相続税申告での重要論点「名義預金」

2022年10月27日 飯野悠美子

もし、税理士が、相続人から入手した金融機関の残高証明書だけを使って、そのまま申告をしたら、かなり特殊な相続を除き、ほぼ現預金の相続財産に抜けがあると思います。

通常は、死亡すると、お亡くなりになった方の金融機関の口座は凍結されてしまいます。そのため、お亡くなりになりそうになる数日前に、お葬式代等のお亡くなりになった場合に必要となるお金を引き出したりします。この金額については、もちろん、相続財産に加算しなければいけません。

同様に、いわゆる「名義預金」と言われるものがあります。簡単に説明すると、お亡くなりになった人以外の名義になっているけれども(通常は、他の人の口座に入っています)、実際は、お亡くなりになった人の財産である預金のことです。

名義預金は、昔から、税務署が注目しているであろう最重要論点の一つです。

税務署は、相続税の申告が提出されたら、金融機関に問い合わせをし、亡くなった人の口座、そのご家族の口座の情報の双方を入手し、入出金を突き合わせて、資金の移動について調査しているでしょう。

そして、資金の移動があり、合理的な理由が不明な場合、かつ、その名義預金が相続財産に加算されていない場合には、調査に来る可能性がグッと高まると考えてよいでしょう。

我々の事務所では必ず3年から5年間の通帳をお預かりし、大きな資金の移動については相続人様にどういった理由で、この資金の移動があったのかを確認します。そして、必要があれば、その資金の移動についての説明書を相続税申告書に添付します。税務署の疑問を事前に排除し、調査の可能性を低くするためです。

依頼人様である相続人様を信頼して相続税の申告書を作成していますので、税務署のように、それ以上踏み込んだ調査はしません。したがって、ここで真実が語られなければ、税務調査の可能性は、非常に高まると思ってもらって間違いないでしょう。税務署は、ある程度の金額について、疑問が残ったままほおっておくとは考えづらいからです。そして、税務署は強制調査権を持っている以上、我々よりも情報を持っています(場合によっては相続人よりも持っています)。

名義預金については、法律的な観点というよりも、実務的な観点が濃厚であるため、私が経験した名義預金に関するエピソードを思い出したら、今後も継続的にコラムにしていこうと思います。

 

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