胎児にも相続権がある?

2025年5月20日 管理人

胎児にも相続権がある?

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士飯野明宏です。

「まだ生まれていない子ども=胎児には相続権があるのか?」

胎児にも相続人としての権利が認められるケースがあります。本記事では、胎児の相続権について、実務上の注意点や税務処理も交えながらわかりやすく解説します。妊娠した女性


 

第1章|民法第886条が定める胎児の相続権とは?

民法には以下のように定められています。

第一項:胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
第二項:前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

胎児は生まれた場合に限り、相続開始時に「既に生まれていた」とみなされて、相続人として取り扱われます。出生が条件となるため、「停止条件付き相続権」とも呼ばれます。


第2章|胎児がいる場合の遺産分割と実務上の注意点

胎児が相続人になる場合、遺産分割や名義変更の実務にも配慮が必要です。

✅ 出生前に遺産分割はできない

胎児は出生をもって相続権を取得します。出生前の遺産分割協議は無効となるため、協議は原則として出生後に行うのが実務の通例です。

✅ 特別代理人の選任が必要になることも

母親も相続人であり、かつ胎児(出生後の子)と利益が相反する場合には、家庭裁判所で「特別代理人」の選任が必要になります。


第3章|胎児がいる場合の相続税申告の扱い

胎児がいると、法定相続人の数に影響が出るため、相続税の基礎控除額も変わります。

● 申告期限内に出生した場合

胎児が申告期限内(被相続人の死亡から10か月以内)に生まれた場合は、正式に相続人としてカウントし、申告に含めます。

● 出生が申告期限後になった場合

胎児の出生によって基礎控除内に収まる場合は、税務署に申請すれば「申告期限延長(出生から2か月以内まで)」が可能です。

一方、胎児がいても課税が発生する場合は、胎児を含めずに申告し、出生後に「更正の請求」によって税額を修正・還付申請します。


第4章|胎児が代襲相続人になるケースもある

胎児は、通常の法定相続人だけでなく、「代襲相続人」になることもあります。たとえば、胎児の父がすでに死亡している場合に、祖父が亡くなれば、胎児は父に代わって祖父の相続人になる可能性があります。


第5章|まとめ:胎児がいる相続は、慎重な対応がカギ

胎児に相続権があるとはいえ、出生しなければ権利が確定しないため、相続手続きや税務申告には慎重な対応が求められます。

  • 出生前の協議は避ける

  • 出生後に特別代理人の選任が必要か判断する

  • 申告期限や延長の可否を確認する

  • 更正の請求による還付申請を視野に入れる

相続税の専門院

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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