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【中小企業・個人事業主向け】少額減価償却資産の3つの特例を活用しよう

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

事業で使用するパソコンや什器などの資産を購入した際、一定額以上であれば通常は「減価償却」によって数年かけて経費化します。しかし、取得価額が比較的少額の固定資産については、購入した年に全額を経費にできる特例制度が用意されています。

本記事では、中小企業や個人事業主が活用できる3つの少額減価償却資産の特例について、それぞれの制度概要、適用条件、メリット・デメリットを解説します。


1 10万円未満の少額減価償却資産:誰でも使える基本の特例

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制度の概要

取得価額が10万円未満の資産は、購入年度に全額を即時に経費計上できます。

特徴

10万円未満の少額減価償却資産の税務上の取扱い

項目内容
対象者中小企業・大企業問わずすべての事業者
経理処理消耗品費または減価償却費で処理
年間限度額なし(件数制限なし)
添付書類申告書等への添付不要
償却資産税非課税(固定資産税の対象外)
貸付資産原則除外(ただし、事業の主要目的に供する場合は対象)

2 30万円未満の特例:中小企業向けの強力な即時償却制度

u8922936522_Japanese_businessman_receiving_small_office_equip_2623e4f9-297b-4fec-a13a-d94e112fd6cd_3制度の概要

30万円未満(※)の資産は、購入した年度に全額を損金算入できます。中小企業支援のための制度です。

※30万円未満という金額に消費税が含まれるかどうかは、経理処理の方法によって変わります。

特徴

少額減価償却資産の特例(30万円未満)の取扱い
項目内容
対象者青色申告をしている中小企業者・個人事業主
(資本金1億円以下などの要件あり)
年間限度額300万円(12ヶ月の事業年度基準)
※期首取得・合計で判定
添付書類
  • 法人:別表十六(七)への記載
  • 個人:青色決算書の備考欄 等に記載
償却資産税課税対象(固定資産税として申告必要)
貸付資産原則除外
ただし、事業の主たる目的で使用するリース資産等は例外

ポイント

  • ■即時償却により、利益が出ている年度の節税に有効

  • ■年間限度超過分は減価償却で処理が必要


3 20万円未満の一括償却資産:費用を3年間で分割

制度の概要

20万円未満の資産をまとめて取得し、3年間で均等償却する制度です。全額を初年度に落とす必要はなく、費用を分散できます。

特徴

一括償却資産の税務上の取扱い(10万円以上20万円未満)

項目内容
対象者すべての法人・個人事業主が対象(中小企業に限られない)
償却方法取得価額 ×(事業年度の月数 ÷ 36) を毎年償却(3年均等償却)
添付書類法人税申告書別表十六(八)などへの記載が必要
償却資産税非課税(固定資産税の対象外)
貸付資産原則除外(例外なく対象外)

ポイント

  • ■個別管理不要、資産を合計して一括処理

  • ■償却資産税回避を重視する場合に有利


4 中小企業が選ぶべき特例はこれ!

取得価額ごとに最適な選択肢を選ぶことで、節税効果を最大化できます。

取得価額ごとのおすすめ減価償却特例と選定理由

取得価額おすすめの特例主な理由
10万円未満10万円未満の即時償却制限なし・書類不要・その年に全額費用化が可能
10万~20万円未満状況に応じて選択利益があるなら30万円未満特例
赤字なら一括償却資産による分散処理が有利
20万~30万円未満30万円未満の特例中小企業限定/年間300万円まで即時償却が可能で節税効果大

5 制度選択の注意点と申告の実務

  • ■特例の要件を満たさないと税務調査で否認リスク

  • ■貸付資産の扱いや消費税の計算方法に注意

  • 正確な台帳管理・申告書添付が必須

  • ■繰越欠損金がある場合は即時償却の節税効果が薄れる可能性も


6 まとめ 少額資産の特例を使いこなしてスマートに節税!

