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社長や家族の結婚式費用を会社経費にできる?取引先を招待した場合

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。
今回は、「社長やその家族の結婚式に取引先を招いた場合、その費用の一部を会社の交際費などとして処理できるのか?」というテーマについて、税務上の取扱いを解説します。


1 社長の結婚式に取引先が出席。費用は会社持ちにできる?

たとえば、社長の息子の結婚式を開催する際に、出席者の多くが取引先関係者だったとします。
このような場合に、結婚式や披露宴の費用を「個人的な支出」と「法人関係者への対応」とに按分して、一部を会社の費用(交際費など)として処理できないかと考える方もいるかもしれません。

結論から言うと、この費用を法人経費として処理することはできません。

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2 税務上の基本的な考え方:結婚は個人行為、費用も全額私費

結婚はあくまでも個人の私的行為であり、そのために要する費用(式場費用、披露宴の飲食、引き出物など)は、原則として全額が個人負担すべきものです。

たとえ出席者の大半が取引先であっても、それは「会社としての儀礼」ではなく、結婚する本人やその家族が主催する私的行事と位置付けられます。

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3 按分処理もNG。取引先対応であっても会社の支出は不可

中には、「会社関係者を多数招待しているから、法人負担分として按分できるのでは?」というご質問も想定されますが、これも認められません。

なぜなら、

  • ■式の主催者はあくまでも社長やその家族であり

  • ■出席者が取引先であるか否かは、法人の支出根拠とはならず

  • ■仮に法人が費用を負担すると、その分は社長への役員報酬(経済的利益の供与)として課税対象になる

ためです。


4 祝儀の取り扱い:全額個人の収入に

では、取引先などの出席者が持参する「祝儀」はどうなるかというと、これも全額が個人の収入とされます。
法人が招待主でない以上、祝儀を法人収入とすることはなく、またこれを理由に法人支出の正当性を補うこともできません。


5 まとめ:家族の慶事費用はすべて私費。法人支出は原則NG

社長やその家族の結婚に関する費用は、

  • ■どれほど多くの取引先が出席していても

  • ■どれほど会社と関係が深くても

会社の支出として処理することは認められず、すべて個人負担となります

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飯野明宏税理士
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飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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社長が出席する冠婚葬祭の衣装代は経費になる?

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。
今回は「社長が取引先の冠婚葬祭に出席する際の衣装代を会社が負担した場合、その支出は会社の経費として認められるのか?」というテーマについて、税務の観点から整理して解説します。


1 取引先の冠婚葬祭に出席するのは業務の一環か?

法人の代表者が取引先や顧客の冠婚葬祭(結婚式や通夜・告別式等)に出席することは、実務上「業務の一部」として認識される場面も少なくありません
特に地方の中堅企業などでは、地域や業界とのつながりを重視する文化があり、出席の頻度も高くなりがちです。

このような出席に伴って発生する祝儀や香典、供花代などについては、交際費として法人経費に計上することが一般的に認められています。

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2 衣装代は「交際費」にできるのか?

問題となるのは、社長がこれらの冠婚葬祭に出席する際に必要となる「礼服」「喪服」などの衣装代です。

税務上の取扱いとしては、この衣装代は原則として会社経費にすることはできません

3 税務上の判断基準:「衣装代=衣食住の個人的費用」

法人が役員や従業員のために支出する費用のうち、「衣・食・住」すなわち個人の生活に密接に関係する費用は、原則として個人負担とされています。

衣装代は、たとえ法人の業務に関連して使用される場面であっても、「個人の生活維持に不可欠な支出」と位置付けられ、法人が負担すると役員報酬(経済的利益の供与)とみなされるリスクがあります。

そのため、たとえ社長が出席する冠婚葬祭が業務関連であったとしても、衣装は社長個人が用意し、自己負担するのが原則です。

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4 交際費として認められる支出との違い

混同しがちですが、次のような支出は法人経費として処理できます:

  • ■取引先の冠婚葬祭に対する祝儀・香典
  • ■供花・供物の購入費
  • ■弔問・慶事に伴う交通費(業務出張としての位置づけがある場合)

