こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。
インボイス制度が始まり、適格請求書の交付・保存が税務処理の基本となりました。
しかし、商品の販売形態が「委託販売」や「代理販売」のような三者間取引の場合、
「誰が誰に対してインボイスを交付すべきか?」
「委託者が適格請求書を交付しないといけないの?」
といった疑問をお持ちの事業者様も多いのではないでしょうか。
実は、そうしたケースでは「媒介者交付特例」を利用することで、
受託者(仲介者)側がインボイスを交付することが可能です。
今回はこの媒介者交付特例について、実務対応を交えながら解説します。
1 媒介者交付特例とは?代理交付との違いと基本の仕組み
通常、商品の販売者=課税資産の譲渡者である委託者が、購入者に対してインボイスを交付する義務があります。
これを代理交付といいます。
しかし、
✅ 委託販売や取次販売など、受託者(代理店や販売代行)が実務上の販売を担っているケース
では、インボイス交付の手間や現実的な取引慣行に配慮し、
受託者が委託者に代わって適格請求書を交付できる制度が設けられています。
これが「媒介者交付特例」です。
✅ この特例のポイント
項目 | 内容 |
---|---|
誰が交付する? | 受託者(販売代行・仲介者) |
インボイスに記載する氏名・登録番号 | 受託者自身の情報を記載 |
代理交付との違い | 代理交付は委託者の名前を代理で記載、媒介者交付は受託者の名前を記載 |
法的効果 | 委託者が交付すべき適格請求書の代替と認められる |
2 媒介者交付特例の適用要件
この特例を利用するには、次の条件を満たす必要があります。
✅ 基本要件
委託者と受託者の双方が適格請求書発行事業者であること
受託者が課税資産の譲渡の媒介・取次ぎを行っていること
⚠ 受託者が適格請求書発行事業者でない場合、この特例は使えません。
その場合、委託者がインボイスを交付する義務を負います。
3 複数の委託者がいる場合の実務対応
受託者が複数の委託者の商品をまとめて1人の顧客に販売するようなケースでも、媒介者交付特例は適用可能です。
✅ インボイスの記載方法(2パターン)
委託者ごとに区分記載+端数処理も個別
一括記載+端数処理も合算
どちらでも構いませんが、取引内容を明確にする工夫が重要です。
なお、非インボイス事業者(免税事業者)である委託者が混在する場合は、
適格請求書発行事業者である委託者の取引のみを区分記載すれば問題ありません。
4 買手が委託者にインボイスを求めたら?
媒介者交付特例を適用して受託者がインボイスを交付した後でも、
買手が「委託者からもインボイスを交付してほしい」と希望することは可能です。
✅ この場合、委託者が再度インボイスを交付しても差し支えありません。
ただし、仕入税額控除は同一取引について一度しか受けられません。
買手側で重複控除とならないよう注意が必要です。