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【富士市・富士宮市】失敗しない税理士の選び方|信頼できるパートナーを見極める15の視点

こんにちは。富士市・富士宮の税理士、飯野明宏です。

「税理士に何を求めたらいいのか分からない」「どこまで任せてよいのか判断がつかない」

税理士は単なる申告書の作成者ではなく、経営の意思決定を支える参謀であり、成長を共にする伴走者です。本記事では、数ある税理士の中から本当に信頼できるパートナーを見極めるための15のチェックポイントをお伝えします。

1 なぜ「良い税理士選び」が事業に直結するのか

ある富士市の中小企業経営者が、こんな言葉をもらしました。

「もっと早く、ちゃんと探していればよかった。」

税理士との契約は、通常、年単位で続く長期的な関係です。一度選んでしまうと変更しづらいため、最初の判断が極めて重要です。

もし適切でない税理士と契約してしまった場合、以下のような事態が生じる可能性があります。

  • ■節税や資金繰りについての助言が得られず、経営が非効率になる

  • ■経営が苦境に立たされた際にも、的確な助言を得られない

とくに富士市・富士宮市における地域密着型経営では、地元の事情に精通し、実務に強い税理士の存在が経営の安定と成長に直結します。


2 面談は4〜5人が基本。1人だけで決めてはいけない理由

「近所の税理士に紹介されたから」「最初に会った人が良さそうだったから」――
このような理由だけで税理士を決めてしまうと、後悔することもあります。

最低でも4〜5人、多ければ10人程度の税理士と面談し、比較・検討することが重要です。

比較項目チェックポイント
業務範囲必要なサービス(申告・相談・会計指導など)を網羅しているか
コミュニケーション話しやすく、説明が丁寧で理解しやすいか
専門性業種や事業フェーズに対する理解があるか

富士市・富士宮市周辺でも、無料相談や初回面談を受け付けている税理士事務所は多くあります。複数人と話すことで、報酬体系や人柄の違いを肌で感じることができます。


3 税理士事務所のタイプを見極める

税理士事務所には、それぞれ得意とするサービス領域があります。大きく分けると次の3タイプです。

3-1. 低コスト型

  • ■特徴:必要最小限の業務に絞った対応(記帳代行、申告書作成など)

  • ■向いている企業:コストを抑えたい小規模法人・個人事業主

  • ■留意点:経営助言や資金調達支援などには対応できない場合が多い

3-2. 特化型

  • ■特徴:特定業種(例:医業、不動産、建設、飲食)に精通

  • ■向いている企業:業界特有の税務論点や助成金申請に関心がある事業者

  • ■利点:業界団体とのネットワークを持つケースもある

3-3. 付加価値型

  • ■特徴:経営支援・資金調達・事業承継など、広範囲のサービスを提供

  • ■向いている企業:成長ステージの企業、スタートアップ、事業再構築を目指す法人

  • ■利点:弁護士・社労士・行政書士など外部連携が強い

富士市・富士宮市には、特化型・付加価値型の税理士事務所も増えており、ニーズに応じた選択が可能です。


4 対応可能な業務の範囲を確認する

税理士が提供する業務は、事務所ごとに異なります。契約前に必ず業務範囲を確認しましょう。

業務カテゴリ主な内容
基本税務記帳指導、法人税・所得税・消費税の申告、年末調整
経営サポート資金繰り計画、金融機関との交渉、経営計画書の作成
税務調査対応書面添付制度の活用、事前準備、調査立会い、修正申告

「これもやってもらえると思っていたのに別料金だった」というトラブルを防ぐため、顧問契約に含まれる業務とオプション業務を明確にしましょう。


5 事務所の規模による違いを理解する

税理士事務所の規模も選定の参考になります。それぞれにメリット・デメリットがあります。

規模特徴
個人〜中小規模担当者と直接やり取りでき、柔軟で親身な対応が可能
大規模法人担当がチーム制で、専門分野に応じた分業体制が整っている

重要なのは、事務所の規模そのものではなく、「自社のニーズに適した支援体制があるかどうか」です。


6 税理士報酬は「総額」よりも「内訳」で比較する

報酬額はもちろん気になるポイントですが、重要なのは「何に対して、いくら発生するのか」です。

報酬区分内容
月額顧問料日常的な税務相談、記帳確認など
決算報酬決算書・申告書の作成、税務署への提出
年末調整・法定調書給与計算、源泉徴収票、支払調書など
オプション報酬相続対策、M&A、補助金申請、セカンドオピニオン等

