によって正確な申告を行うことが最も重要です。もし申告後に誤りや申告漏れに気付いた場合は、税務調査の連絡を受ける前に速やかに自主的な修正申告を行うことで、過少申告加算税の課税を避けることができます。
「正しく申告できているか不安」「税務調査が心配」という方は、是非、私たちにご相談ください。