こんにちは。富士市・富士宮市の飯野明宏税理士事務所です。
高齢の方が老人ホームに入居する際、多くの場合「入居一時金」というまとまった費用を支払います。この入居一時金、被相続人が亡くなった後に一部返還されることがありますが、この返還金は相続税の対象になるのでしょうか? 今回は、老人ホームの入居一時金の返還金が「相続財産」にあたるのか、また課税関係や注意点について詳しく解説いたします。
📚 目次
第1章|老人ホームの入居一時金とは?
こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。
老人ホームに入居する際に支払う「入居一時金」は、居住費やサービス提供に対する前払い金として扱われ、入居者が退去または死亡した際に、一定期間分の未償却分が返還される仕組みです。
返還金は契約内容により異なり、償却期間の途中で亡くなった場合、その未償却分が一定の計算式に基づいて戻ってくることがあります。
第3章|入居時の課税関係にも注意
入居一時金は、入居者本人以外が支払った場合に贈与税の問題が発生することがあります。
贈与税が非課税になるケース
夫が妻のために一時金を負担したような場合で、
- 要介護状態で介護が困難
- 入居者に資金力がなかった
- 入居施設が必要最小限で合理的
などの要件を満たせば、「扶養義務に基づく生活費」として贈与税は非課税になります。
贈与税が課税されるケース
一方で、1億円以上の高級施設などに入居し、要介護でもない場合には、贈与税が課税された判例もあります。入居施設の性質や金額、負担者の動機等が重視されます。
第4章|返還金は誰のもの?トラブルになりやすい相続上の注意点
入居契約で返還金の「受取人」が指定されている場合でも、その指定が法的効力を持たないことがあります。たとえば、孫など相続人でない者が指定されている場合、他の法定相続人から「贈与にあたるのでは?」と争われるケースもあります。
相続人同士のトラブルを避けるためには、
- 返還金の扱いを遺言書などで明記する
- 法定相続人を受取人に指定する
などの対策が重要です。
第5章|その他の関連論点
利用料の債務控除
死亡後の利用料(特に未払い分)は、相続税計算において「債務控除」の対象となります。また、医療的ケア部分については所得税上の「医療費控除」も受けられる場合があります。
第6章|まとめ|返還金の税務判断は専門家に相談を
入居一時金の返還金は、原則として「相続財産」に該当しますが、契約内容や支払者、施設の性質によって贈与税の課税が生じる場合もあります。
判断が難しいケースも多いため、相続税や贈与税の専門知識を有する税理士に早めにご相談ください。