不明点があれば契約前にすべて確認しておくことが肝心です。

7 対応のスピードと柔軟性を見極める

経営において「今すぐ相談したい」場面は少なくありません。そんなとき、税理士からの返答が遅い、担当者に連絡がつかない、といった状況では、業務に支障をきたす恐れがあります。

面談時には以下の点を確認しておくとよいでしょう。

  • ■メール・チャット・電話など複数の連絡手段に対応しているか

  • ■担当者が不在でも、バックアップ体制が整っているか

特に富士市・富士宮市の地域企業においては、地元密着だからこそ「すぐに駆けつけてくれるか」「地元の事情に精通しているか」といった点も判断基準になります。


8 信頼できる「人柄」と誠実な姿勢を持っているか

税理士との関係は、単なる業務のやりとりに留まらず、人間関係の信頼性が大きく影響します。

以下のようなポイントを面談時に観察してみてください。

観察項目チェックポイント
傾聴姿勢自社の話を真摯に受け止め、丁寧に耳を傾けているか
フィードバック表面的な回答ではなく、具体的かつ現実的な助言があるか
誠実さ売込みよりも、課題解決を第一に考えてくれているか

9 相談しやすい空気感があるかどうか

「こんなことを聞いても大丈夫だろうか…」
そう感じてしまう税理士との関係では、本音の相談がしづらくなってしまいます。

税理士は、ときに社内の誰にも相談できない経営上の悩みを打ち明ける存在でもあります。気兼ねなく相談できる雰囲気があるかは、極めて重要な判断材料です。


10 経営支援まで踏み込んでくれるか

良い税理士は、数字を処理するだけでなく、その数字をもとに「未来の経営」を一緒に考えてくれます。

たとえば…

  • ■銀行融資に必要な資金繰り表や経営計画の作成

  • ■KPI(重要業績評価指標)の導入や予算管理支援

  • ■利益シミュレーションに基づく意思決定のアドバイス

富士市・富士宮市でも、経営支援型税理士を求める企業が増えており、こうした付加価値が差別化の鍵になります。


11 耳の痛いことも、正直に伝えてくれるか

時には、経営者の判断に対して「NO」と言う勇気が求められる場面もあります。例えば、無理な節税スキームやリスクのある投資判断に対して、税理士が忖度せずに意見してくれるかどうか。

長期的な経営を考えるうえで、経営者の「YESマン」ではなく、信念をもって助言してくれる税理士こそ、真のパートナーといえるでしょう。


12 税務調査に対する備えがあるか

税務調査は、突然やってくることもあります。そのときに頼れる税理士がいるかどうかで、企業のリスク対応力は大きく変わります。

  • ■税務調査時の立会いや、調査官との交渉経験があるか

  • ■調査前の事前チェックや帳簿整備のサポートがあるか

地域密着型の税理士であれば、富士税務署・富士宮税務署との対応経験も豊富で、安心して任せられるはずです。


13 ITと制度改正への対応力があるか

近年の税務は、デジタル化と制度改正の波が急速に押し寄せています。これに適切に対応できる税理士でなければ、企業に不利益が生じるおそれもあります。

チェックすべきポイント:

  • ■クラウド会計への対応力

  • ■電子帳簿保存法やインボイス制度への理解と実務実績

こうした対応は、特にIT化を進める富士市・富士宮市のスタートアップや成長企業にとって必須の条件です。


14 継続的なコミュニケーション体制があるか

月次面談、決算前の予測シミュレーション、「契約後の継続支援」があるかを確認しましょう。

定期的に顔を合わせ、経営数字を一緒に確認できる税理士がいれば、経営判断の精度も格段に高まります。


15 最終判断は「信頼できるかどうか」

ここまで15の視点をお伝えしてきましたが、最終的には「この人に任せたい」と思える信頼感が決め手となります。

顧問料の金額や業務範囲だけでは測れない、“信頼”という無形の価値こそが、税理士選びの核心です。

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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役員による使い込みに関する税金

