こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)では、紙の請求書だけでなく、電子データ(電磁的記録)でインボイスを交付・保存することも可能です。
しかし、電子提供には一定の要件を満たす必要があり、正しく運用しないと仕入税額控除が否認される恐れもあります。
本記事では、
■インボイスを電子データで提供・保存するためのルール
■領収書とホームページの連携表示による記載事項の補完方法
■電帳法(電子帳簿保存法)との関係性
について、実務に役立つ内容をまとめて解説します。
1 電子データでインボイスを提供することは可能?
はい、可能です。
インボイス(適格請求書)は、紙でなくてもPDF・XMLなどの電磁的記録による提供でOK。
電子データで交付された場合でも、消費税法上の「交付義務」や「保存義務」を満たすものとして認められています。
ただし、そのまま送るだけでなく「保存方法」に注意が必要です。
2 保存するデータの形式と条件(PDFでもXMLでもOK)
視覚的に内容が確認できれば保存要件クリア
たとえば、以下のような形式が認められます:
■PDF(画面表示または印刷で項目が明確に読めるもの)
■XMLやCSV(構造化されたデータで、内容がわかるフォーマットで保存)
■システムから出力した請求書データ
視覚的に「取引年月日」「消費税額」「登録番号」などの記載事項が判別できることが重要です。
項目名が略されていても、内容が読み取れるなら問題ありません。
3 保存方法は「電子帳簿保存法」に準拠が必須
電子インボイスの保存には、電子帳簿保存法(電帳法)に準じた以下の要件を守る必要があります。
主な要件(スキャナ保存と同様)
要件 | 内容 |
---|---|
タイムスタンプ | 受領したデータに付与されていればOK(自分で付けなくても可) |
訂正・削除履歴の確認 | システム上で記録の改ざん防止または履歴が確認できること |
事務処理規程 | 電子データ管理ルールを定めた文書を備え付け、実際に運用していること |
可視性 | 必要なときに速やかに検索・出力できる状態で保存されていること |
4 Webサイトとの連携で記載事項を補完してもOK?
領収書+ホームページ表示=インボイスとして成立する場合も
例えば、レジで発行した領収書に記載事項の一部が欠けている場合でも、
次のような工夫をすればインボイスとして成立します。
■「領収書には取引内容と金額のみ → URL記載 → ホームページで登録番号等を表示」
このように複数の情報を組み合わせて記載事項を満たす方法は認められています。
注意点:
■領収書とWeb情報の相互関連性が明確であること(例:同一取引であることがわかるように)
■ただ単に「自社のWebサイトに登録番号を載せている」だけでは不十分
■マイページ機能やログイン制サイトを通じて、個別取引と結びつけた情報提供が有効です。
5 買手が保存すべきものは?(仕入税額控除の観点から)
買手が仕入税額控除を受けるには、次のいずれかの保存が必要です:
保存方法の選択肢
■WebページやPDFを電磁的記録として保存
■Webページを印刷し、整然とした形式で書面保存
■ホームページ上で継続的に表示されており、必要時に閲覧可能な状態が確保されている(※マイページ型など)