これらは「法人が外部との関係維持・信頼醸成のために支出する費用」として、交際費や福利厚生費に該当する可能性があります。

一方、衣装代は「社長個人の生活費」とみなされるため、損金不算入+役員報酬課税の対象になるという点が大きく異なります。


5 まとめ:社長の冠婚葬祭出席は経費でも、衣装はNG

結論として、

  • ■社長が取引先の冠婚葬祭に出席すること自体は業務の一環と認められうる

  • ■出席にかかる祝儀・香典・交通費等は交際費として経費処理可能

  • ■ただし、礼服・喪服等の衣装代は、社長個人の生活関連費用に該当するため、法人負担は不可

このように、出席に関する費用のうち、どの部分が法人の業務に関連するか、どこからが私的支出かを明確に区別することが重要です。

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社長の妻が社長の代理で取引先のゴルフ大会に参加。会社の費用になる?

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。
今回は「社長の妻が社長の代理として取引先のゴルフ会などに出席した場合、その費用を会社経費として処理できるか?」というテーマについて、法人税務の観点から解説します。

ゴルフ費用について >


1 社長の妻の出席でも会社経費になるケースとは?

家族経営や同族会社においては、社長の妻が実質的な補佐役として社外の行事や会合に出席することがあります。たとえば、銀行や取引先とのゴルフ会、業界の会合などに社長が出席できない場合、代わりに社長の妻が参加するというケースです。

前提として、社長の妻の法人内での地位が重要な論点となります:

役員・従業員の場合:
正式な職務として代理出席する場合、業務上の必要経費として処理可能。
ただし、役員報酬の定期同額要件等を満たす必要あり。

役員・従業員でない場合:
法人が第三者(家族)に対して金銭的利益を供与することになる。
寄附金として認定され、損金不算入となるリスクが高い。
個人側では一時所得として課税される可能性。

このような前提のうえで、出席にかかる費用(ゴルフ代、会食費、交通費など)を会社の経費(損金)として処理できるかどうかが論点となります。

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2 法人経費として認められる要件

税務上、このような費用が法人経費として認められるためには、次のような条件を満たす必要があります。

  • その会合が法人の事業遂行上必要であること
  • 出席者が法人の業務を十分に理解し、代理出席としての実態があること
  • 単なる個人的な趣味や親睦目的でないこと

つまり、「社長夫人だから」ではなく、社長の業務を実質的に代理する立場であり、その目的が法人のためであると合理的に説明できるかが重要です。

寄附金認定を避けるための要件として次の事項が挙げられます。
対価性が明確に認められること。
支出金額が提供されるサービスに見合った合理的な水準であること。

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3 経費とされないケースとは?

逆に、以下のような場合には、法人の経費としては認められず、社長個人への役員報酬(経済的利益の供与)とみなされるリスクがあります。

  • 社長の妻が法人の業務を理解していない
  • 会合が業務目的ではなく、個人的な親睦・趣味である
  • 出席の実態が「業務の代理」ではなく、あくまで私的参加である

たとえば、業界関係者の私的な親睦ゴルフ会や、懇親を目的とした会食であるにもかかわらず法人負担とした場合、税務署から否認される可能性が高まります。

特に注意すべきリスク:

寄附金認定リスク: 社長の妻が役員・従業員でない場合、法人から家族への利益供与として寄附金と認定される可能性が高い

損金不算入リスク:寄附金と認定された場合、支出全額が損金不算入となる

課税リスク:個人側(社長の妻)で一時所得として課税される可能性

税務調査リスク: 家族への支出は税務調査で厳しくチェックされる傾向


4 実務対応:会社経費にするためにできること

費用を法人経費として処理するためには、以下のような記録・準備が実務的に重要です。

  • 出席者の業務理解度や役割の説明(議事録や備忘録)

  • 会合の開催目的や出席者のリストを明確に保管

  • 社長からの正式な代理依頼や職務命令があるとなお良い

  • 出席報告書などによって業務活動の一環であったことを文書化

これらを整備しておくことで、税務調査においても正当性を説明しやすくなります。


5 まとめ:妻の出席費用も条件次第で経費処理は可能

結論として、社長の妻の出席費用を会社経費とするには極めて慎重な検討が必要です:

処理可能なケース:
妻が正式な役員・従業員として法人に関与している場合
職務として明確に代理出席の指示がある場合
業務上の必要性が客観的に説明可能な場合

避けるべきケース:
妻が法人と雇用関係にない場合の費用負担
私的・親睦要素が強い会合への出席費用
業務上の必要性が不明確な支出

推奨される対応:
妻を正式に役員または従業員として登用し、適切な報酬体系を整備した上で、職務として代理出席を行うことが最も安全な方法です。

 

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代表税理士 飯野 明宏

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静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

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ロータリークラブ・ライオンズクラブの会費を会社で負担すると経費になる?