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。
会社の資金が、役員によって私的に使い込まれる(横領・不正経費使用など)という事態は、経営に重大な損害を及ぼすだけでなく、税務上の処理にも複雑な対応を求められます。

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今回は、法人税における所得計算への影響を中心に、役員の使い込みが発覚した場合の税務上の取り扱いについて解説します。


リンク 税大ジャーナル 横領等の不法行為と帰属を巡る一考察


1 横領損失と損害賠償請求権は同時に計上されるのが原則

役員による資金の不正使用が判明した場合、会社にとっては「横領損失」が発生したとされます。
税務上は、原則として横領が発覚した時点で損失を損金計上します。

同時に、会社は加害者である役員に対して損害賠償請求権を取得し、損害賠償相当額を益金に計上します。これを「同時両建説」と呼び、会計処理の例は以下のとおりです。

(借方)横領損失 10,000千円 / (貸方)売掛金 10,000千円

(借方)未収入金 10,000千円 / (貸方)損害賠償金収入 10,000千円

この処理により、損金と益金が同額となるため、所得金額には影響しません

従業員の横領について >


2 損害賠償を途中で免除した場合のリスク

会社が役員の資力を確認したうえで、損害賠償請求を途中で免除した場合には注意が必要です。
この場合、免除額は役員に対する報酬として取り扱われます。

  • ■役員賞与は定期同額でなければ損金算入不可 → 会社の所得が増加

  • ■既に解任された元役員への免除は「寄付金」とみなされ、一部しか損金にできない

つまり、請求を免除することで、逆に法人税の負担が増加する結果となる可能性があるのです。

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3 過年度にわたる使い込みが発覚した場合の対応

使い込みが過去の事業年度にわたっていた場合、次のような問題が生じます。

  • 過年度の売上漏れ、架空経費の発見

  • 修正申告の必要(本税+加算税+延滞税)

この場合、税務署に修正申告書を提出し、過去の所得を是正する必要があります。


まとめ|税務上も刑事上も重大なリスク。未然防止と早期対応を

役員による使い込みが発覚した場合の法人税上の影響は次のとおりです。

  • ■発覚時点では、損失と損害賠償が両建てで処理され、所得への影響はないのが原則
  • ■回収不能が明らかになれば、損金処理が可能(貸倒損失)
  • ■免除した場合は、役員賞与または寄付金として損金不算入
  • ■過去年度にさかのぼる場合は、修正申告と追加課税のリスク
  • ■そもそも使い込み行為は刑事罰の対象となることもある

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静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

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従業員の横領が発覚したら?法人税の所得計算3つのポイント

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。
今回は、会社経営にとって最もショックな出来事のひとつ、「従業員による横領」が起きてしまった場合の法人税における所得計算のポイントを解説します。

横領行為はあってはならないものですが、発生してしまった場合には、損失の処理や損害賠償請求権の扱いなど、税務処理が非常に複雑です。事例を交えながら、どのような会計・税務対応が求められるかを見ていきましょう。


リンク 税大ジャーナル 横領等の不法行為と帰属を巡る一考察


横領が発覚した場合の所得計算のポイント

横領が起きた場合、法人税の観点からは次の3つの項目が重要になります。

1. 売上の計上時期

従業員が横領したとしても、会社名義で商品が販売されていれば、販売時点で売上として計上しなければなりません
代金が会社に入金されていないという事実は、売上の計上義務を免れる理由にはなりません。

2. 横領による損失(横領損失)の損金算入

横領された金額については、「横領損失」として損金算入が認められます
この場合、損失を計上するのは「横領が発覚した事業年度」ではなく、実際に横領が行われた事業年度とされることが一般的です。

3. 損害賠償請求権の益金(雑収入)計上時期

会社は、横領した従業員に対して損害賠償請求権を有します。
この損害賠償請求権に相当する金額は、雑収入として益金に算入する必要がありますが、その計上時期にはいくつかの考え方があります。

通説:同時両建説(損失と益金を同年度に計上)

税務上は「損失が発生した事業年度に損害賠償請求権も同時に益金計上する」とする考え方が通例です。
これを「同時両建説」といいます。

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まとめ|横領と所得の関係は「売上・損失・雑収入」を同じ期に揃えることが原則

