胎児にも相続権がある?
こんにちは。富士市・富士宮市の税理士飯野明宏です。
「まだ生まれていない子ども=胎児には相続権があるのか?」
胎児にも相続人としての権利が認められるケースがあります。本記事では、胎児の相続権について、実務上の注意点や税務処理も交えながらわかりやすく解説します。
📚 目次
第1章|民法第886条が定める胎児の相続権とは?
民法には以下のように定められています。
第一項:胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
第二項:前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
胎児は生まれた場合に限り、相続開始時に「既に生まれていた」とみなされて、相続人として取り扱われます。出生が条件となるため、「停止条件付き相続権」とも呼ばれます。
第2章|胎児がいる場合の遺産分割と実務上の注意点
胎児が相続人になる場合、遺産分割や名義変更の実務にも配慮が必要です。
✅ 出生前に遺産分割はできない
胎児は出生をもって相続権を取得します。出生前の遺産分割協議は無効となるため、協議は原則として出生後に行うのが実務の通例です。
✅ 特別代理人の選任が必要になることも
母親も相続人であり、かつ胎児(出生後の子)と利益が相反する場合には、家庭裁判所で「特別代理人」の選任が必要になります。
第3章|胎児がいる場合の相続税申告の扱い
胎児がいると、法定相続人の数に影響が出るため、相続税の基礎控除額も変わります。
● 申告期限内に出生した場合
胎児が申告期限内(被相続人の死亡から10か月以内)に生まれた場合は、正式に相続人としてカウントし、申告に含めます。
● 出生が申告期限後になった場合
胎児の出生によって基礎控除内に収まる場合は、税務署に申請すれば「申告期限延長(出生から2か月以内まで)」が可能です。
一方、胎児がいても課税が発生する場合は、胎児を含めずに申告し、出生後に「更正の請求」によって税額を修正・還付申請します。
第4章|胎児が代襲相続人になるケースもある
胎児は、通常の法定相続人だけでなく、「代襲相続人」になることもあります。たとえば、胎児の父がすでに死亡している場合に、祖父が亡くなれば、胎児は父に代わって祖父の相続人になる可能性があります。
第5章|まとめ:胎児がいる相続は、慎重な対応がカギ
胎児に相続権があるとはいえ、出生しなければ権利が確定しないため、相続手続きや税務申告には慎重な対応が求められます。
出生前の協議は避ける
出生後に特別代理人の選任が必要か判断する
申告期限や延長の可否を確認する
更正の請求による還付申請を視野に入れる