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従業員旅費・交通費の仕入税額控除はインボイス不要?

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。

インボイス制度が始まり、消費税の仕入税額控除を受けるためには、原則として「帳簿+適格請求書等の保存」が必要です。

しかし、すべての経費について請求書を取り寄せるのは、現実的に難しい場面もあります。
特に、従業員への出張旅費や通勤手当のような経費精算では、「どこまで請求書が必要なの?」と悩まれる方も多いのではないでしょうか。

今回は、従業員旅費等に関するインボイス制度の特例と、
立替払い・タクシーチケット・内定者交通費の取扱いについて詳しく解説します。


1 インボイス不要!帳簿だけで控除できる「従業員旅費等」の特例

次のような従業員に支払う通常の経費は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます

✅ 帳簿保存のみでOKな経費

  • 出張旅費

  • 宿泊費

  • 日当

  • 通勤手当

これらは、「通常必要と認められる支出」として、特例的に請求書等の保存が不要とされています。

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✅ 帳簿に記載すべき事項

項目内容
相手方の氏名旅費を支給した従業員の氏名(住所は不要)
取引日出張・宿泊・通勤等の実施日
内容「従業員旅費」「出張日当」など、支出の内訳がわかるように記載
支払対価の額実費・定額支給額などの金額を明記

2 従業員が立替払いした場合は原則通り

業務上の支払いを従業員が立替払いし、後から精算する場合は、以下のような扱いになります。

❗ ポイント:立替払いは「サプライヤーとの取引」が前提

  • サプライヤー(販売店・飲食店など)が発行した適格請求書・適格簡易請求書が必要

  • レシートの宛名が従業員名でも、サプライヤーが発行したものであれば有効

  • 従業員名簿などの保存義務はなし


3 タクシー利用時はどう処理する?

✅ 原則:タクシー利用も「従業員旅費」扱いで帳簿のみでOK

  • 出張等に伴うタクシー利用は、「従業員旅費」として帳簿のみの保存でOK

⚠ 特殊ケース:タクシーチケットの精算書しかない場合

  • クレジットカード会社の精算書などインボイスの保存が難しい場合

  • 経過措置により、帳簿のみで一定割合(80%または50%)の仕入税額控除が認められる

📝 この経過措置は、制度導入初期の実務上の混乱を軽減するためのものです。


4 内定者や採用面接者への交通費は?

現在、国税庁のインボイスQ&Aや通達では、明確な記載がありません。

したがって、

  • 内定者・面接者は「従業員等」に該当しないため

  • インボイスの保存義務が生じる可能性が高い

と解釈するのが安全です。

🚫 「従業員旅費」特例は、在職中の社員・役員等に限定されると考えましょう。


まとめ|「インボイス不要」かどうかは目的と支出先で判断

経費の種類インボイス必要?説明
出張旅費・日当・通勤手当❌不要(帳簿のみ)通常必要な支出として特例対象
従業員の立替払い(物品購入等)✅必要サプライヤー発行の適格請求書等が必要
タクシー利用(出張等)❌不要(帳簿のみ)「旅費」として処理可能
タクシーチケット精算書のみ⭕経過措置あり一定割合で仕入税額控除が可能

コラム最下署名

飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

媒介者交付特例とは?代理交付との違いと委託販売におけるインボイス対応

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。

インボイス制度が始まり、適格請求書の交付・保存が税務処理の基本となりました。
しかし、商品の販売形態が「委託販売」や「代理販売」のような三者間取引の場合、

  • ■「誰が誰に対してインボイスを交付すべきか?」

  • ■「委託者が適格請求書を交付しないといけないの?」

といった疑問をお持ちの事業者様も多いのではないでしょうか。

実は、そうしたケースでは「媒介者交付特例」を利用することで、
受託者(仲介者)側がインボイスを交付することが可能です。

今回はこの媒介者交付特例について、実務対応を交えながら解説します。


1 媒介者交付特例とは?代理交付との違いと基本の仕組み

通常、商品の販売者=課税資産の譲渡者である委託者が、購入者に対してインボイスを交付する義務があります。

これを代理交付といいます。

しかし、

委託販売や取次販売など、受託者(代理店や販売代行)が実務上の販売を担っているケース

では、インボイス交付の手間や現実的な取引慣行に配慮し、
受託者が委託者に代わって適格請求書を交付できる制度が設けられています。
これが「媒介者交付特例」です。

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この特例のポイント

項目内容
誰が交付する?受託者(販売代行・仲介者)
インボイスに記載する氏名・登録番号受託者自身の情報を記載
代理交付との違い代理交付は委託者の名前を代理で記載、媒介者交付は受託者の名前を記載
法的効果委託者が交付すべき適格請求書の代替と認められる