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。
今回は「ロータリークラブやライオンズクラブなどの会費・活動費を法人が負担した場合の税務上の取扱い」について、交際費・寄付金・給与のいずれに該当するのかを解説します。


1 ロータリークラブ等の会費は法人で負担できる?

社長や役員がロータリークラブやライオンズクラブなどの社会団体に入会し、その会費を会社が負担することがあります。
このような支出が法人の経費(損金)として認められるかどうかは、費用の性質と支出目的に応じて異なります。

結論から言えば、法人が負担した会費のうち、「経常会費」については交際費として処理可能です。

交際費について >


情報元:国税庁 会費及び入会金等の費用

 


2 経常会費は「交際費」として認められる

法人税基本通達(9-7-15の2)では、法人がロータリークラブ等に対して負担した入会金・経常会費は、原則として「交際費」として取り扱うことが認められています。

これは、会合への参加を通じて、

  • ■業界関係者や地元関係者との関係強化

  • ■経営情報の収集やネットワーク構築

といった法人の業務に資する目的があると判断されるためです。

法人税基本通達 9-7-15の2

法人がロータリークラブ又はライオンズクラブに対する入会金又は会費等を負担した場合には、次による。

(1) 入会金又は経常会費として負担した金額については、その支出をした日の属する事業年度の交際費とする。

(2) (1)以外に負担した金額については、その支出の目的に応じて寄附金又は交際費とする。ただし、会員たる特定の役員又は使用人の負担すべきものであると認められる場合には、当該負担した金額に相当する金額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。

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3 臨時会費や特別会費は「寄付金」か「交際費」

経常会費以外にも、クラブ活動においては次のような費用が発生する場合があります。

  • ■社会福祉活動のための寄付金的な支出
  • ■特別懇親会や会合での飲食費の負担
  • ■イベント・周年事業等の一時的費用負担

このような臨時的・特別的な支出については、その目的に応じて「寄付金」または「交際費」として区分する必要があります。

例えば:

  • ■地域社会への寄付や支援 → 寄付金として扱う
  • ■会合や懇親を目的とした費用 → 交際費として扱う

なお、交際費として処理された場合でも、法人の資本金に応じて次のように、損金算入に限度額があります。

  • ■資本金1億円以下の法人: 年間800万円まで損金算入可能
  • ■資本金1億円超の法人: 原則として全額損金不算入

また、寄付金となるか、交際費になるかは次の判断基準によります。

臨時会費や特別会費の具体的な判断基準は、おおよそ次のとおりです。

寄付金として扱われるもの:

  • ■地域の災害支援金
  • ■社会福祉施設への寄付
  • ■公益事業への特別寄付

交際費として扱われるもの:

  • ■会員同士の懇親会費用
  • ■ゴルフコンペの参加費・賞品代
  • ■会合後の飲食費用

判断のポイント:
法人の事業に直接関連する関係維持・構築目的があるかどうかが重要な判断基準となります。

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4 個人的な支出と判断されると「給与(賞与)」扱いになるリスクも

注意が必要なのは、会社が負担した費用が明らかに社長や役員個人のための支出であると認められる場合です。
この場合、法人の損金とはならず、役員に対する経済的利益の供与=役員報酬と判断される可能性があります。

たとえば次のようなケースでは給与課税の対象となるおそれがあります:

  • ■会員である役員のみに便益が及ぶ場合
  • ■完全に個人的な活動と認められる支出
  • ■飲食や交際費の名目が不明確な場合

他方、法人負担が適切と認められるには、次の事項等に該当する必要があります。

  • ■法人の営業政策上必要と認められる活動
  • ■会員としての地位が法人の代表者としてのもの
  • ■得られる便益が法人に帰属するもの

5 まとめ:支出の性格を明確にし、適切な処理を

実務上の留意点としては、次の点が挙げられます。

  • ■会費の領収書には支出目的を明記
  • ■会合の議事録や参加報告書を保存
  • ■複数年度にわたる支出の場合は継続性に注意
  • ■他の役員・従業員との処遇の公平性を考慮