少額減価償却資産に関する3つの特例比較
特例上限対象償却方法償却資産税
10万円未満無制限すべての事業者即時償却非課税
30万円未満の特例年300万円中小企業者等(青色申告)即時償却課税
一括償却資産制限なしすべての事業者3年均等償却非課税

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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税務署の申告書控えへの収受日付印が廃止!知っておくべき対応策

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

2025年(令和7年)1月1日から、税務署に提出した申告書や届出書等の「控え」に収受日付印(いわゆる受付印)を押さない運用が全国で始まりました。

これまで収受印は、提出した事実を証明する“証拠”として多くの場面で活用されてきました。特に紙で提出していた中小企業や個人事業主にとっては、大きな実務的変化です。

本記事では、この制度改正の概要と影響、そして今後の提出記録の取り扱いについて解説します。

リンク 国税庁PDF 申告書等の控えへの収受日付印の押なつの見直しに関するQ&A 


1 どんな変更?収受日付印の押なつが廃止

対象となる書類

国税庁、国税局、税務署に提出するすべての文書が対象です。
申告書、申請書、請求書、届出書など、あらゆる税務文書に影響があります。

実施時期

2025年1月1日以降、全国の税務署で一斉に実施されています。

変更の内容

これまで税務署窓口や郵送で提出した際、控えに押されていた「収受日付印」や「税務署名」が、原則廃止されました。


2 なぜ廃止された?背景にある「デジタル化」

今回の変更は、e-Tax(電子申告)の普及と税務行政の効率化を目的としています。

国税庁は、紙での事務処理を減らし、行政負担・納税者の負担を軽減する方向で制度改革を進めています。今回の収受印廃止もその一環といえます。


3 収受印の代わりになるものは?

 1. e-Taxの受信通知

e-Taxで提出した場合は、メッセージボックスに届く「受信通知(受付通知)」が提出事実の証明となります。

  • ■受付番号

  • ■提出者名

  • ■提出日

これらが記載されており、従来の収受印の代替となるものです。

 2. リーフレットの交付(紙提出者向け)

当面の間、紙で提出した人には、希望により税務署で「リーフレット」が配布されます。

  • ■提出日

  • ■提出先の税務署名(または業務センター名)

が記載されており、提出の証拠書類として利用できます。

※郵送提出時も、切手付き返信用封筒を同封すればリーフレットが返送されます。

収受印リーフレット


4 紙提出の場合の提出証明手段

① 申告書等情報取得サービス(所得税・青色決算書等のみ)

  • ■書面で提出しても、マイナンバーカードがあればe-TaxでPDFを取得可能

  • ■直近3年分が対象

  • ■所得税・青色申告決算書・収支内訳書が対象

② 税務署での閲覧(無料・写真撮影可)

  • ■窓口申請に限る

  • ■申請後その場で閲覧(郵送・オンライン不可)

  • ■写真撮影は可能

③ 保有個人情報の開示請求

  • ■内容確認および写し交付(取得まで約1か月)

  • ■窓口申請(手数料300円)またはe-Tax申請(200円)

  • ※法人の申告書には利用不可

④ 納税証明書の交付

  • ■所得や納税額の証明書は取得可能(提出日確認には不向き)

  • ■税務署窓口(400円/1枚)またはe-Tax(370円)


5 中小企業・個人事業主への影響と対応策

 銀行融資、補助金申請、保育所・奨学金などの収入証明で不便に

提出証明ができないと、「本当に出したのか?」という問題になる恐れがあります。

 必要な対応策

対応内容説明
e-Taxの活用電子提出に移行し、確実な記録管理を行う
リーフレットの保管当面は紙提出でも提出証明が可能
提出記録の整備控えに自分で提出日を記録/写しをスキャンして保管
郵送の工夫簡易書留・特定記録など記録が残る方法で提出

