こんにちは。富士市・富士宮の税理士、飯野明宏です。
老後の生活資金を確保する手段として注目されているiDeCo(個人型確定拠出年金)。掛金拠出時には所得控除が受けられ、運用益も非課税といった税制優遇が用意されていますが、受け取り時には課税される点に注意が必要です。
この記事では、iDeCoの給付金を「年金形式」で受け取る場合にかかる税金と、その計算方法について解説します。
1 年金形式で受け取ると「雑所得」に
iDeCoを年金として分割で受け取る場合、受取額は雑所得として扱われます。この雑所得は総合課税の対象となり、他の所得(たとえば公的年金や給与所得など)と合算されて課税額が決まります。
雑所得の課税対象になるという点は、年金形式の受け取りにおける注意点です。
2 「公的年金等控除」が適用される
雑所得として課税される一方で、iDeCoを年金形式で受け取る場合には公的年金等控除を適用できます。これにより、実際の課税所得額を抑えることが可能です。
控除額は年齢と年金収入によって異なります。
公的年金等に係る雑所得は、次の表のとおりです。
公的年金等控除の範囲内であれば、iDeCo年金に対する所得税はかからない可能性があります。
(出典:国税庁ウェブサイト)公的年金等の課税関係
3 年金受取時の注意点
年金形式で受け取る際は、以下のようなポイントに注意が必要です。
■他の年金との合算に注意:iDeCo以外の公的年金も雑所得として合算されます。
■源泉徴収の仕組み:iDeCoの年金は支給時に源泉徴収が行われることがあります。確定申告により還付される可能性もあります。
iDeCoは、お金を積み立てるときだけでなく、将来お金を受け取るときにも確定申告をしなければならない場合があります。どんなときに必要になるのか、具体的に見ていきましょう。
1. 年金の合計が年間400万円を超える場合
iDeCoを年金として毎月少しずつ受け取る場合、iDeCoと他の年金を合わせた1年間の収入が400万円を超えると、確定申告が必要です。
2. 年金以外の収入が年間20万円を超える場合
年金の合計が400万円以下でも、年金以外の収入(働いて得た給料、家賃収入、株の配当金など)が年間20万円を超える場合は、確定申告をしなければなりません。年金をもらいながら働いている方は特に注意が必要です。
3. 所得控除を受けたい場合
年金をもらうと「公的年金等の源泉徴収票」という書類がもらえますが、この書類に載っていない控除(生命保険料控除、医療費控除など)を受けたい場合は、確定申告が必要です。これらの控除を使うことで、税金を安くできる可能性があります。
4. 年金と一時金の両方で受け取る場合
iDeCoは「毎月少しずつもらう(年金)」か「一度にまとめてもらう(一時金)」か選べますが、両方を組み合わせて受け取る場合は、税金の計算が複雑になるため確定申告が必要です。
受け取り方によって税金の種類が変わります。年金として受け取ると「雑所得」、一時金として受け取ると「退職所得」となり、それぞれ使える控除が違います。また、亡くなった方のiDeCoを遺族が受け取る場合は、相続税がかかることもあります。
このように、iDeCoでお金を受け取るときは、自分の状況に応じて確定申告が必要かどうか確認することが大切です。
4 計画的な受け取りで節税効果を高める
受け取り方法を工夫することで、iDeCoの節税効果を最大限に活かすことが可能です。具体的には以下のような方法があります。
■非課税範囲に収まるように受給額を抑える
■公的年金の支給開始年齢と調整する
■一部を一時金で、残りを年金で受け取る併用方式を活用する
まとめ|年金形式でも控除を活かせば税負担を抑えられる
iDeCoの給付金を年金形式で受け取る場合、その収入は雑所得として課税対象になりますが、公的年金等控除によって一定額までは非課税とすることが可能です。
他の年金収入や所得と合算される点、源泉徴収や確定申告が必要になる場合がある点にも注意し、受給計画を立てることで老後の資金をより効率的に活用できます。