こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。
2025年(令和7年)4月1日より、雇用保険料率が改定されることが厚生労働省より正式に発表されました。今回の改定では、労働者・事業主の双方で負担する雇用保険料率が引き下げられます。これは、企業の人件費管理に直接関わる重要な変更です。
この記事では、改定の背景、具体的な変更内容、そして給与・賞与への適用タイミング、企業として必要な実務対応について、簡潔かつ正確に整理します。
1 改定の背景:なぜ引き下げられるのか?
雇用保険料率は毎年、制度の財政状況や雇用環境を踏まえて見直されます。2025年度の引き下げは、コロナ禍に対応するために導入されていた一時的な特例措置が終了し、雇用保険財政の健全化が進んだことを背景としています。
企業にとっては、雇用維持に向けた支援策からの正常化の流れともいえ、負担軽減が実現するものです。
参考として雇用保険料率の推移(一般の事業)を挙げます。
- ■令和4年度:1.35%(年度途中で1.55%に引き上げ)
- ■令和5年度:1.55%
- ■令和6年度:1.55%(据え置き)
- ■令和7年度:1.45%(引き下げ)
2 改定後の雇用保険料率(令和7年度)
以下は2025年4月1日~2026年3月31日に適用される保険料率の一覧です。事業の種類ごとに違いがあるため、該当業種を正しく確認しましょう。
(出典:厚生労働省)
3 企業が取るべき対応策
雇用保険料率の引き下げは歓迎されるニュースですが、実務としては以下の対応が不可欠です。
① 給与計算システムの更新
使用中の給与計算ソフト、Excelテンプレート等で保険料率を手動入力している場合は、必ず更新しましょう。
② 人件費の再計算
会社負担分も引き下げとなるため、年間予算に余裕が生まれる場合があります。その分を賞与や福利厚生などに再配分することも検討に値します。
③ 従業員への周知
給与明細上の控除額が変動するため、労使間の不安防止のためにも、社内通知や掲示での周知が必要です。
4 据え置きとなる料率も確認
なお、以下の料率については令和7年度も変更はありません。
労災保険料率:業種により異なり据え置き
子ども・子育て拠出金率:0.36%(前年と同様)
5 まとめ 早めの準備と制度理解が鍵
雇用保険料率の改定は、年に一度の制度変更とはいえ、給与・賞与の実務に直結します。正確なタイミングで新料率を適用するには、締日・確定日を正しく把握することが最も重要です。
また、社内外の信頼を得るためにも、制度変更についての丁寧な説明と事前準備を欠かさないようにしましょう。