相続税申告の依頼 なぜ税理士は直前の依頼を嫌がるのか?

2022年10月26日 飯野悠美子

正直言って直前の相続税申告のご依頼にはかなり慎重になります。申告期限まで1月を切った相続税申告は受けませんし(極めて簡単なものは受けます)、3月を切ったものは受けられるかどうかを迅速かつ慎重に検討します。

めんどくさいからではないですし、急がなければいけないからでもありません。それ以上に大きなリスクがあるからです。

相続税の申告期限までに申告が間に合わなければ、非常に重要な、様々な特例が受けられなくなるからです。

1 配偶者の税額軽減

配偶者は自分の法定相続分、または1億6000万円のいずれか多い方までの取得財産については相続税は課税されません。この特例が期限後申告となると受けられません。

2 小規模宅地の評価減

相続税の申告において、最も重要だとも言える、小規模宅地の評価減が適用できなくなります。ご自宅や賃貸不動産、事業用不動産の評価が最大80%減となるものです。

つまり、間に合わなければ、非常に重要な特例が受けられず、かなり高額な相続税となってしまいます。これを、一度受託してしまうと「期限前に依頼したんだから、税理士の責任だろ!」と言われてしまいます。相続税の申告は、お客様とのやり取りに時間がかかりますので、全ての資料が簡単に揃うか、不透明なところがあり、これは非常に税理士事務所にとっては大きなリスクとなります。じゃあ、最初から受けないでおこう、となるわけです。

上述の特例については、遺産分割協議が、期限内に、まとまらない場合も似たようなことが起こります。配偶者の税額軽減や、小規模宅地の評価減については、期限内に申告をすれば相続税の申告期限後3年を経過する日までに分割を行えば更生の請求により税金を返してもらうことができます。レアなケースでは、その方にとっては重要な特例であっても、遺産分割協議が整っていなかったがために、更正の請求ができない場合もあります。

相続税申告の税理士報酬は高いから、ご自身で相続税の申告をやってしまおう、とお思いの方も最近多くなってきています。私は「これは大変なことになるな」とは内心、思っていますが、自分でやるというからには止めることはできません。

しかし、相続税の申告書を完璧に作成することは、税理士以外不可能だと思っておいた方が良いでしょう。細かな検討事項が非常にたくさんあります。

相続税申告の税理士報酬が高いのには理由があります。まず、税法以外の民法を理解しておかなければいけません。税理士試験にも公認会計士試験にもない科目です。私は司法試験の教材で勉強しました。

また、亡くなった方の確定申告を準確定申告といいますが、準確定申告の対象なのか相続税申告書の対象なのか迷う事項については、慣れていない税理士では、ほぼ間違います。

そして、1つの相続に1つはある判断に迷う部分については、判例や採決等のリサーチが必要不可欠です。ここに、非上場株式の評価が入ってくると非常に複雑であり、法人税法にも深く精通していなければいけません。

このように、相続税法等についてはもちろん、相続税法、所得税法、法人税法の全てを、横断的に高いレベルで研鑽を積んだ税理士でなければ、正しい相続税申告書を作成することができないのです。最も難しく、しかし、私のように勉強しか楽しみがなく、難しいことを勉強するのが大好きな税理士にとっては最も楽しい税目が相続税なのです。

最近、相続税申告の後に、「更正の請求で、相続税が安くなりますよ?」と営業をかけてくる税理士もいるらしいのですが、私は「やれるもんなら、やってごらん」と思いながら、楽しみに待っています。私の申告書から減額するとなると、かなりグレーなことをやらないといけないと思うのですが、そのリスクの責任を営業をした税理士は、はたして取ってくれるのでしょうか?私なら、契約書におけるその税理士の責任の範囲を必ず確認します(というよりも、私は契約をするときは、どんな契約であっても全ての文章に目を通します。そして、不明な点は必ず質問します)。

依頼したら納税者だけが損をするという契約書になっているのではないか、と邪推してしまいます。自由経済社会ですから、どんなビジネスモデルがあっても良いとはおもいます。

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