法人税

法人税に関するコラム(blog)です。

15 5月 2025

中小会計要領のポイント解説:具体的な会計処理の特徴

中小会計要領のポイント解説:具体的な会計処理の特徴 📚 目次 はじめに|中小企業向けの「各論」とは? 第1章|収益と費用の基本的な処理 第2章|資産と負債の基本的な処理 第3章|具体的な処理例とそのポイント まとめ|会計処理における中小企業への実務的配慮 はじめに|中小企業向けの「各論」とは? 「中小企業の会計に関する基本要領」(本要領)は、中小企業の実態に配慮した簡便な会計処理方法を「各論」として具体的に示しています。 今回は、その中でも中小企業にとって特に知っておくと役立つ会計処理のポイントをいくつかご紹介します。 第1章|収益と費用の基本的な処理 まず、収益の計上については、原則として製品・商品の販売やサービスの提供を行い、現金等を取得した時(または売掛金の発生時)に計上します。これは一般に「実現主義」と呼ばれます。実務上は、出荷時点で収益を計上する方法が多く見られますが、取引の実態に応じて決定することになります。 次に、費用の計上は、原則として費用の原因となる取引が発生した時点やサービスの提供を受けた時点で計上するというもので、これは「発生主義」といいます。 また、収益と関連費用を対応させて計上する「期間損益計算」の考え方も重要です。たとえば、販売した製品の売上原価を売上高に対応させて費用計上するような形がこれにあたります。 さらに、損益計算書では収益と費用は総額で表示する「総額表示」が原則です。たとえば、賃借した建物を転貸している場合には、受取家賃と支払家賃の両方を計上する必要があります。 第2章|資産と負債の基本的な処理 資産の計上については、原則として取得価額で計上する(取得原価主義)とされています。取得価額とは、資産の取得または製造に要した費用の合計であり、購入金額に付随費用を加えた金額です。 一方、負債の計上は、債務額で行うのが原則です。これは、将来支払うべき金額として認識する必要があります。 第3章|具体的な処理例とそのポイント…

15 5月 2025

中小企業のための会計ルール:中小会計要領の基本的な考え方

中小企業のための会計ルール:中小会計要領の基本的な考え方 📚 目次 はじめに|本要領の目的と学び方 第1章|適切な記帳の重要性 第2章|企業会計原則との関係と留意点 第3章|継続性の原則:処理方法は一貫して 第4章|本要領で扱われていない処理への対応 まとめ|本要領を活用するための基本姿勢 はじめに|本要領の目的と学び方 「中小企業の会計に関する基本要領」(本要領)は、中小企業が計算書類等を作成する際に参照するための会計処理や注記等を示すものです。本要領を利用するにあたっては、単に個別の処理方法を知るだけでなく、その根底にある基本的な考え方を理解することが重要です。 今回は、本要領の「総論」で示されている、会計の基本的な考え方や利用上の留意事項をご紹介します。 第1章|適切な記帳の重要性 本要領を利用するにあたっては、適切な記帳が前提とされています。経営者が自社の経営状況を適切に把握するためにも、記帳は非常に重要です。 記帳はすべての取引について、次の原則に従って行う必要があります。 正規の簿記の原則に則ること。 適時に、整然かつ明瞭に、正確かつ網羅的に会計帳簿を作成すること。 第2章|企業会計原則との関係と留意点 本要領は、企業会計原則で示されている一般的な会計の考え方にも留意する必要があるとして、次の6つの原則を挙げています。 真実性の原則:企業会計は、企業の財政状態および経営成績について真実な報告を提供するものでなければなりません。…

15 5月 2025

中小企業の会計、もっとシンプルに!中小会計要領とは?

中小企業の会計、もっとシンプルに!中小会計要領とは? はじめに|中小企業のための会計ルール 中小企業経営者の皆さん、日々の業務で会計処理に難しさを感じていませんか?日本の会計基準は国際的な流れを受けて複雑化する傾向がありますが、中小企業にはその実態に即した会計ルールとして「中小企業の会計に関する基本要領」(以下「本要領」)があります。今回は、この本要領がなぜ作られ、どのような会社を対象としているのか、その概要をご紹介します。 第1章|本要領が作られた背景と目的 本要領が策定された背景には、主に中小企業の次のような実態への配慮があります。 まず、資金調達の方法についてです。中小企業は新株発行や社債発行といった資本市場からの調達はほとんど行っておらず、地域金融機関やメガバンクからの借入れが中心となっています。 また、利害関係者が限定されていることも特徴です。所有と経営が一致しているケースが多く、株式に譲渡制限が付されているため、利害関係者は主に取引金融機関、主要取引先、既存株主などに限られます。 さらに、多くの企業では税務申告が計算書類等を作成する主な目的となっており、法人税法で定める処理を意識した会計が行われています。 そして、経理体制も限られており、経理担当者の人数が少ない企業が多いという点も挙げられます。 このような実態を踏まえ、本要領は次のような考え方に立って作成されました。 まず、経営者が自社の経営状況を把握しやすいように、理解しやすく、経営に役立つ会計であることが求められています。 また、金融機関や取引先、株主などの利害関係者への情報提供にも資する内容となっています。 さらに、実務で定着している会計慣行を十分に考慮し、会計と税制の調和を図ったうえで、会社計算規則に準拠する形式とされています。 そして、計算書類等の作成にかかる負担を最小限にとどめ、中小企業に過度な負担をかけないよう配慮された会計です。 一言でいえば、中小企業の実態に配慮し、より簡便な会計処理を行うことが適当とされる中小企業を対象に、その実態に即した会計処理のあり方を取りまとめたものです。 第2章|本要領の利用が想定される会社 本要領の利用が想定されるのは、原則として次の株式会社を除く会社です。 ひとつは、金融商品取引法の規制の適用対象となっている会社です。もうひとつは、会社法上の会計監査人設置会社です。 これらに該当しない株式会社に加え、特例有限会社、合名会社、合資会社、合同会社についても本要領を利用することができます。 なお、本要領は法令によってその利用が強制されるものではないため、「利用が想定される会社」という表現が用いられています。…