6 e-Taxへの移行を今こそ検討すべき理由

  • ■24時間提出可能

  • ■交通費・郵送費ゼロ

  • ■過去の申告情報の保存・管理が容易

  • ■控えも即時にデータで取得可能

■令和7年以降は電子申告への移行が、ますます現実的な選択肢となります。


7 まとめ 紙提出は証拠保全の工夫が必要。電子化への転換期に

税務署の収受印廃止は、小さな変更のように見えて、実務や証明手段に大きな影響を及ぼす制度改正です。

  • ■申告控えの保管と証明方法の見直し

  • ■電子申告への移行準備

  • ■社内の文書管理ルールの更新

これらを早めに進めることで、今後のトラブルや対応の負担を未然に防ぐことができます。

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この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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配当金を受け取ったら?確定申告と有利な課税方法の選び方

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

新NISAの導入や株式投資の普及により、「確定申告が必要なのか?」「どの課税方法が有利なのか?」といった疑問を持つ方も多いと思われます。

本記事では、配当金を受け取った際の確定申告の要否と、選択可能な課税方法の特徴と選び方を解説します。


1 配当金には税金がかかる:基本をおさらい

株式の配当金を受け取った場合、税法上「配当所得」として扱われます。
課税方法は上場株式と非上場株式で異なりますが、いずれも税金が課される点に注意が必要です。

上場株式の配当金

  • ■所得税・復興特別所得税:15.315%

  • ■住民税:5%

  • ■合計:20.315%(源泉徴収済み)


2 NISA口座の配当金は非課税(ただし条件あり)

NISA口座で受け取った配当金は非課税となります。
ただし、「株式数比例配分方式」を選択していることが条件です。

「株式数比例配分方式(かぶしきすうひれいはいぶんほうしき)」とは、株式の配当金を証券口座ごとの保有株式数に応じて、証券会社を通じて受け取る方式のことを指します。

確認ポイント:

  • 証券会社で比例配分方式を選んでいないと、配当金は課税口座に払い出され、非課税とならない場合があります。


3 上場株式の配当金:選べる3つの課税方法

上場株式の配当金については、次の3つの課税方法から選ぶことができます。

① 申告不要制度(源泉徴収のみ)

最もシンプルな方法で、確定申告は不要。配当所得は合計所得金額に含まれません。以下の⓶③と異なり、社会保険料への影響が基本的にないため、社会保険料の増加が気になる方はこの方法がオススメです。

メリット

  • ■手続き不要、扶養や控除条件への影響なし

デメリット

  • ■損益通算できない

  • ■人によっては税率が割高となる可能性あり


② 総合課税(配当控除を利用)

配当金を他の所得と合算し、累進課税により税額が決定されます。配当控除が使えるのが特徴です。

配当控除の例(所得1,000万円以下の場合)

  • ■所得税控除率:10%

  • ■住民税控除率:2.8%

適している人

  • 配当控除の恩恵が大きい人

注意点

  • ■合計所得に含まれるため、扶養控除や保険料に影響【注意】

  • ■所得税と住民税で異なる課税方法を選ぶことは令和5年分以降不可


③ 申告分離課税(損益通算できる)

配当所得を他の所得と切り離して申告し、一律20.315%で課税されます。

メリット

  • ■株式譲渡損失と損益通算が可能

  • ■譲渡損失は3年間繰越控除可能

デメリット

  • ■総合課税と違い配当控除は使えない

  • ■合計所得に含まれるため他の税制等に影響【注意】


4 課税方法の選び方と判断基準

株式等の課税方法と選択のポイント
課税方法適しているケースメリットデメリット
申告不要制度扶養控除を守りたい人、申告が面倒な人手間がかからない/所得に含まれないため扶養に有利控除なし・損益通算や損失繰越ができない
総合課税配当控除を活用したい場合配当控除の適用/税率が低くなる可能性あり所得が増え保険料・住民税・扶養判定に影響
申告分離課税株式譲渡損との通算・繰越控除を利用したい場合配当と譲渡の損益通算・損失繰越が可能配当控除が使えない/所得増により保険料等に影響

5 まとめ 配当金の確定申告、迷ったら「損益通算」「扶養控除」「配当控除」の影響で判断を

配当金の課税は一見シンプルですが、ご自身の所得状況や保有株式の状況によって大きく節税効果が変わります

  • ■NISA口座は非課税(要「比例配分方式」)

  • ■所得控除・扶養・保険料などに影響が出る可能性あり

  • ■損益通算したい場合は申告分離課税が基本

 

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18歳成年 成年年齢引き下げが相続税・贈与税に与える影響とは?

