適格簡易請求書の記載事項と対象事業(小売業、飲食店業など)

2025年5月15日
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2025年5月15日 管理人

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。

令和5年10月にスタートしたインボイス制度(適格請求書等保存方式)
この制度では、消費税の仕入税額控除を受けるために「適格請求書(インボイス)」の保存が原則必要ですが、特定の業種においては、より簡易な「適格簡易請求書」の交付が認められています。

今回は、次の2点を中心に解説します:

  • どのような事業者が適格簡易請求書を使えるのか?

  • どのような記載事項が必要なのか?


1 「適格簡易請求書」を交付できるのはどんな事業者?

「適格簡易請求書」とは、通常の適格請求書よりも記載事項が簡略化された請求書です。
以下のような「不特定かつ多数の者に対して課税取引を行う事業者」が対象となります。

📌 適格簡易請求書を交付できる主な業種:

  • 小売業(スーパー、コンビニなど)

  • 飲食店業(レストラン、カフェ、居酒屋など)

  • 写真業(証明写真撮影、スタジオなど)

  • 旅行業

  • タクシー業

  • 駐車場業(多数の利用者が対象の場合)

  • 上記に準ずる業種(不特定多数を相手にする事業)

これらの業種は、日々多数の取引相手に請求書を発行するため、1件ごとに完全な適格請求書を作成するのが非現実的。そのため、簡易な書式が認められています。

❗ 注意:電気・ガス・通信などの定額サービス業は「特定の契約者」との取引のため、適格簡易請求書は使えません

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2 適格簡易請求書に記載すべき6つの項目

通常のインボイス(適格請求書)に比べ、買手の氏名や名称の記載が不要など、一部が簡略化されています。記載すべき事項は以下の6つです。

✅ 適格簡易請求書の記載事項一覧

項目内容
適格請求書発行事業者の氏名または名称、および登録番号(T+13桁)
課税資産の譲渡等を行った年月日(例:販売日)
資産や役務の内容(商品・サービス名など)
※軽減税率対象には印や記号で明記
税率ごとに区分した合計金額(税抜または税込のどちらかで統一)
税率ごとに区分した消費税額等 または 適用税率(どちらかでOK)
(※買手の氏名や名称は不要)

💡補足:手書きの領収書でも、上記6項目を満たしていれば適格簡易請求書として有効です。


3 よくある実務上の疑問と対応ポイント

● 消費税額と税率、両方記載しなきゃダメ?

どちらか一方でOK。もちろん、両方記載しても差し支えありません。
ただし、消費税額を記載する場合は、1円未満の端数処理は税率ごとに1回のみ
。商品ごとの端数処理はNGです。


● 税抜価格と税込価格が混在してもいい?

→ 同一の請求書内ではいずれかに統一する必要があります。
ただし、定価制の商品で価格が明確な場合は例外あり。


● 値引きのある場合は?

→ 税率ごとに区分された値引き後の合計額を記載すればOKです。


4 こんな方は今すぐ確認を!

  • 「小売業だけど、レジシステムが古くて対応できていない…」

  • 「領収書を手書きで発行しているけど、適格簡易請求書になるの?」

  • 「消費税額の記載方法があいまいで不安…」

制度を正しく理解すれば、特別な書式を使わなくても、現行の運用で対応可能なケースが多くあります!

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まとめ インボイス制度に無理なく対応しよう

適格簡易請求書は、小売業や飲食店業などの実務に即した柔軟な制度です。
ただし、記載事項を満たしていないと、取引先が仕入税額控除できずトラブルの元になることも。

✅ ポイントを再確認!

  • ご自身の事業が「適格簡易請求書」の対象か?

  • 6つの記載事項をきちんと満たしているか?

  • 現在の運用がそのままで対応可能か?

コラム最下署名

飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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