相続税についての思い出 その2

2022年8月11日
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2022年8月11日 飯野悠美子

祖父の次は、祖母の相続でした。そのころには、私は相続専門の税理士法人での修行を終えて、自他共に認める相続税のプロになっていました。しかし、そのとき勤めていた税理士法人は非常に忙しい事務所でした。おそらく日本一忙しいと思います。

税理士は、季節労働者的な側面があり12月から5月が忙しいのですが、その税理士法人は、それ以外の期間で書籍を執筆していました。複雑な税務をわかりやすく説明する元祖のような事務所で業界では、とても権威のある事務所でした。所長は、元税理士予備校の看板講師。単独でも書籍をたくさん執筆しており、税理士向けの講義のために日本全国を走り回っている人でした。そこに私は、創立後、はじめての公認会計士の資格を持つ税理士として雇われました。つまり、初めて税理士試験を受けていない人が雇われたのです。そこの従業員はほとんどの方が元税理士予備校の講師でした。祖母が亡くなっても、私には祖母の相続税申告書を作成する時間的余裕はありませんでした。その何倍も難解な組織再編がらみの相続業務に追われていた。祖母の不動産賃貸業にも税理士がついていたので、その税理士さんが祖母の相続をやることになりました。

祖母の相続税申告書をサラっと見て、「こんなんでいいの?」とは思いましたが、祖母の相続税申告書には書面添付というものが付いており、祖父の時と異なり、税務調査はありませんでした。書面添付とは、税理士がきちんとチェックしましたという書面を申告書に付けることにより、調査の前に税務署と税理士が面談し、疑問が解消されれば調査にはならないという書面です。

きちんと運用すれば非常に優れた制度ですが、世の中には「なんちゃって書面添付」が横行しています。私は100%の自信が持てる申告書にしか書面添付をしません。間違いだらけ脱税だらけの申告書に調査に来てほしくないから書面添付をするというのは、私の常識に照らして間違っていると思うからです。

世の中の問題は、なんだかんだいって常識的な結論におちつかせようとする力が働きます。公認会計士試験にも会社法という科目があり、また司法試験用の教材を使って民法の勉強もしました。様々な問題を解決していく中で、法律の解釈をするのですが、その解釈というのは常識的結論を導き出すようになされています。ときどき、法律の不備により常識に反する判決が裁判所でなされることがありますが、その法律はすぐに改正されます。そのため、「なんちゃって書面添付」は非常にリスクが高いと考えています。後からひっくり返されるリスクが多分にある、と思っています。

継続的に顧問をしているお客様であれば内情がよくわかり相続税申告書にも書面添付をすることができると思います。しかし、1回限りの相続のお客様の相続税申告書に書面添付を、私は付けません。チェックをしようにも、財産を隠されたらチェックのしようがないし、巧妙に隠された財産を特定する方法はないからです。

祖母の話です。祖母は、私が税理士業務を行っているときに存命でした。祖母は私のことを「先生、先生」と言って、資格を取得したことを心から喜んでくれていました。35歳になっても仕事と勉強一筋の私に、「先生、仕事と勉強ばかりしてないで、女の子と遊びなさい」と言ってくれました。細々と婚活はしていたのですが、結婚したのは祖母が亡くなった後でした。親戚のおばさんは、披露宴で「よかったね!天国でババアが喜んでるよ!」と言ってくれました。

祖父と祖母の勤勉さと倹約のおかげで、私の家族はお金の心配をせずに生活ができています。私の代で初めて農業と不動産賃貸業以外の事業を始めたので、父と母からは事業にかかるお金の多さに「おばあさんが聞いたら泣くよ!」とよく注意されます。

正直にいって、私は生まれたときから、お金になに不自由なく生きています。そのため、お金を稼ぐということにあまり興味がありません。それよりも、私も含めて私の周囲の人に幸せに生きてほしいと思っています。そのために最も大切なことは、「正しい」と信じていることを我々はやっているんだ、という信念をもって、毎日を清々しく生きることだと思っています。

私が考える「正しい」が世間様とずれていることも多々あります、もっとこうした方がいい、もっとこうなった方がいい、と思うことが皆様もあるはずです。税理士として独立開業して本当に良かったと思うのは、おかしいと思うことを、しなくてもよくなったことです。組織に所属すると必ず、おかしいことがあります。今は、私が中心となって組織を作っています。しかし、組織を作るにあたっては、事務所のメンバーの意見を聞くようにしています。私が考えるよりも、もっと「正しい」ことがあるからです。

また、私は「私の周り」の範囲を大きくしたいと思っています。幸せになる人が増えると気付いたときから、事務所の規模を大きくすることを決めました。ダークサイドに落ち、私の周りから去って行く方もいます。しかし、私と少しでも「正しい」という感覚を共有できる方を、たくさん「私の周り」の人にしていきたいと思って、日々仕事をしています。

ダークサイドについては次回、語ろう思います。

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