従業員の横領があった場合には:

  • ■商品販売による売上 → 発生時点で課税対象

  • ■横領された損失 → 発生時点で損金算入

  • ■損害賠償請求権 → 同時期に雑収入として益金計上(通例)

(借方)横領損失 10,000千円 / (貸方)売掛金 10,000千円
(借方)未収入金 10,000千円 / (貸方)損害賠償金収入 10,000千円

損害賠償請求権は実務上、未収入金とされ、回収不能だった場合は貸倒損失となりますが、これは貸倒損失の規定によります。
貸倒損失について >

この3つを同じ事業年度で処理するのが原則的な考え方です。
なお、「いつ知ったか」「請求権が確定したか」「回収可能かどうか」など、実態によって判断が分かれるため、慎重な検討が必要です。

役員の横領について >

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貸倒引当金とは?会計・税務の違いと実務のポイント

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。

企業活動では、売掛金や貸付金などの債権回収リスクと常に隣り合わせです。

倒産した社長
「この取引先、本当に払ってくれるだろうか?」そのような不安を抱えた経験をお持ちの方も多いと思われます。

今回は、万一に備えて損失を事前に計上する「貸倒引当金」について、会計上のルールと法人税法における取扱いについて解説いたします


第1章|貸倒引当金とは?

貸倒引当金とは、将来債権が貸倒れとなる可能性に備えて、あらかじめ費用(損金)として見積もり計上する会計上の処理

です。

対象となるのは、売掛金や貸付金などの金銭債権。取引先の倒産や経営破綻によって回収不能となるリスクを踏まえ、早めに損益に反映する仕組みです。

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第2章|会計上の貸倒引当金

計上の4要件

企業会計原則では、以下すべてを満たす場合に引当金を計上することが求められます。

  1. 将来の特定の費用または損失である

  2. 当期以前の事象に起因している

  3. 発生可能性が高い

  4. 合理的な見積額がある

債権の区分と引当方法

会計上、金銭債権はリスクに応じて次の3つに分類されます:

債権の区分と貸倒引当金の評価方法
区分危険度評価方法
一般債権総括引当法(実績率や一定割合に基づく一括評価)
貸倒懸念債権個別引当法(債務者の財務状況や回収見込に応じて評価)
破産更生債権等個別引当法(原則として全額引当、回収不能が前提)

第3章|税務上の貸倒引当金の考え方

貸倒引当金については一定の場合に法人に限って、損金算入が認められています

税務上のポイントは、以下の2区分です:

  • ■一括評価金銭債権:売掛金など、広範囲な債権に一律で見積もる方式
  • ■個別評価金銭債権:回収困難と認められる個別債権を対象に、個別評価する方式

どちらも会計上で引当金が計上されていることが税務上の前提条件です。


第4章|一括評価金銭債権の取扱いと繰入限度額

一括評価の対象となる債権(例):

  • 売掛金、貸付金、未収手数料、未収家賃など

  • 保証履行後の求償権、受取手形、先日付小切手など

対象外の債権(例):

  • 預金、前払金、保証金、仕入割戻し、保険金請求権など

計算方法:

① 実績繰入率(原則)

過去3年の貸倒実績をもとにした繰入率を、期末残高に乗じます。

 繰入限度額 = 期末残高 × 実績繰入率

② 法定繰入率(中小企業の特例)

資本金1億円以下の中小法人は、業種別の「法定繰入率」による計算が可能です。

 例:製造業=8/1000、卸売業=10/1000


情報元:国税庁 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定


情報元:国税庁 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の対象となる金銭債権の範囲


第5章|個別評価金銭債権の取扱いと繰入限度額

対象となる典型的な4事例:

貸倒引当金の繰入限度額と事由別算定方法(法人税法上)
事由繰入限度額の算定
更生・再生計画の認可決定等回収可能額を除いた全額を繰入可能
長期の債務超過財務内容等から判断し、回収見込がないと認められる金額
破産・民事再生等の申立て(債権額 - 取立見込額)× 50%
公的債務者の長期不履行同上:(債権額-取立見込)× 50%

実務で特に注意すべき点:

