他人事ではない未登記不動産。 相続登記義務化前でも相続登記はしてください

2022年10月21日 飯野悠美子

令和6年4月1日から、相続登記が義務化されます。

 

私は5年ほど前に、東京から静岡県の富士市に帰ってきて、税理士事務所を開業しました。

その時、最もびっくりしたのが、相続税の申告を行ったときに遭遇した未登記不動産の存在です。東京では土地や建物が登記されていないということは、あり得ないことだったのです。しかし、地方では価格の安い土地や建物はお金をかけてまで登記するのは、もったいないということなのでしょうか。不動産は、登記されていることが当然だと思っていた私にとって、とてもショックなことでした。

市町村も困っているようです。

例えば、固定資産税は市町村が課税する税金です。登記がされていないと誰に課税したらいいのか、調査に多大な時間と労力を必要としているようです。

未登記物件の経済的損失は、このままだと、近い将来、数兆円になると言われていました。これは、是が非でも、手を打たなければいけない。国もそう思い、相続登記の義務化に踏み切ったのでしょう。

令和2年度税制改正では、市町村は、土地・家屋について登記簿等に所有者として登記されている個人が死亡している場合、その土地又は家屋を現に所有している者に、市町村の条例で定めるところにより、その現所有者の氏名、住所その他固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができることとされました。申告しない場合、罰金もあります

また、市町村は調査をしても、固定資産の所有者が1人も明らかにならない場合、その使用者を所有者とみなして、固定資産税を課税することができるようになりました。

相続税の申告が必要のない方であっても、相続時には、遺産分割協議と不動産の登記は、子孫がほとんど他人となってしまう遠い親戚と共有の不動産を所有することになることを防ぐためにも、必ず行うべきであると考えています。

令和6年4月1日に義務化されるため、少し安心していますが。今まで未登記で、相続人どうしが、ほぼ他人という土地はどうなってしまうんでしょうか?これらは、個々に解決していくしかないのではないかと思います。

未登記であることの問題が、顕在化したのは東日本大震災がきっかけです。津波により建物が流されてしまい、土地は残ったものの、登記がされていないため、どれが誰のものかわからない、という事態になってしまいました。復興のために、国が土地を買い取るにしても、誰のものかわからなければ、買い取ることができません。

遺産分割についても、民放改正にともない令和5年4月1日から適用される遺産分割に関する新制度では、10年という期限が設けられ、相続開始から10年ほおっておくと、原則として強制的に法定相続分で分割とされるようになりました。これにより、例えば、住んでいる家の土地は未登記で、ほおっておくと法定相続分で分割になってしまうから自分のものにしたいと思う人に、積極的に遺産分割協議を促すような仕組みとなります。

将来の子孫が不動産を整理して処分したいと思った時のためにも、どこの誰かもわからない遠い親戚と交渉等をする必要がないよう。遺産分割と登記は、必ず行うべきです。

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