【相続欠格とは?】相続人の資格を自動的に失う重大なケースと注意点
こんにちは。富士市・富士宮市の飯野明宏税理士事務所です。
民法上「相続欠格(そうぞくけっかく)」という制度があり、一定の不正行為をした相続人は自動的に相続資格を失います。
本記事では、相続欠格の定義・対象となる行為・他制度との違い・相続税への影響まで、実務家の視点からわかりやすく解説します。
📚 目次
第1章|相続欠格とは?~不正な相続人を排除する法律制度
相続欠格とは、特定の不正・不法な行為を行った法定相続人が、法律上当然に相続資格を失う制度です。
目的は、相続の秩序と公正を守ること。
相続で利益を得るために不正行為をした者が、遺産を受け取ることがないようにするための措置です。
第2章|相続欠格が適用される5つの行為(欠格事由)
相続欠格が成立するのは、民法891条で定められた次の5つの行為をした場合です。
欠格事由①:被相続人などを故意に殺害・殺害未遂して刑に処せられた
→ 故意による場合が対象。過失による事故は含まれません。
欠格事由②:被相続人が殺害されたことを知りながら、告訴・告発を怠った
→ 殺害者をかばって通報しなかった場合など。
欠格事由③:詐欺または強迫で遺言の作成・取消・変更を妨げた
→ 遺言内容の変更を妨害して、自分に有利な結果を狙う行為。
欠格事由④:詐欺または強迫により、被相続人に遺言をさせた、または取り消させた
→ 虚偽の情報や脅迫により、遺言を誘導した場合など。
欠格事由⑤:被相続人の遺言を偽造・変造・破棄・隠匿した
→ 遺言書を不正に書き換えたり、隠したりする行為。
第3章|相続欠格の成立と手続きの特徴
相続欠格は、上記の欠格事由に該当した時点で自動的に成立します。
家庭裁判所の判断や、被相続人の意思表示は必要ありません。
項目 | 相続欠格の特徴 |
---|---|
手続き | 不要(法律上当然に発生) |
被相続人の意思 | 無関係(許しても無効) |
取消し | 一切不可 |
効果 | 相続権・遺贈・遺言の権利すべて喪失 (民法891条による) |
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第4章|相続廃除との違いとは?
「相続させたくない」と考える際、相続廃除との違いを理解しておくことが大切です。
項目 | 相続欠格の特徴 |
---|---|
手続き | 不要(法律上当然に発生) |
被相続人の意思 | 無関係(許しても無効) |
取消し | 一切不可 |
効果 | 相続権・遺贈・遺言の権利すべて喪失 (民法891条による) |
第5章|代襲相続はどうなる?
相続欠格となった相続人に子や孫がいる場合、代襲相続が認められます。
つまり、相続権を失うのはあくまで欠格者本人だけであり、その子(代襲相続人)は相続人としての資格を有します。
これは、相続放棄とは異なる点です。
項目 | 相続欠格 | 相続放棄 |
---|---|---|
本人の相続資格 | 失う | 放棄によって失う |
子への影響 | 子は代襲相続できる(民法887条2項) | 子に代襲相続権なし(相続放棄は代襲の対象外) |
第6章|相続税の計算・基礎控除への影響
相続税法では、相続欠格者は法定相続人の数に含まれません。
ただし、欠格者に代襲相続人がいれば、その代襲者は含まれます。
これにより、以下の点で影響が出ます:
基礎控除額
→ 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数非課税限度額(生命保険金・退職金)
→ 500万円 × 法定相続人の数相続税の総額計算
→ 法定相続割合に基づき計算されるため、構成員の数が影響
第7章|まとめ:相続欠格は重大なペナルティ。正しい理解と早めの対策を
相続欠格は、法律によって自動的に適用される極めて厳格な制度です。
一度適用されると、相続人としての地位を一切失うことになります。
そして、その影響は「相続税」「相続手続き」「遺産分割協議」にまで及びます。