こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。
2025年(令和7年)1月1日から、税務署に提出した申告書や届出書等の「控え」に収受日付印(いわゆる受付印)を押さない運用が全国で始まりました。
これまで収受印は、提出した事実を証明する“証拠”として多くの場面で活用されてきました。特に紙で提出していた中小企業や個人事業主にとっては、大きな実務的変化です。
本記事では、この制度改正の概要と影響、そして今後の提出記録の取り扱いについて解説します。
リンク 国税庁PDF 申告書等の控えへの収受日付印の押なつの見直しに関するQ&A
1 どんな変更?収受日付印の押なつが廃止
対象となる書類
国税庁、国税局、税務署に提出するすべての文書が対象です。
申告書、申請書、請求書、届出書など、あらゆる税務文書に影響があります。
実施時期
2025年1月1日以降、全国の税務署で一斉に実施されています。
変更の内容
これまで税務署窓口や郵送で提出した際、控えに押されていた「収受日付印」や「税務署名」が、原則廃止されました。
2 なぜ廃止された?背景にある「デジタル化」
今回の変更は、e-Tax(電子申告)の普及と税務行政の効率化を目的としています。
国税庁は、紙での事務処理を減らし、行政負担・納税者の負担を軽減する方向で制度改革を進めています。今回の収受印廃止もその一環といえます。
3 収受印の代わりになるものは?
1. e-Taxの受信通知
e-Taxで提出した場合は、メッセージボックスに届く「受信通知(受付通知)」が提出事実の証明となります。
■受付番号
■提出者名
■提出日
これらが記載されており、従来の収受印の代替となるものです。
2. リーフレットの交付(紙提出者向け)
当面の間、紙で提出した人には、希望により税務署で「リーフレット」が配布されます。
■提出日
■提出先の税務署名(または業務センター名)
が記載されており、提出の証拠書類として利用できます。
※郵送提出時も、切手付き返信用封筒を同封すればリーフレットが返送されます。
4 紙提出の場合の提出証明手段
① 申告書等情報取得サービス(所得税・青色決算書等のみ)
■書面で提出しても、マイナンバーカードがあればe-TaxでPDFを取得可能
■直近3年分が対象
■所得税・青色申告決算書・収支内訳書が対象
② 税務署での閲覧(無料・写真撮影可)
■窓口申請に限る
■申請後その場で閲覧(郵送・オンライン不可)
■写真撮影は可能
③ 保有個人情報の開示請求
■内容確認および写し交付(取得まで約1か月)
■窓口申請(手数料300円)またはe-Tax申請(200円)
※法人の申告書には利用不可
④ 納税証明書の交付
■所得や納税額の証明書は取得可能(提出日確認には不向き)
■税務署窓口(400円/1枚)またはe-Tax(370円)
5 中小企業・個人事業主への影響と対応策
銀行融資、補助金申請、保育所・奨学金などの収入証明で不便に
提出証明ができないと、「本当に出したのか?」という問題になる恐れがあります。
必要な対応策
対応内容 | 説明 |
---|---|
e-Taxの活用 | 電子提出に移行し、確実な記録管理を行う |
リーフレットの保管 | 当面は紙提出でも提出証明が可能 |
提出記録の整備 | 控えに自分で提出日を記録/写しをスキャンして保管 |
郵送の工夫 | 簡易書留・特定記録など記録が残る方法で提出 |
6 e-Taxへの移行を今こそ検討すべき理由
■24時間提出可能
■交通費・郵送費ゼロ
■過去の申告情報の保存・管理が容易
■控えも即時にデータで取得可能
■令和7年以降は電子申告への移行が、ますます現実的な選択肢となります。
7 まとめ 紙提出は証拠保全の工夫が必要。電子化への転換期に
税務署の収受印廃止は、小さな変更のように見えて、実務や証明手段に大きな影響を及ぼす制度改正です。
■申告控えの保管と証明方法の見直し
■電子申告への移行準備
■社内の文書管理ルールの更新
これらを早めに進めることで、今後のトラブルや対応の負担を未然に防ぐことができます。