2 媒介者交付特例の適用要件

この特例を利用するには、次の条件を満たす必要があります。

基本要件

  • ■委託者と受託者の双方が適格請求書発行事業者であること

  • ■受託者が課税資産の譲渡の媒介・取次ぎを行っていること

 受託者が適格請求書発行事業者でない場合、この特例は使えません。
その場合、委託者がインボイスを交付する義務を負います。

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3 複数の委託者がいる場合の実務対応

受託者が複数の委託者の商品をまとめて1人の顧客に販売するようなケースでも、媒介者交付特例は適用可能です。

インボイスの記載方法(2パターン)

  • ■委託者ごとに区分記載+端数処理も個別

  • ■一括記載+端数処理も合算

どちらでも構いませんが、取引内容を明確にする工夫が重要です。

なお、非インボイス事業者(免税事業者)である委託者が混在する場合は、
適格請求書発行事業者である委託者の取引のみを区分記載すれば問題ありません。


4 買手が委託者にインボイスを求めたら?

媒介者交付特例を適用して受託者がインボイスを交付した後でも、
買手が「委託者からもインボイスを交付してほしい」と希望することは可能です。

この場合、委託者が再度インボイスを交付しても差し支えありません。

ただし、仕入税額控除は同一取引について一度しか受けられません。
買手側で重複控除とならないよう注意が必要です。


まとめ|媒介者交付特例を活用して、三者間取引もスムーズに対応

内容ポイント
適用できるケース委託販売や仲介業務など、販売を受託者が実質担っている取引
 要件委託者・受託者ともにインボイス発行事業者であること
実務メリット受託者が一括してインボイス交付できるため、販売現場の負担を軽減
注意点委託者が免税事業者の場合は特例適用不可、買手からの請求には別対応が必要

コラム最下署名

飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

インボイス制度における仕入税額控除の例外 帳簿のみでOK?

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)では、
仕入税額控除の適用には原則「帳簿+適格請求書等」の保存が必要です。

しかし、すべての取引に請求書を求めるのは現実的ではない場合もあります。
そのため、インボイス制度では一部の取引において、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる特例が設けられています。

本記事では、

  • ■帳簿保存のみで控除可能な取引の一覧

  • ■帳簿に記載すべき内容

  • ■電子請求書を保存する場合のルール

について、実務に役立つよう解説します。


1 インボイスなしでも帳簿保存のみで控除できる取引一覧

次のような特定の取引は、適格請求書等の保存が不要で、帳簿のみで仕入税額控除が可能とされています。

従業員旅費・交通費の仕入税額控除について >

区分内容
公共交通機関特例船舶・バス・鉄道による1回3万円未満の旅客運送(切符単位で判定)
卸売市場特例生鮮食料品等の卸売市場での販売(委託販売に限る)
農協特例農協等が行う農林水産物の販売(共同計算方式)
古物商等特例古物商・質屋・宅建業者・再資源業者による棚卸資産の取得(非インボイス事業者から)
自動販売機特例自販機や自動サービス機からの3万円未満の購入
郵便ポスト特例郵便ポストに差し出す切手類のみを対価とする郵便サービス
従業員等の旅費特例出張旅費・通勤手当・宿泊費・日当など通常必要と認められる支給

2 帳簿のみで控除を受けるための記載事項とは?

