相続税の税率と計算方法を徹底解説|課税価格ごとの税率・控除・計算例まで

2025年5月8日 管理人

相続税の税率と計算方法を徹底解説|課税価格ごとの税率・控除・計算例まで

「相続税はどのくらいかかるのか?」 この質問に答えるためには、「相続税の税率」を正しく理解する必要があります。

相続税は一律の税率ではなく、課税価格に応じて税率が上がっていく「超過累進課税制度」を採用しています。また、税率だけでなく「控除」や「特例」なども複雑に絡んでおり、全体像を把握するにはある程度の知識が求められます。

本記事では、相続税の税率とその計算方法を、税理士の視点からわかりやすく解説します。これを読めば、自分や家族に相続税がどれだけかかるのか、具体的にイメージできるようになるはずです。

1.相続税の税率は「超過累進課税」

相続税は、受け取る財産の総額によって税率が段階的に高くなる「超過累進課税方式」が採用されています。

以下は、国税庁が公表している「相続税の速算表」です。
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相続税の速算表(課税価格に応じた税率と控除額)
課税価格(超)課税価格(以下)税率控除額
0円1,000万円10%0円
1,000万円3,000万円15%50万円
3,000万円5,000万円20%200万円
5,000万円1億円30%700万円
1億円2億円40%1,700万円
2億円3億円45%2,700万円
3億円6億円50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

ポイントは、「財産全体に対して一律の税率がかかる」のではなく、課税価格の区分ごとに異なる税率が段階的に適用されるということです。

2.相続税の計算ステップ

実際の相続税額を求めるには、以下のような手順を踏みます。

ステップ① 相続財産の総額を算出

土地・建物・預貯金・有価証券・生命保険金などを含めたすべての財産の評価額を合算します。生命保険金や退職金の一部も「みなし相続財産」として課税対象となります。

ステップ② 債務・葬式費用を差し引く

住宅ローンや借入金、未払い税金などの債務、および葬儀費用を差し引きます。

ステップ③ 基礎控除を適用

課税遺産総額を算出するため、以下の基礎控除を引きます。

基礎控除額=3,000万円 +(法定相続人の数 × 600万円)

ステップ④ 法定相続分で按分して仮税額を計算

課税遺産総額を法定相続分どおりに分けたと仮定して、それぞれの取得分に税率を適用します。仮に、ここでは、「仮税額」と呼びます。

ステップ⑤ 実際の取得分に応じて本税額を算出

相続人ごとの実際の取得割合に応じて按分し、各自の納税額を計算します。

3.具体的な計算例

相続税の計算は文章で読むより、実際の数字で見たほうがイメージしやすくなります。

事例

  • 被相続人:父
  • 相続人:妻と子1人
  • 相続財産:1億円(預金7,000万円、不動産3,000万円)
  • 債務・葬式費用:なし(簡易化)
  • 法定相続人:2人

Step1:基礎控除の計算

3,000万円+600万円×2人=4,200万円

Step2:課税遺産総額

1億円-4,200万円=5,800万円

Step3:法定相続分で按分(配偶者1/2、子1/2)

  • 配偶者:2,900万円
  • 子:2,900万円

Step4:各自の仮税額を計算(税率15%、控除50万円)

2,900万円 × 15% − 50万円 = 385万円

各自の仮税額:385万円

合計税額:770万円

この770万円を、実際の取得分に応じて配分して納税します。

4.税率に関わる各種控除と特例

税率の影響を大きく緩和する制度として、以下のような控除・特例があります。

(1)配偶者の税額軽減

次のいずれか多い額まで、配偶者には相続税がかからないという特例です。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分

【相続税が0円に!?】配偶者の控除制度とその注意点

(2)未成年者控除

未成年の相続人には、20歳までの年数×10万円が控除されます。

(3)障害者控除

障害者の相続人には、一定の年数×10万円(特別障害者は20万円)の控除があります。

(4)小規模宅地等の特例

一定の要件を満たす居住用または事業用の土地については、最大80%の評価減を受けることができます。

(5)相次相続控除

10年以内に相次いで相続が発生した場合、一定の要件のもとで税額控除が適用されます。

5.税率を意識した考え方

課税価格が高くなると税率が上がるため、財産を分割する・分散するという視点が重要です。

よく使われる対策例

  • 生前贈与:110万円までの非課税枠を活用
  • 養子縁組:法定相続人を増やすことで基礎控除が拡大
  • 不動産の共有相続:個別取得額を減らす
  • 遺言活用:相続分配を明確にし、争続を防止
  • 財産の評価見直し:評価方法の選択によって税負担が変わる

6.相続税の税率に関するよくある質問(FAQ)

Q. 税率は毎年変わりますか? A. 大きな税制改正がない限り、税率は急に変更されることはありません。ただし政治状況によっては変更される可能性もあります。

Q. 贈与税の税率と相続税の税率は違う? A. はい、異なります。贈与税はもらった人単位で、相続税は相続全体に対して課税されます。税率構造も異なります。また、贈与税の税率の方が相続税よりも圧倒的に高くなっています

Q. 相続税を払えないとどうなる? A. 延納や物納といった制度があります。

まとめ|相続税の税率は正しく理解すれば怖くない

相続税は、単に税率表だけを見て判断するのではなく、全体の仕組みを理解したうえで適切に計算することが重要です。

  • 税率は累進式で、段階的に上昇
  • 基礎控除や特例によって大幅に負担が軽減される
  • 配偶者・未成年者・障害者などの保護制度も充実

「うちは相続税がかかるのか?」等、相続について疑問をお持ちの方は、ぜひ、私たちにご相談ください。

相続税の専門院

お問合せ

飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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