【準確定申告とは?】相続が発生したら4ヶ月以内に必要な手続き

2025年5月19日 管理人

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

相続が発生したとき、「準確定申告(じゅんかくていしんこく)」が必要になることがあります。
これは、被相続人が生前に本来行うべきだった確定申告を、相続人が代わりに行うものです。

「四十九日が終わったばかりなのに、もう申告?」「準確定申告って何?」と戸惑う方も少なくありません。

今回は、準確定申告の概要・期限・必要なケース・手続きの流れ・注意点・ペナルティまでを、税理士がわかりやすく解説します。


1 準確定申告とは何か?通常の確定申告との違い

準確定申告とは、亡くなった方(被相続人)の死亡年の1月1日から死亡日までの所得を申告する手続きです。
通常の確定申告(1月1日〜12月31日分)とは異なり、「その年の途中まで」の所得を計算します。

  • 申告義務は相続人がこれを引き継いで共同で申告する必要があります。

 


2 準確定申告が必要なケース・不要なケース

準確定申告が必要な人(主なケース)

次のいずれかに該当する場合、準確定申告が必要になります。

  • ■事業所得や不動産所得がある

  • ■給与収入が2,000万円超

  • ■2ヶ所以上から給与を得ている

  • ■年金収入が400万円超

  • ■その他所得(利子・配当など)が20万円超

  • ■株式や不動産を売却した

  • ■毎年確定申告をしていた 等

準確定申告が不要な人

  • ■給与収入のみ(年末調整済)かつ2,000万円以下

  • ■年金収入400万円以下かつ他の所得が20万円以下

  • ■相続放棄している 等

準確定申告を「した方がよい」ケース(還付がある)

  • ■医療費控除・寄附金控除・配偶者控除などが受けられる

  • ■源泉徴収や予定納税の過納がある
    還付金を受け取るために申告することができます


3 準確定申告の期限は4ヶ月!

準確定申告の期限は、
「相続が開始したことを知った日の翌日から4ヶ月以内」です。

例:4月1日に死亡 ⇒ 8月1日が申告期限(※土日祝の場合は翌営業日)

申告と納付の両方をこの期限内に行う必要があります

なお、還付を受けるための申告(医療費控除など)については、4ヶ月の期限を過ぎても、5年以内であれば申告が可能です。ただし、還付金は相続税の課税対象となるため、相続税の申告期限(10ヶ月以内)に間に合うよう早めに手続きを行いましょう。


4 準確定申告が2回必要になるケースとは?

以下のようなケースでは、準確定申告が2回必要です。

  • 1月1日〜3月15日の間に亡くなり、前年分の確定申告が未了

この場合、

  • 前年分の申告(前年1月1日〜12月31日)

  • 当年分の申告(当年1月1日〜死亡日)

の2年分を、亡くなった日から4ヶ月以内に申告する必要があります。

 


5 準確定申告の手続きの流れと必要書類

申告の流れ

  • ■必要性の確認と相続人間の連絡
  • ■必要書類の収集
  • ■申告書作成(全相続人の署名)
  • ■税務署への提出
  • ■納税または還付手続き
  • ■還付金がある場合は相続財産として相続税申告へ反映

主な必要書類

  • ■被相続人の源泉徴収票・支払調書

  • ■各種控除証明書(医療費、生命保険料など)

  • ■収支内訳書または青色申告決算書(事業所得がある場合)

  • ■準確定申告用の確定申告書+付表(相続人連署欄あり)

  • ■委任状(代表相続人が還付を受け取る場合)

  • ■マイナンバーカード、印鑑証明など


6 準確定申告に関する注意点

  • ■相続人全員で連名署名が必要

  • ■還付金は相続財産に含まれる

  • ■青色申告や消費税の事業承継届出も期限あり

  • ■消費税の準確定申告について
    被相続人が消費税の課税事業者(基準期間の課税売上高が1,000万円超など)だった場合、所得税とは別に消費税の準確定申告も必要です。消費税の準確定申告期限も所得税と同様に4ヶ月以内です。


7 期限に遅れた場合のペナルティ(税務署からの制裁)

準確定申告に遅れると、通常の確定申告と同様に重いペナルティが発生します。

  • ■無申告加算税:
    – 税務調査前の自主申告:5%
    – 税務調査後の申告:10%(50万円超の部分は15%、300万円超の部分は25%)
    – 悪質な仮装隠蔽がある場合(重加算税):40%

  • ■延滞税:納期限の翌日から納付日までの日数に応じて課税
    – 納期限の翌日から2ヶ月以内:年2.4%
    – 2ヶ月経過後:年8.7%
    (令和4年1月1日から令和7年12月31日までの税率)

 

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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