こんにちは。富士市・富士宮市の相続・税務専門、飯野明宏税理士事務所です。
近年、NISA(少額投資非課税制度)を活用して資産運用を行う方が増えています。しかし、NISA口座を持つ方に万一のことがあった際、その口座や資産が相続でどう扱われるのか、ご存じでしょうか?
本記事では、NISA口座に関する相続税のルールや注意点、新NISA制度を使った節税対策まで、専門家の視点でわかりやすく解説いたします。
第1章|NISA口座の相続でよくある質問
NISA口座の資産は相続税がかからない?
相続した株を売っても非課税?
新NISAで相続税対策はできる?
実は、NISAは「所得税・住民税が非課税」な制度であり、「相続税が非課税」になるわけではありません。
2024年新NISAと旧NISAの相続上の違い
2024年新NISA制度のポイント
- つみたて投資枠:年間120万円(非課税保有期間:無期限)
- 成長投資枠:年間240万円(非課税保有期間:無期限)
- 生涯投資枠:1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで)
旧NISAとの相続上の取扱いの違い
- 旧NISA:非課税期間終了前に相続が発生した場合の特別な取扱いあり
- 新NISA:非課税期間が無期限のため、相続時の評価がより重要
第2章|NISA口座は相続税の課税対象になる
NISAで保有していた株式や投資信託であっても、相続税の課税対象になります。非課税となるのは配当金や値上がり益に対する「所得課税」のみであり、「財産そのもの」に対する相続税は免れません。
第3章|NISA口座の相続税評価方法とは?
NISA口座内の有価証券も、評価方法は他の口座と同じです。
種類 | 評価方法 |
---|---|
上場株式 | 相続開始日の終値、またはその月・前月・前々月の終値平均のうち 最も低い価格 × 株数 |
投資信託 | 基準価格 × 口数 − 源泉徴収相当額 − 信託財産留保額 など(※控除できる場合あり) |
具体的な計算例
ケース1:上場株式(A社株式)
- 保有株数:1,000株
- 相続開始日の終値:2,500円
- 当月平均:2,400円、前月平均:2,600円、前々月平均:2,300円
- 評価額:2,300円(最低価格)× 1,000株 = 230万円
ケース2:投資信託(全世界株式インデックス)
- 保有口数:100,000口
- 相続開始日の基準価格:15,000円
- 評価額:15,000円 × 100,000口 ÷ 10,000 = 150万円
注意: 評価額が購入時より大幅に下がっていても、相続税評価は相続開始日の価格で行います。
第4章|NISA口座の証券は相続人のNISA口座には移せない
NISA口座は一身専属のため、相続によってそのまま引き継ぐことはできません。証券は特定口座または一般口座へ移管されます。
相続発生後の具体的な手続きの流れ
Step1:証券会社への連絡(死亡から速やかに)
- 被相続人の死亡を証券会社に連絡
- 必要書類:死亡診断書、戸籍謄本等
Step2:NISA口座の廃止手続き(死亡日から4ヶ月以内)
- 「非課税口座廃止届出書」の提出
- 保有証券の特定口座・一般口座への移管
Step3:相続手続き
- 相続人への名義変更手続き
- 遺産分割協議書に基づく証券の分割
重要な期限
- NISA口座廃止:死亡日から4ヶ月以内
- 相続税申告:死亡日から10ヶ月以内
複数相続人がいる場合の注意点
- 証券を現金化してから分割するか、現物分割するかで税務上の取扱いが変わります
- 株式数が相続人数で割り切れない場合の端数処理方法の検討が必要です
第5章|NISAの証券、取得費はどうなる?
ポイントは「みなし売却」です。
被相続人の死亡時にNISA口座の証券は一度売却したとみなされます(利益は非課税、損失は切り捨て)。
相続人は「死亡日の終値」でその証券を取得したと扱われます。
まとめ|NISA相続の知識は節税への第一歩
NISA口座の資産は相続税の対象となる
相続人のNISA口座に引き継ぐことは不可
NISA口座を活用して資産形成をしている方、あるいはそのご家族の皆様にとって、相続発生時の正しい知識は非常に重要です。専門的な判断が必要となる場面も多いため、不安な方は相続税に強い税理士にぜひご相談ください。