  • 「実質債権とみられない金額」や相殺債務は除くこと

  • 回収不能性を証明するため、信用調査・督促履歴・保証履行等の証拠資料の保存が必須


第6章|消費税との関係

貸倒引当金を繰り入れた段階では、消費税の処理は発生しません
実際に貸倒れが発生し、確定した時点で、売上にかかる消費税から控除できる仕組みです。


第7章|まとめとアドバイス

  • 貸倒引当金は、将来の貸倒れに備える重要な会計・税務処理です。

  • 税務では、「一括評価」と「個別評価」に分かれ、繰入額には厳格なルールがあります。

  • 適切な計上時期、証拠資料、会計処理との整合性が不可欠です。

 

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貸倒損失とは?税務上の3つの判断基準と実務で注意すべきポイント

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。
企業経営において、取引先からの売掛金や貸付金が回収できないという「貸倒れ」は、できれば避けたい事態です。しかし、万一発生してしまった場合でも、税務上適切に処理することで、損金に算入し税負担を軽減できる場合があります。

なお、、「貸倒損失」として損金に計上するには、法人税法基本通達に定められた厳格な要件を満たす必要があります。単に回収できないからといって、損金処理できるわけではありません。

今回は、法人税基本通達9-6-1〜9-6-3に基づいて、貸倒損失として認められるための3つの判断基準と、実務上の注意点について解説します。


情報元:国税庁 貸倒損失として処理できる場合


1 法律上の貸倒れ(法基通9-6-1)

法律に基づいた手続きや債権者間の協議等により、債権の全部または一部が正式に切り捨てられた場合に該当します。

主な具体例

会社更生法や民事再生法に基づく更生計画・再生計画の認可決定

  • ■特別清算の協定認可決定
  • ■金融機関や行政のあっせんによる債権放棄
  • ■債務超過が相当期間継続し、書面で債務免除した場合

 

最初の3つは外部の第三者によって「客観的に回収不能である」と判断されるケースですが、最後の債務免除については、債権者自らが意思表示を明確にする必要があります。
なお、債務免除を行ったとしても、その目的が合理的でなく、例えば関係会社への利益供与と判断された場合は、「寄附金」として損金不算入になる可能性があります。

このタイプは、損金経理は不要で、該当する事実が発生した事業年度で強制的に損金算入されます。


2 事実上の貸倒れ(法基通9-6-2)

法律上は債権が残っているものの、債務者の資産状況や支払能力などからみて、全額が回収不能と客観的に判断される場合です。

主な該当例

  • ■債務者の破産・強制執行・差押え・行方不明
  • ■長期間にわたる資金枯渇・債務超過状態
  • ■債務者の死亡・災害・取引停止・経営破綻

これらの事由により、合理的に回収不能と判断できることが前提です。税務上は「実態に即して判断」することが求められており、形式にとらわれず、債務者の経済的状況や債権回収の難易度、労力と費用のバランスも考慮されます。

この基準による処理では、損金経理が必須です。すなわち、帳簿に明確に費用として記載されている必要があります。

破産した社長


3 形式上の貸倒れ(法基通9-6-3)

形式的な事実に基づいて、一定の営業債権(売掛金・未収請負金など)について貸倒処理が認められるケースです。

主な要件

  • ■債務者との取引停止から1年以上経過しても弁済がない場合
    ※「取引停止日」「最後の弁済期日」「最後の弁済日」のうち最も遅い日から1年
  • ■債権額が小額であり、督促をしても弁済がなく、回収コストが債権額を上回ると見込まれる場合

形式要件を満たすだけで貸倒処理が認められるため、明確な経済的事実の証明は不要ですが、あくまで営業債権に限られ、貸付金などには適用されません。

この場合も、損金経理の処理が必須です。また、処理後は「備忘価額」として1円を帳簿に残す必要があります。


4 実務上の注意点と対応策

計上時期の管理

  • ■「回収不能になった事業年度」でしか計上できないため、タイミングを逃すと認められません。

  • ■事実上の貸倒れや形式上の貸倒れでは、事実発生時に損金処理しなければ後の修正は困難です。

証拠資料の整備

  • ■内容証明郵便、督促履歴、債権管理記録、代表者とのやり取りの記録

  • ■信用調査報告書や債務者の資産状況、経営破綻の証明も有効な証拠となります

消費税の処理

  • ■貸倒処理を行うと、対応する消費税額も売上税額から控除することが可能です。

更正の請求も視野に

  • ■すでに申告済みの事業年度においても、5年以内であれば「更正の請求」により損金算入と還付請求が可能です。


まとめ

貸倒損失の処理は、税務上の損金算入による節税効果をもたらす一方で、判断基準が厳格で証拠の整備も不可欠です。特に事実上の貸倒れや債務免除を伴う処理では、適切な立証がなければ税務調査で否認される可能性があります。

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債権者集会等があった場合の貸倒れ処理とは?