15 5月 2025

中小企業必見!賃上げ促進税制が大きく変わっています

中小企業必見!賃上げ促進税制が大きく変わっています こんにちは。税理士の飯野明宏です。 今回は、令和6年度(2024年度)税制改正で大きく見直された「賃上げ促進税制」について解説します。この制度は、従業員への給与引き上げや人材投資を行う企業を税制面で支援するもので、特に中小企業向けに注目すべき変更点がいくつかあります。 目次 第1章|賃上げ促進税制とは? 第2章|中小企業向けの改正ポイント 第3章|制度適用の注意点と具体的数値 第4章|中小企業者等の定義 第5章|適用開始時期と実務への影響 第6章|まとめ|早めの準備で活用を 第1章|賃上げ促進税制とは? 賃上げ促進税制とは、企業が前年度より従業員の給与を増やした場合に、その増加分の一定割合を法人税や所得税から控除できる制度です。 これまで「中小企業向け」と「大企業向け」の2分類でしたが、今回の改正により「中堅企業向け」が新たに加わり、3パターンに細分化されました。 第2章|中小企業向けの改正ポイント 1. 税額控除の繰越が可能に! これまで赤字などで税額控除を活用できない場合、その年で打ち切りとなっていましたが、今後は使いきれなかった控除額を最大5年間繰越できるようになります。 適用要件 繰越対象となる年の申告時に「特別控除に関する明細書」の提出が必要 繰越適用年でも給与支給額が前年度比で1円以上増加していること…

11 5月 2025

法人税法における固定資産と減価償却の基本をやさしく解説

法人税法における固定資産と減価償却の基本をやさしく解説 こんにちは、税理士の飯野明宏です。今回は、法人税を理解するうえで欠かせない「固定資産」と「減価償却」について、基礎から丁寧に解説していきます。企業活動において、資産の取得・管理・償却は、会計と税務の両面で非常に重要な論点です。この記事では、法人税法上の位置づけや、実務に役立つポイントまで網羅的にご紹介します。 目次 1. 固定資産の定義とその範囲 2. 減価償却資産とは? 3. 取得価額の考え方 4. 償却方法と法人税法上の取扱い 5. 少額資産・使用可能期間1年未満の資産の取り扱い 6. 税務調整における減価償却 第1章|固定資産の定義とその範囲 法人税法において「固定資産」とは、棚卸資産、有価証券、暗号資産(資金決済法第2条第5項に規定)、繰延資産を除いた資産を指します。特定の目的のために継続的に事業に利用される資産が該当します。 例: 事業で使用する建物、車両、機械設備など 同じ種類の物でも、保有目的によって「棚卸資産」となるか「固定資産」となるかが異なります。…

11 5月 2025

棚卸資産とは?取得価額・評価方法の基本

棚卸資産とは?取得価額・評価方法の基本 目次 第1章|棚卸資産の定義と範囲 第2章|棚卸資産の取得価額とは?(法人税施行令32条) 第3章|期末商品棚卸高の計算方法 第4章|棚卸資産の評価方法の種類 まとめ|棚卸資産の管理と税務処理は企業の信頼性に直結する こんにちは。税理士の飯野明宏です。 企業活動において、商品や原材料など「棚卸資産」を適正に管理・評価することは、利益の確定や税額の算定に大きく関わります。特に、法人税の申告においては、棚卸資産の評価方法や取得価額の計算が厳格に定められており、誤ると税務調査でも指摘を受けやすいポイントです。 各事業年度における棚卸資産の販売による売上高に対応する原価の計算は、次の算式により計算されます。 算式 (前期棚卸高+仕入高)− 期末棚卸高 = 売上原価 このうち、前期棚卸高と仕入高については、帳簿上比較的容易に把握できるので、結局、期末棚卸高を実地棚卸にて確定させることにより、自動的に売上原価の額を確定させることとなります。直接税金の計算に、関係するのは売上原価だけですが、結局は、期末棚卸資産の金額が税金の計算に関係してくるものといえます。 売上原価 = 期首棚卸高 +…