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

2022年(令和4年)4月1日より、民法の改正により日本の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。これは明治時代以来、およそ140年ぶりの大きな法改正です。

この変更により、18歳以上であれば親の同意なく契約が可能となり、社会的・法律的責任を負う年齢のハードルが下がりました。
そしてこの影響は、相続税・贈与税などの税制にも及んでいます。

本記事では、成年年齢引き下げに伴う相続税・贈与税への主な影響について、実務上の注意点とともに整理します。


1 成年年齢引き下げで何が変わったのか?

成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことで、若年層は次のような契約や行為を親の同意なく単独で実行できるようになりました。

  • ■携帯電話やクレジットカードの契約

  • ■賃貸住宅の契約

  • ■ローン契約 等

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2 税制に与える5つの主要な影響点(相続税・贈与税)

① 相続税の未成年者控除の対象年齢が「18歳未満」に

相続人が未成年の場合、相続税から控除できる「未成年者控除」の対象年齢が、20歳未満 → 18歳未満に引き下げられました。

控除額の計算式:

(18歳に達するまでの年数)× 10万円

例:17歳で相続した場合 → 1年分 × 10万円 = 10万円の控除
※これまでの制度では同じケースで30万円控除されていたこともあるため、控除額が減少する傾向に注意が必要です。

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② 遺産分割協議に18歳から単独で参加可能に

これまで、未成年者は親権者の代理がなければ遺産分割協議に参加できませんでした。親も共同相続人の場合、家庭裁判所で特別代理人の選任が必要でした。

しかし改正後は、18歳以上であれば法定代理人なしで協議に単独参加できます

これにより、家庭裁判所の関与が不要になる場面が増え、遺産分割手続きの迅速化が期待されます。


③ 相続時精算課税制度の年齢要件も18歳以上に

この制度は、一定の贈与額まで贈与税を納めず、相続時に精算する制度です。これまでは「贈与を受ける側が20歳以上」が要件でしたが、現在は18歳以上となっています。

  • ■適用開始:2022年4月1日以降の贈与から

  • ■年齢判定基準:贈与年の1月1日時点

この改正により、より早い段階で制度活用を検討できる環境が整いました。


④ 贈与税の「特例税率」が18歳から適用可能に

父母や祖父母から子・孫へ贈与した場合に使える特例贈与税率(低率課税)の年齢要件も、「20歳以上」から「18歳以上」に変更されています。

この特例は、一般贈与税率(最高55%)よりも税負担が軽くなります。


⑤ 住宅取得資金の贈与税非課税枠も「18歳以上」が対象に

直系尊属から住宅資金の贈与を受ける場合、一定額まで贈与税が非課税になる特例も、年齢要件が「18歳以上」に改正されています。

  • ■年齢判定基準:贈与年の1月1日時点

  • ■適用開始:2022年4月1日以降の贈与

マイホーム取得を支援する重要な制度であり、早期の資金計画の立案に寄与します。


⑥ 結婚・子育て資金一括贈与の非課税特例も18歳以上に

祖父母等から結婚・子育て資金として最大1,000万円まで贈与税が非課税になる特例も、年齢要件が変更されています。

  • ■改正前:20歳以上50歳未満
  • ■改正後:18歳以上50歳未満
  • ■年齢判定基準:贈与年の1月1日時点
  • ■適用開始:2022年4月1日以降の贈与