帳簿保存のみで控除を受けるには、次の事項を帳簿に正確に記載する必要があります。

記載すべき帳簿の内容(すべて必須)

  • 課税仕入れの相手方の氏名または名称
     ※古物商特例・交通機関特例などは住所不要

  • 課税仕入れを行った年月日

  • 資産・サービスの内容(軽減税率対象の有無も)

  • 「帳簿のみで控除対象」の理由明記
     (例:「自販機」「従業員旅費」「3万円未満の鉄道」など)

  • ■支払対価の額

該当特例の内容を明示しておくことで、税務署からの確認にも対応しやすくなります。


3 少額特例(1万円未満)も帳簿のみでOK【経過措置】

インボイス制度開始後の経過措置として、
1万円未満の課税仕入れについては、一定の事業者に限り帳簿保存のみで仕入税額控除が可能です。

少額特例の対象事業者

  • 基準期間の課税売上高が1億円以下

  • または特定期間の売上が5千万円以下

この場合も、帳簿には「少額特例対象仕入である旨」の記載が必要です。

 


4 電子データでインボイスを受け取った場合の保存方法は?

紙の請求書だけでなく、PDFやシステム上の画面など電子データで受領したインボイスは、以下の要件を満たして保存する必要があります。

電帳法に準じた保存要件(抜粋)

  • ■タイムスタンプが付された電子データ

  • または、訂正削除ができない・履歴が残るシステムでの保存

  • 電子データ管理の事務処理規程の整備・運用

 Webサイト上の「マイページ」にログインしてインボイスを確認できる形も、保存要件を満たすものとして扱われます(一定の条件あり)。

電子帳簿保存法について >


まとめ「帳簿だけで仕入税額控除」も制度の一部!正確な記録がカギ

内容ポイント
対象取引公共交通、自販機、古物商など特定の取引に限定
記録の必須項目相手方名・日付・内容・理由・金額の5項目
電子データ保存電帳法のルールに従って対応が必要

コラム最下署名

飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

電磁的記録(電子データ)でインボイスを提供・保存するには?

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)では、紙の請求書だけでなく、電子データ(電磁的記録)でインボイスを交付・保存することも可能です。
しかし、電子提供には一定の要件を満たす必要があり、正しく運用しないと仕入税額控除が否認される恐れもあります。

本記事では、

  • ■インボイスを電子データで提供・保存するためのルール

  • ■領収書とホームページの連携表示による記載事項の補完方法

  • ■電帳法(電子帳簿保存法)との関係性

について、実務に役立つ内容をまとめて解説します。


1 電子データでインボイスを提供することは可能?

はい、可能です。

インボイス(適格請求書)は、紙でなくてもPDF・XMLなどの電磁的記録による提供でOK。
電子データで交付された場合でも、消費税法上の「交付義務」や「保存義務」を満たすものとして認められています。

ただし、そのまま送るだけでなく「保存方法」に注意が必要です。

インボイス番号をみせる人


2 保存するデータの形式と条件(PDFでもXMLでもOK)

視覚的に内容が確認できれば保存要件クリア

たとえば、以下のような形式が認められます:

  • ■PDF(画面表示または印刷で項目が明確に読めるもの)

  • ■XMLやCSV(構造化されたデータで、内容がわかるフォーマットで保存)

  • ■システムから出力した請求書データ

視覚的に「取引年月日」「消費税額」「登録番号」などの記載事項が判別できることが重要です。
項目名が略されていても、内容が読み取れるなら問題ありません。


3 保存方法は「電子帳簿保存法」に準拠が必須

電子インボイスの保存には、電子帳簿保存法(電帳法)に準じた以下の要件を守る必要があります。

主な要件(スキャナ保存と同様)

要件内容
タイムスタンプ受領したデータに付与されていればOK(自分で付けなくても可)
訂正・削除履歴の確認システム上で記録の改ざん防止または履歴が確認できること
事務処理規程電子データ管理ルールを定めた文書を備え付け、実際に運用していること
可視性必要なときに速やかに検索・出力できる状態で保存されていること

4 Webサイトとの連携で記載事項を補完してもOK?

領収書+ホームページ表示=インボイスとして成立する場合も

例えば、レジで発行した領収書に記載事項の一部が欠けている場合でも、
次のような工夫をすればインボイスとして成立します。

■「領収書には取引内容と金額のみ → URL記載 → ホームページで登録番号等を表示」

このように複数の情報を組み合わせて記載事項を満たす方法は認められています

 注意点:

  • ■領収書とWeb情報の相互関連性が明確であること(例:同一取引であることがわかるように)

