【消費税】購入者が受け取るキャッシュバックの税務処理とは?

2025年5月23日
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2025年5月23日 管理人

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

キャッシュバックという言葉は、家電製品の販促やクレジットカードの特典など、日常的にもよく見かける仕組みです。購入後に一定額が返金されるこの制度ですが、消費税の視点から見ると「課税」「不課税」の判断が分かれるため、注意が必要です。

この記事では、購入者がキャッシュバックを受け取った場合における、消費税の取り扱いを詳しく整理します。


第1章|キャッシュバックとは何か?

キャッシュバックとは、商品やサービスの購入後に購入者へ代金の一部が返金される制度です。返金は現金振込やポイントで行われることが多く、主に販売促進の一環として実施されます。

キャッシュバックは一見すると単なる「値引き」にも思えますが、誰から・どのような経路で支払われたかによって、消費税の取り扱いが異なります。


第2章|課税取引となるキャッシュバック

製品メーカー等からの販売促進目的キャッシュバック

メーカーが製品購入者(消費者)に対し直接支払うキャッシュバックは、「売上げに係る対価の返還等」に該当します(消費税法基本通達14-1-2)。

例えば、次のようなケースです。

  • 家電メーカーが新製品を購入した消費者に対し、一定額を後日銀行振込で還元

  • ソフトウェア企業が、購入者全員を対象に申請ベースで返金を行う

このようなケースでは、購入者もメーカーの取引先に含まれると解釈され、返金されたキャッシュバックは「仕入れに係る対価の返還等」(消費税法基本通達12-1-2)として、課税仕入れの修正対象になります。

仕入税額控除の修正が必要

事業者が事業用資産を購入し、後日キャッシュバックを受けた場合には、次の処理が求められます。

  • 購入時:課税仕入れとして消費税を仕入税額控除

  • キャッシュバック受領時:控除済みの消費税から相当額を減額(返還)

仕入額ベースで消費税が還付された形になるため、後の課税処理で調整が必要となります。

リンク 国税庁 消費者に対するキャッシュバックサービスの課税関係


第3章|不課税取引となるキャッシュバック

クレジットカード会社等からの返金

クレジットカード利用額に応じて、カード会社が一定額をキャッシュバックする場合、これは消費税の課税対象外です(不課税取引)。その理由は「債務免除」に該当すると解釈されるためです(消費税法基本通達12-1-7)。

  • 購入者が商品を購入(販売店が売上計上)

  • クレジットカード会社が立替払いを行い、後日購入者にキャッシュバック

この場合、カード会社は販売には関与しておらず、購入と返金の間に「対価性」が存在しないと判断されます。

課税仕入れの修正は不要

このような不課税キャッシュバックについては、購入者(事業者)側での仕入税額控除の修正は不要です。キャッシュバックは単なる「債務の減免」として扱われ、消費税の課税対象から外れます。したがって、「雑収入」として所得を構成します。


第4章|実務での注意点とまとめ

キャッシュバックの消費税処理について、実務で特に注意したいのは次の点です。

  • メーカー等からのキャッシュバックは課税対象
    → 仕入税額控除の調整が必要(購入者が事業者である場合)

  • クレジットカード会社等からの返金は不課税
    → 債務免除扱い、仕入税額控除の調整不要

  • 販促目的か、金融取引の一部かの違いが判断基準

キャッシュバックの形態は多様ですが、その税務処理は提供元との関係性により大きく異なります。

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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