第1章|そもそも「弔慰金」とは?
こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。
弔慰金は、企業等が従業員や役員の死亡時に遺族に支給する金銭です。香典とは異なり、福利厚生の一環として支給されるもので、支給額は会社規程や勤続年数などによって異なります。
第2章|弔慰金は相続税の対象?原則は「非課税」
弔慰金は、故人の遺産ではなく「遺族固有の権利」として受け取るものであるため、原則として相続税は課税されません。相続財産にも遺産分割協議の対象にもなりません。
第3章|非課税枠には上限あり!限度額を超えると課税の可能性
非課税とされる弔慰金にも上限があります。これを超えると、超過部分が「死亡退職金」とみなされ、相続税の課税対象になります。
- ■業務外の死亡:普通給与の6か月分まで非課税
- ■業務上の死亡:普通給与の3年分まで非課税
弔慰金の非課税枠計算例
【業務外死亡のケース】
- ■月給50万円の従業員が業務外で死亡
- ■弔慰金500万円を支給
計算
- ■非課税枠:50万円 × 6ヶ月 = 300万円
- ■超過部分:500万円 – 300万円 = 200万円(死亡退職金扱い)
【業務上死亡のケース】
- ■同じ従業員が業務上で死亡
- ■弔慰金2,000万円を支給
計算
- ■非課税枠:50万円 × 36ヶ月 = 1,800万円
- ■超過部分:2,000万円 – 1,800万円 = 200万円(死亡退職金扱い)
業務上死亡・業務外死亡の判断基準
業務上死亡に該当する例
- ■業務中の事故による死亡
- ■通勤中の事故による死亡
- ■業務が原因の過労死・職業病による死亡
- ■出張先での事故による死亡
業務外死亡に該当する例
- ■私生活中の病気や事故による死亡
- ■自宅での自然死
- ■業務と関係のない場所での事故死
※判断が困難な場合は、労働基準監督署の認定や会社の判断を参考にします
第4章|非課税枠を超えた場合の「死亡退職金」としての取り扱い
超過部分は「みなし相続財産」として相続税が課税されます。ただし、別途以下の非課税枠も適用可能です。
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
※受取人が法定相続人である必要があります。
弔慰金と死亡退職金が両方支給される場合の計算手順
STEP1:弔慰金の課税対象額を計算
支給された弔慰金 – 弔慰金の非課税枠 = 弔慰金の課税対象額
STEP2:死亡退職金の課税対象額を計算
(支給された死亡退職金 + 弔慰金の課税対象額) – 死亡退職金の非課税枠
【計算例】
- ■弔慰金:400万円(業務外死亡、月給50万円)
- ■死亡退職金:1,500万円
- ■法定相続人:3人
弔慰金の課税対象額:400万円 – 300万円 = 100万円
死亡退職金の課税対象額:(1,500万円 + 100万円) – 1,500万円 = 100万円
※弔慰金と死亡退職金を別々に計算すると、誤って課税対象額が増える可能性があります
第5章|申告方法と手続き
課税対象となる場合は、相続税の「第10表(退職手当金等の明細書)」に記載して申告します。期限は死亡の翌日から10ヶ月以内です。
第6章|まとめ:弔慰金は非課税が原則、でも高額なら要注意
弔慰金は、原則非課税ですが、高額になると一部が相続税の対象になることがあります。税額の正確な計算や申告の判断に不安がある場合は、税理士など専門家に相談するのが安心です。