  • ■ただ単に「自社のWebサイトに登録番号を載せている」だけでは不十分

■マイページ機能やログイン制サイトを通じて、個別取引と結びつけた情報提供が有効です。

インボイスを見せる人 (2)


5 買手が保存すべきものは?(仕入税額控除の観点から)

買手が仕入税額控除を受けるには、次のいずれかの保存が必要です:

保存方法の選択肢

  • ■WebページやPDFを電磁的記録として保存

  • ■Webページを印刷し、整然とした形式で書面保存

  • ■ホームページ上で継続的に表示されており、必要時に閲覧可能な状態が確保されている(※マイページ型など)


まとめ インボイスの電子提供は柔軟に対応可能、ただし保存ルールは厳守!

ポイント概要
提供方法PDF・XMLなどの電子データで提供可能
保存条件電帳法に準じた形式・手続きが必要
Web連携領収書+Web情報で記載事項を補完してもOK(相互関連性が明確なことが前提)
買手の対応電磁的保存または印刷保存が必要。表示情報が継続して確認できる体制も有効

コラム最下署名

飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

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公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

適格簡易請求書の記載事項と対象事業(小売業、飲食店業など)

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。

令和5年10月にスタートしたインボイス制度(適格請求書等保存方式)
この制度では、消費税の仕入税額控除を受けるために「適格請求書(インボイス)」の保存が原則必要ですが、特定の業種においては、より簡易な「適格簡易請求書」の交付が認められています。

今回は、次の2点を中心に解説します:

  • ■どのような事業者が適格簡易請求書を使えるのか?

  • ■どのような記載事項が必要なのか?


1 「適格簡易請求書」を交付できるのはどんな事業者?

「適格簡易請求書」とは、通常の適格請求書よりも記載事項が簡略化された請求書です。
以下のような「不特定かつ多数の者に対して課税取引を行う事業者」が対象となります。

適格簡易請求書を交付できる主な業種:

  • 小売業(スーパー、コンビニなど)

  • 飲食店業(レストラン、カフェ、居酒屋など)

  • 写真業(証明写真撮影、スタジオなど)

  • 旅行業

  • タクシー業

  • 駐車場業(多数の利用者が対象の場合)

  • 上記に準ずる業種(不特定多数を相手にする事業)

これらの業種は、日々多数の取引相手に請求書を発行するため、1件ごとに完全な適格請求書を作成するのが非現実的。そのため、簡易な書式が認められています。

 注意:電気・ガス・通信などの定額サービス業は「特定の契約者」との取引のため、適格簡易請求書は使えません

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2 適格簡易請求書に記載すべき6つの項目

通常のインボイス(適格請求書)に比べ、買手の氏名や名称の記載が不要など、一部が簡略化されています。記載すべき事項は以下の6つです。

適格簡易請求書の記載事項一覧

項目内容
適格請求書発行事業者の氏名または名称、および登録番号(T+13桁)
課税資産の譲渡等を行った年月日(例:販売日)
資産や役務の内容(商品・サービス名など)
※軽減税率対象には印や記号で明記
税率ごとに区分した合計金額(税抜または税込のどちらかで統一)
税率ごとに区分した消費税額等 または 適用税率(どちらかでOK)
(※買手の氏名や名称は不要)

補足:手書きの領収書でも、上記6項目を満たしていれば適格簡易請求書として有効です。


3 よくある実務上の疑問と対応ポイント

消費税額と税率、両方記載しなきゃダメ?

どちらか一方でOK。もちろん、両方記載しても差し支えありません。
ただし、消費税額を記載する場合は、1円未満の端数処理は税率ごとに1回のみ
。商品ごとの端数処理はNGです。


税抜価格と税込価格が混在してもいい?

→ 同一の請求書内ではいずれかに統一する必要があります。
ただし、定価制の商品で価格が明確な場合は例外あり。


値引きのある場合は?

→ 税率ごとに区分された値引き後の合計額を記載すればOKです。


4 こんな方は今すぐ確認を!

  • 「小売業だけど、レジシステムが古くて対応できていない…」

  • 「領収書を手書きで発行しているけど、適格簡易請求書になるの?」

  • 「消費税額の記載方法があいまいで不安…」

制度を正しく理解すれば、特別な書式を使わなくても、現行の運用で対応可能なケースが多くあります!