結婚や子育てのタイミングでより早期からの資金援助が可能となりました。

3 まとめ 18歳成年時代における相続・贈与の注意点

成年年齢の引き下げは、税務実務にも大きな影響を及ぼします。特に以下の点にご注意ください。

  • 未成年者控除の減額(控除額が小さくなる)

  • 遺産分割協議の単独参加が可能に(18歳以上)

  • 各種贈与税特例の年齢要件緩和(18歳から適用可)

相続や贈与の時期を検討される際は、これらの改正点を踏まえたうえで、年齢判定の基準日(1月1日)や適用条件を再確認することが重要です。

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【中小企業向け】【2025年4月改定】雇用保険料率が引き下げに

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

2025年(令和7年)4月1日より、雇用保険料率が改定されることが厚生労働省より正式に発表されました。今回の改定では、労働者・事業主の双方で負担する雇用保険料率が引き下げられます。これは、企業の人件費管理に直接関わる重要な変更です。

この記事では、改定の背景、具体的な変更内容、そして給与・賞与への適用タイミング、企業として必要な実務対応について、簡潔かつ正確に整理します。


1 改定の背景:なぜ引き下げられるのか?

雇用保険料率は毎年、制度の財政状況や雇用環境を踏まえて見直されます。2025年度の引き下げは、コロナ禍に対応するために導入されていた一時的な特例措置が終了し、雇用保険財政の健全化が進んだことを背景としています。

企業にとっては、雇用維持に向けた支援策からの正常化の流れともいえ、負担軽減が実現するものです。

参考として雇用保険料率の推移(一般の事業)を挙げます。

  • ■令和4年度:1.35%(年度途中で1.55%に引き上げ)
  • ■令和5年度:1.55%
  • ■令和6年度:1.55%(据え置き)
  • ■令和7年度:1.45%(引き下げ)

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2 改定後の雇用保険料率(令和7年度)

以下は2025年4月1日~2026年3月31日に適用される保険料率の一覧です。事業の種類ごとに違いがあるため、該当業種を正しく確認しましょう。

(出典:厚生労働省)

 


3 企業が取るべき対応策

雇用保険料率の引き下げは歓迎されるニュースですが、実務としては以下の対応が不可欠です。

① 給与計算システムの更新

使用中の給与計算ソフト、Excelテンプレート等で保険料率を手動入力している場合は、必ず更新しましょう。

② 人件費の再計算

会社負担分も引き下げとなるため、年間予算に余裕が生まれる場合があります。その分を賞与や福利厚生などに再配分することも検討に値します。

③ 従業員への周知

給与明細上の控除額が変動するため、労使間の不安防止のためにも、社内通知や掲示での周知が必要です。


4 据え置きとなる料率も確認

なお、以下の料率については令和7年度も変更はありません。

  • 労災保険料率:業種により異なり据え置き

  • 子ども・子育て拠出金率:0.36%(前年と同様)


5 まとめ 早めの準備と制度理解が鍵

雇用保険料率の改定は、年に一度の制度変更とはいえ、給与・賞与の実務に直結します。正確なタイミングで新料率を適用するには、締日・確定日を正しく把握することが最も重要です。

また、社内外の信頼を得るためにも、制度変更についての丁寧な説明と事前準備を欠かさないようにしましょう。

 

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【消費税】購入者が受け取るキャッシュバックの税務処理とは?

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

「家電を買ったらメーカーから5,000円キャッシュバック」「クレジットカードで1%還元」など、キャッシュバックは私たちの身近な制度です。しかし、事業者の方にとって重要なのは、このキャッシュバックで消費税の処理をどのようにするか、という点です。

キャッシュバックの提供元によって消費税の取り扱いが大きく異なります。


1 キャッシュバックの判断基準

キャッシュバックの定義

商品・サービスの購入後に、購入者へ代金の一部が返金される制度です。返金方法は現金振込、ポイント付与、次回割引クーポンなど様々です。

よくあるキャッシュバックの例

  • ■スマートフォンメーカーの新機種購入特典
  • ■住宅設備メーカーのリフォーム補助金
  • ■クレジットカードのポイント還元
  • ■ECサイトの購入特典

