こんにちは。富士市・富士宮の税理士、飯野明宏です。
会社を作ろうと思った時、「株式会社と合同会社、どっちがいいんだろう?」と悩んでいませんか?
最近よく耳にする「合同会社」ですが、実は意外と知られていないことが多いんです。今回は、合同会社の本当のところを、メリットもデメリットも解説します。
1. そもそも合同会社って何?
合同会社は、2006年に日本で始まった比較的新しい会社の形です。「日本版LLC」とも呼ばれていて、もともとはアメリカやヨーロッパで人気だった仕組みを日本に取り入れたものです。
一番の特徴は、お金を出す人と経営する人が同じということ。株式会社だと株主と経営者が別々のことが多いですが、合同会社では出資者自身が経営を行います。
Amazon、Apple Japanなど、有名な会社も合同会社です。
リンク 独立行政法人経済産業研究所 コラム ようやく浸透した日本版LLC
2. 合同会社の魅力的なメリット
設立費用がとにかく安い
株式会社を作るには最低20万円ほどかかりますが、合同会社なら最低6万円で作れます。14万円も安くなることになります。
電子定款を使えば、さらに4万円の印紙代も不要になります。
維持費用も抑えられる
株式会社では原則、毎年決算公告費用がかかりますが、合同会社には不要です。また、役員の任期もないので、定期的な役員変更手続きの費用もかかりません。
経営の自由度が高い
これが合同会社の大きな魅力の一つです。株式会社では出資額に応じて利益配分が決まりますが、合同会社では定款で自由に決められます。
例えば、「出資は少ないけど、すごく頑張ってくれているAさんには多めに利益を分けよう」なんてことも可能です。株主総会も不要なので、スピーディーに意思決定できます。
税金面では株式会社と同じ
法人としての節税メリットは、株式会社と全く同じです。役員報酬での所得圧縮や消費税の免除期間など、しっかり受けられます。
後から株式会社に変更もできる
事業が大きくなって「やっぱり株式会社にしたい」となっても大丈夫。組織変更の手続きで移行できます。
3. 知っておきたいデメリット
まだまだ知名度が低い
正直なところ、これが一番のデメリットかもしれません。「合同会社って何?」「株式会社の方が安心」と思われることが多いです。
特に法人向けのビジネスでは、「合同会社とは取引しない」という会社もあります。人材採用でも「株式会社の方が安定してそう」と判断される可能性があります。
社員同士で意見が割れると大変
合同会社では、原則として出資者(社員)全員に1票ずつ議決権があります。そのため、意見が分かれると決定できなくなってしまうリスクがあります。
特に社員が偶数の場合、意見が真っ二つに分かれると膠着状態になることも。ただし、定款で議決権の割合を決めておけば回避できます。
事業承継が複雑になることも
合同会社の持分を他の人に譲る時は、原則として他の社員全員の同意が必要です。1人でも反対されると譲渡できません。
また、社員が亡くなった場合の相続も、定款で定めておかないと自動的には引き継がれません。
肩書きが「代表社員」になる
小さなことかもしれませんが、社長の肩書きが「代表取締役」ではな「代表社員」になります。名刺交換の時などに「?」と思われることもあるかもしれません。
思ったほど節税効果がない場合も
個人事業主から法人成りする場合、節税を期待する方も多いですが、法人住民税(年間最低7万円)や税理士費用なども考慮すると、思ったほどメリットがない場合もあります。
4. 後悔しないためのチェックポイント
安さだけで決めない
確かに設立費用は魅力ですが、それだけで決めるのは危険です。あなたのビジネスの性質や将来の目標をしっかり考えて選びましょう。
社員間のルールを事前に決める
意見対立を防ぐため、社員の人数を奇数にしたり、定款で議決権の割合を決めたりしておきましょう。利益配分についても、みんなが納得できるルールを作っておくことが大切です。
将来のビジョンを明確に
「小さく始めて安定経営したい」のか、「将来は大きく展開したい」のかで、最適な会社形態は変わります。後者なら最初から株式会社を選んだ方が良いかもしれません。
専門家に相談する
手続きは比較的簡単ですが、定款作成や税務面では専門知識が必要です。税理士や司法書士などの専門家に相談することで、後々の後悔を防げます。
まとめ:合同会社はこんな人におすすめ
合同会社は、設立費用を抑えて柔軟な経営をしたい方には本当におすすめです。特に以下のような場合には最適でしょう:
- ■個人事業主から法人成りを考えている
- ■家族経営や少人数での経営
- ■株式上場は考えていない中小規模の事業
- ■初期費用を抑えてスタートしたい
ただし、法人向けビジネスメインの場合や、積極的な人材採用、将来の事業承継を重視する場合は、株式会社の方が向いているかもしれません。
大切なのは、目先の費用だけでなく、あなたの事業の性質や将来の目標に合った選択をすることです。迷った時は、ぜひ私たちにご相談ください。