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まとめ インボイス制度に無理なく対応しよう

適格簡易請求書は、小売業や飲食店業などの実務に即した柔軟な制度です。
ただし、記載事項を満たしていないと、取引先が仕入税額控除できずトラブルの元になることも。

ポイントを再確認!

  • ご自身の事業が「適格簡易請求書」の対象か?

  • 6つの記載事項をきちんと満たしているか?

  • 現在の運用がそのままで対応可能か?

コラム最下署名

飯野明宏税理士
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代表税理士 飯野 明宏

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現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

適格請求書に必要な7つの記載事項とは?屋号や取引先コードの記載可否

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。

令和5年10月に導入されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、「適格請求書」の内容が非常に重要になります。適格請求書を正しく発行できなければ、取引先にとって仕入税額控除の適用ができない可能性があるため、正確な記載が求められます。

今回は、インボイスとして認められるために必要な7つの記載事項を整理するとともに、屋号や取引先コードによる記載が認められるかどうかについて、国税庁の資料に基づき詳しく解説いたします。


1 適格請求書に記載が必要な「7つの項目」

適格請求書に求められる記載事項は、次の7つです。

1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称、および登録番号

適格請求書を発行できる事業者であることを証明する最重要項目です。
13桁の登録番号(「T+番号」)と、法人名または個人事業主の氏名を記載します。

※個人事業主が旧姓や外国人の通称を使用したい場合は、「公表事項の変更申出書」の提出が必要です。

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2. 課税資産の譲渡等を行った年月日

商品の引き渡し日やサービス提供日など、実際に課税取引が行われた日を記載します。


3. 課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容

提供した商品やサービスの具体的な内容を明記します。
軽減税率の対象商品には「※」などを付して軽減対象である旨を明示します。


4. 税率ごとに区分した課税資産の譲渡等の合計金額(税抜または税込)

適用税率ごと(10%、8%など)に金額を分け、合計額を税抜または税込で記載します。


5. 税率ごとに区分した消費税額等

上記の合計金額に対する消費税額を、税率ごとに記載します。

※1円未満の端数は、税率ごとに1回だけ切上げ・切捨て・四捨五入いずれかで処理。
商品単位での端数処理の合計はNGです。


6. 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

請求書の受取側(買手)である事業者名を記載します。


7. 取引内容に応じて必要となるその他の事項

次のような特殊な取引には追加記載が必要になります:

  • ■簡易インボイス(適格簡易請求書)の場合

  • ■返品や値引きに関する請求書(適格返還請求書)

  • ■電子請求書や媒介者を介した取引の場合 など

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2 屋号での記載はできる?取引先コードでもいい?

■ 屋号での記載は「特定できればOK」

個人事業主がよく使用する屋号(例:「〇〇工房」「〇〇商店」)について、
適格請求書を発行する事業者を特定できれば記載可能です。

特定のためには、屋号と合わせて電話番号や登録番号の記載が推奨されます。


■ 取引先コードによる記載は「条件付きでOK」

社内管理で使われる取引先コードについても、次の条件を満たせば記載可です:

  • ■取引先コードが登録番号と紐付けられた一覧表で管理されている

  • ■買手側もそのコードから確実に登録番号を確認できる

このような運用があれば、「取引先コード+登録番号」による記載が認められます。

売手が適格請求書発行事業者でなくなった場合は、速やかにコード表を修正し、記録を残すことが必要です。


まとめ 適格請求書の記載要件を満たし、確実な税額控除を

インボイス制度のもとでは、「適格請求書」の記載ミスが税務上の大きなリスクになります。

 記載項目チェックリスト(7項目)

  • ■事業者の氏名・登録番号

  • ■取引年月日

  • ■取引内容

  • ■金額(税率別・税抜or税込)

  • ■消費税額(税率別)

  • ■相手先の氏名・名称

  • ■その他必要な情報(簡易・返還等)

これらを確実に記載しつつ、屋号や取引先コードの運用にはルールを守った対応を行うことで、安心してインボイス制度に対応することができます。

コラム最下署名

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大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

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