こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。
インボイス制度の開始により、仕入税額控除を受けるには原則として「帳簿+インボイス(適格請求書)」の保存が必要となりました。
しかし、免税事業者(インボイスを発行できない事業者)との取引については、
「控除がゼロになるのでは?」「80%は控除できると聞いたけど?」
といった不安や誤解の声がよく寄せられます。
今回は、免税事業者からの仕入れに対する仕入税額控除の可否と、正しい経過措置の内容について整理してご説明します。
第1章|原則ルール:インボイスがなければ仕入税額控除はできない
まず大前提として、令和5年10月1日以降、適格請求書発行事業者でない者(=免税事業者等)からの仕入れについては、原則として仕入税額控除はできません。
なぜなら、適格請求書(インボイス)を発行できないため、控除要件を満たさないからです。
第2章|ただし、経過措置がある!【6年間限定】
インボイス制度開始にあたって、いきなり控除ゼロでは事業に大きな影響が出ることから、
次のような6年間の経過措置(段階的控除)が設けられました。
✅ 経過措置の概要(免税事業者からの仕入れ)
適用期間 | 控除可能割合(※) |
---|---|
令和5年10月1日〜令和8年9月30日 | 80%控除可能 |
令和8年10月1日〜令和11年9月30日 | 50%控除可能 |
令和11年10月1日以降 | 控除不可(原則どおり) |
※支払対価のうち、消費税相当額の80%または50%を仕入税額として控除できます。
第3章|この制度の名前は「経過措置(段階的控除)」!誤解されがちな制度名に注意
この制度は、あくまで免税事業者との取引における特例的な控除制度です。
一部では「80%控除制度」「簡易控除制度」などと呼ばれることもありますが、正式には「段階的控除の経過措置」です。
⚠ よくある誤解:
「レシートだけあれば80%控除できる」→ ❌間違い
「免税事業者との全取引が対象」→ ❌間違い(課税仕入れに限る)
「この制度はソースに明記されていない」→ ❌一部資料には記載がある(が、網羅的ではない)
第4章|これとは別の「少額特例」とは何が違うの?
令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間、一定規模以下の事業者(課税売上1億円以下など)については、
1万円未満の仕入れであれば帳簿保存のみで仕入税額控除が可能という、別の経過措置が設けられています。
✅ 少額特例の主なポイント
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 基準期間の課税売上高1億円以下、または特定期間5千万円以下の事業者 |
適用取引 | 1万円未満の課税仕入れ(相手がインボイス事業者でなくてもOK) |
保存要件 | 帳簿のみ(インボイス不要) |
適用期間 | 令和5年10月〜令和11年9月末 |
✅ 少額特例と段階的控除の違いを混同しないように注意が必要です。
第5章|仕入税額控除の実務例(段階的控除の場合)
例)令和6年10月、免税事業者から税込33,000円で仕入れた場合
消費税相当額:33,000円 × 10/110 = 3,000円
控除できる金額(80%):3,000円 × 80% = 2,400円
帳簿に取引内容を記載し、この2,400円を仕入税額として申告することができます。