相続税の税率と計算方法を徹底解説|課税価格ごとの税率・控除・計算例まで
「相続税はどのくらいかかるのか?」 この質問に答えるためには、「相続税の税率」を正しく理解する必要があります。
相続税は一律の税率ではなく、課税価格に応じて税率が上がっていく「超過累進課税制度」を採用しています。また、税率だけでなく「控除」や「特例」なども複雑に絡んでおり、全体像を把握するにはある程度の知識が求められます。
本記事では、相続税の税率とその計算方法を、税理士の視点からわかりやすく解説します。これを読めば、自分や家族に相続税がどれだけかかるのか、具体的にイメージできるようになるはずです。
目次
1.相続税の税率は「超過累進課税」
相続税は、受け取る財産の総額によって税率が段階的に高くなる「超過累進課税方式」が採用されています。
以下は、国税庁が公表している「相続税の速算表」です。
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課税価格(超) | 課税価格(以下) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|---|
0円 | 1,000万円 | 10% | 0円 |
1,000万円 | 3,000万円 | 15% | 50万円 |
3,000万円 | 5,000万円 | 20% | 200万円 |
5,000万円 | 1億円 | 30% | 700万円 |
1億円 | 2億円 | 40% | 1,700万円 |
2億円 | 3億円 | 45% | 2,700万円 |
3億円 | 6億円 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | ― | 55% | 7,200万円 |
ポイントは、「財産全体に対して一律の税率がかかる」のではなく、課税価格の区分ごとに異なる税率が段階的に適用されるということです。
2.相続税の計算ステップ
実際の相続税額を求めるには、以下のような手順を踏みます。
ステップ① 相続財産の総額を算出
土地・建物・預貯金・有価証券・生命保険金などを含めたすべての財産の評価額を合算します。生命保険金や退職金の一部も「みなし相続財産」として課税対象となります。
ステップ② 債務・葬式費用を差し引く
住宅ローンや借入金、未払い税金などの債務、および葬儀費用を差し引きます。
ステップ③ 基礎控除を適用
課税遺産総額を算出するため、以下の基礎控除を引きます。
基礎控除額=3,000万円 +(法定相続人の数 × 600万円)
ステップ④ 法定相続分で按分して仮税額を計算
課税遺産総額を法定相続分どおりに分けたと仮定して、それぞれの取得分に税率を適用します。仮に、ここでは、「仮税額」と呼びます。
ステップ⑤ 実際の取得分に応じて本税額を算出
相続人ごとの実際の取得割合に応じて按分し、各自の納税額を計算します。
3.具体的な計算例
相続税の計算は文章で読むより、実際の数字で見たほうがイメージしやすくなります。
事例
- 被相続人:父
- 相続人:妻と子1人
- 相続財産:1億円(預金7,000万円、不動産3,000万円)
- 債務・葬式費用:なし(簡易化)
- 法定相続人:2人
Step1:基礎控除の計算
3,000万円+600万円×2人=4,200万円
Step2:課税遺産総額
1億円-4,200万円=5,800万円
Step3:法定相続分で按分(配偶者1/2、子1/2)
- 配偶者:2,900万円
- 子:2,900万円
Step4:各自の仮税額を計算(税率15%、控除50万円)
2,900万円 × 15% − 50万円 = 385万円
各自の仮税額:385万円
合計税額:770万円
この770万円を、実際の取得分に応じて配分して納税します。
4.税率に関わる各種控除と特例
税率の影響を大きく緩和する制度として、以下のような控除・特例があります。
(1)配偶者の税額軽減
次のいずれか多い額まで、配偶者には相続税がかからないという特例です。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分
(2)未成年者控除
未成年の相続人には、20歳までの年数×10万円が控除されます。
(3)障害者控除
障害者の相続人には、一定の年数×10万円(特別障害者は20万円)の控除があります。
(4)小規模宅地等の特例
一定の要件を満たす居住用または事業用の土地については、最大80%の評価減を受けることができます。
(5)相次相続控除
10年以内に相次いで相続が発生した場合、一定の要件のもとで税額控除が適用されます。
5.税率を意識した考え方
課税価格が高くなると税率が上がるため、財産を分割する・分散するという視点が重要です。
よく使われる対策例
- 生前贈与:110万円までの非課税枠を活用
- 養子縁組:法定相続人を増やすことで基礎控除が拡大
- 不動産の共有相続:個別取得額を減らす
- 遺言活用:相続分配を明確にし、争続を防止
- 財産の評価見直し:評価方法の選択によって税負担が変わる
6.相続税の税率に関するよくある質問(FAQ)
Q. 税率は毎年変わりますか? A. 大きな税制改正がない限り、税率は急に変更されることはありません。ただし政治状況によっては変更される可能性もあります。
Q. 贈与税の税率と相続税の税率は違う? A. はい、異なります。贈与税はもらった人単位で、相続税は相続全体に対して課税されます。税率構造も異なります。また、贈与税の税率の方が相続税よりも圧倒的に高くなっています。
Q. 相続税を払えないとどうなる? A. 延納や物納といった制度があります。
まとめ|相続税の税率は正しく理解すれば怖くない
相続税は、単に税率表だけを見て判断するのではなく、全体の仕組みを理解したうえで適切に計算することが重要です。
- 税率は累進式で、段階的に上昇
- 基礎控除や特例によって大幅に負担が軽減される
- 配偶者・未成年者・障害者などの保護制度も充実
「うちは相続税がかかるのか?」等、相続について疑問をお持ちの方は、ぜひ、私たちにご相談ください。