次に、重要な判断基準をお伝えします。

判断のポイント

キャッシュバックの消費税処理は、提供元との関係性によって決まります。

キャッシュバック提供元消費税の取り扱い理由
商品メーカー・販売店課税対象販売促進目的の「値引き」に相当
クレジットカード会社・決済業者不課税金融取引の一部(債務免除)

2 課税取引となるキャッシュバック

製品メーカー等からの販売促進目的キャッシュバック

メーカーが製品購入者(消費者)に対し直接支払うキャッシュバックは、「売上げに係る対価の返還等」に該当します(消費税法基本通達14-1-2)。簡単に言えば、「後から行われた値引き」という考え方です。

消費税法基本通達14-1-2

事業者が販売促進の目的で販売奨励金等の対象とされる課税資産の販売数量、販売高等に応じて取引先(課税資産の販売の直接の相手方としての卸売業者等のほかその販売先である小売業者等の取引関係者を含む。)に対して金銭により支払う販売奨励金等は、売上げに係る対価の返還等に該当する。

例えば、次のようなケースです。

  • ■家電メーカーが新製品を購入した消費者に対し、一定額を後日銀行振込で還元

  • ■ソフトウェア企業が、購入者全員を対象に申請ベースで返金を行う

仕入税額控除の修正が必要

事業者である購入者については、返金されたキャッシュバックは「仕入れに係る対価の返還等」(消費税法基本通達12-1-2)として、課税仕入れの修正対象になります。

消費税法基本通達12-1-2

事業者が販売促進の目的で販売奨励金等の対象とされる課税資産の販売数量、販売高等に応じて取引先(課税仕入れの相手方のほか、その課税資産の製造者、卸売業者等の取引関係者を含む。)から金銭により支払を受ける販売奨励金等は、仕入れに係る対価の返還等に該当する。

事業者が事業用資産を購入し、後日キャッシュバックを受けた場合には、次の処理が求められます。

  • ■購入時:課税仕入れとして消費税を仕入税額控除

  • ■キャッシュバック受領時:控除済みの消費税から相当額を減額(返還)

リンク 国税庁 消費者に対するキャッシュバックサービスの課税関係


3 不課税取引となるキャッシュバック

クレジットカード会社等からの返金

クレジットカード利用額に応じて、カード会社が一定額をキャッシュバックする場合、これは消費税の課税対象外です(不課税取引)。その理由は「債務免除」に該当すると解釈されるためです(消費税法基本通達12-1-7)。カード会社は商品の販売に直接関与しておらず、あくまで金融サービスの一環として還元を行っています。

消費税法基本通達12-1-7

事業者が課税仕入れの相手方に対する買掛金その他の債務の全部又は一部について債務免除を受けた場合における当該債務免除は、仕入れに係る対価の返還等に該当しないことに留意する。

  • ■購入者が商品を購入(販売店が売上計上)

  • ■クレジットカード会社が立替払いを行い、後日購入者にキャッシュバック

この場合、カード会社は販売には関与しておらず、購入と返金の間に「対価性」が存在しないと判断されます。

課税仕入れの修正は不要

このような不課税キャッシュバックについては、購入者(事業者)側での仕入税額控除の修正は不要です。キャッシュバックは単なる「債務の減免」として扱われ、消費税の課税対象から外れます。したがって、「雑収入」として所得を構成します。


4 実務での注意点とまとめ

キャッシュバックの消費税処理について、実務で特に注意したいのは次の点です。

  • ■メーカー等からのキャッシュバックは課税対象
    → 仕入税額控除の調整が必要(購入者が事業者である場合)

  • ■クレジットカード会社等からの返金は不課税
    → 債務免除扱い、仕入税額控除の調整不要

  • ■販促目的か、金融取引の一部かの違いが判断基準

キャッシュバックの形態は多様ですが、その税務処理は提供元との関係性により大きく異なります。

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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