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。
今回は、取引先の経営悪化や債権者集会の発生時における「売掛金や貸付金の貸倒損失処理」について、法人税法上の取扱いを解説します。

本ブログは次のブログの具体例となっています。


情報元:国税庁 貸倒損失として処理できる場合

貸倒損失について >


1 設例:売掛先の経営悪化と債権者集会の発生

ある得意先A社は、業況悪化により10か月間にわたり売掛金の支払を停止しています。債権者間では債権回収に向けた相談が始まっており、当社としてもA社との取引を停止したうえで今後は現金取引へ移行する意向です。

また、別件として、倒産した会社社長が更生手続開始の申立てを行ったB社に対して、当社は2,000万円の貸金を有しており、担保不動産の査定額3,000万円のうち300万円が回収見込額とされています。このようなケースにおいて、税務上の貸倒処理が可能か否か、判断基準が求められます。

破産した社長2


2 貸倒れの2分類:法的貸倒れと事実上の貸倒れ

法人税法上、貸倒損失の処理には次の2つがあります。

■第一に、「法的整理による貸倒れ」
 貸金等の一部または全部が切り捨てられたような場合。例えば、会社更生法等の更生計画の認可の決定等により、該当部分については消滅時点における貸倒損失として損金経理が認められます。

■第二に、「事実上の貸倒れ」
 相手方の資産の状況、や支払能力等からみて、その全額が回収できないことが明らかになった場合であり、法人が損金経理を行うことを条件に、貸倒損失として損金算入が認められます。

ただしこの場合、納税者は貸倒損失とすべき事実を具体的に特定して主張し、損失の存在を合理的に推認させる立証が必要とされています。

9-6-1 金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ

法人の有する金銭債権について次に掲げる事実が発生した場合には、その金銭債権の額のうち次に掲げる金額は、その事実の発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する。

(1) 更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定があった場合において、これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額

(2) 特別清算に係る協定の認可の決定があった場合において、この決定により切り捨てられることとなった部分の金額

(3) 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額

イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの

ロ 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの

(4) 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額

9-6-2 回収不能の金銭債権の貸倒れ

法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする。

(注) 保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできないことに留意する。


3 A社への対応:時期尚早な貸倒処理に注意

設例にあるA社に関しては、売掛金の支払が滞っているものの、資産や支払能力の詳細が明らかになっていない段階では、「回収不能」と認めるには早計とされます。

したがって、A社についての貸倒処理は、客観的かつ確定的な事情が整うまで控えるのが妥当といえるでしょう。

法的整理が行われていない場合でも、金融機関等が仲介し債権者集会等を通じて「調整的な債務整理」が行われた場合には、その処理に客観性と公正性が認められれば、貸倒損失の計上が許容される場合もあります。


4 B社への対応:更生手続開始

一方、B社については更生手続開始の申立てがなされているため、次のように処理できます。

  • 貸付金残高2,000万円のうち、回収見込額300万円を除いた残額1,700万円

  • このうち50%相当額=850万円については、個別貸倒引当金として損金に算入可能性を検討することができます

このように、法的整理の手続きが客観的に開始され、評価可能な担保価値も把握されている場合には、貸倒引当金による損金処理が正当に認められるとされます。


5 まとめ:債務整理・債権回収不能の判断には慎重さと証拠が必要

貸倒損失として損金処理を行うためには、

  • 相手方の経済的状況の把握

  • 支払能力の立証

  • 整理手続の有無と進行状況

  • 債権者集会等の合意文書や鑑定資料

といった具体的かつ合理的な証拠の整備が不可欠です。
安易な「経営悪化=貸倒処理」といった判断は、税務否認のリスクを伴います。

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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