税務調査での確認事項としては、次の点が挙げられます。

  • ■クラブ活動と法人業務との関連性
  • ■支出金額の妥当性
  • ■個人的利用の有無

ロータリークラブ等への会費負担は、適切に処理すれば法人の経費として認められますが、以下の点に注意が必要です。

交際費の場合: 損金算入限度額の制約あり
寄付金の場合: 損金算入限度額および適格要件の確認が必要
給与の場合:源泉徴収義務および定期同額給与要件への影響

支出の性格を慎重に判断し、各分類に応じた適切な処理を行うことが重要です。

 

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社長の入院による特別室料金は厚生費にできる?税務上の取り扱いと注意点

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。
今回は、「社長の入院にかかった特別室の追加料金を会社が負担した場合、その費用を厚生費として処理できるのか?」というテーマについて、法人税の観点から解説します。


1 結論:厚生費としての処理は認められない

 

このケースにおいて、特別室の追加料金は厚生費として損金に算入することはできません
なぜなら、医療費の中でも特別室の差額ベッド代は、あくまで個人の便宜のための支出であり、会社がその費用を負担した場合には「経済的利益の供与」にあたるためです

 

つまり、その費用を法人が負担すると、社長個人への給与として取り扱われることになります。


2 経済的利益とは?役員賞与としての課税対象

法人が役員の私的な費用を負担した場合には、「経済的利益の供与」(法人税基本通達9-2-10)とみなされ、その相当額が役員報酬とされます。


情報元:国税庁 経済的な利益の供与

その結果、次のような税務上のリスクが生じます:

  • ■法人側:損金不算入(費用として認められない)
  • ■個人側:役員賞与として所得税課税の対象となる

特別室代は「個人の便宜のための支出」であり、業務との関連性がないため、法人が負担すれば実質的な給与の支給と同視されます。

また、重要な点として、このような経済的利益の供与は次の点に注意が必要です。

  • ■定期同額給与の要件を満たさないため、法人側では全額損金不算入となります。
  • ■源泉徴収義務が発生するため、適切な手続きが必要となります。
  • ■重加算税等のペナルティのリスクもあります。

3 実務上の注意点と対応策

以下については福利厚生費として認められる場合があります。

認められるものは次の事項等です。

  • ■健康診断費用(全従業員対象)
  • ■見舞金(社会通念上相当な金額)
  • ■団体医療保険の保険料(一定の条件下)

認められないものは次の事項等です。

  • ■個人の治療費・薬代
  • ■特別室・個室の差額ベッド代
  • ■個人的な健康管理費用
  • ■高額な先進医療費

福利厚生として認められるには、全従業員を対象とし、合理的で平等な基準に基づく制度であることが必要です。

トラブルを避けるため、役員や使用人の医療費を会社が負担する場合には、以下の点に注意が必要です:

1. 事前の制度整備を行う。

  • ■医療費に関する社内規程の策定する。
  • ■福利厚生制度の明文化と全従業員への周知を行う。
  • ■見舞金制度の金額基準の明確化する。

2. 適切な処理を行う。

  • ■医療費は個人負担を原則とする。
  • ■会社立替の場合は速やかに個人精算を行う。
  • ■見舞金は社会通念上相当な範囲内(一般的には数万円程度)とする。

3. 記録・証拠の保全を行う。

  • ■医療費の領収書の適切な管理を行う。
  • ■精算処理の記録保存を行う。
  • ■福利厚生制度の平等な運用実績の文書化を行う。

入院している社長


4 まとめ|社長の入院費用は会社負担NG。課税のリスクに注意

社長や役員の特別室代など、個人的な医療費用を法人が負担することは、原則として厚生費にはならず、役員報酬として課税対象となります。

特に注意すべきリスクは、次のとおりです。
・法人側:損金不算入により法人税負担が増加
・個人側:給与所得として所得税・住民税が課税
・手続面:源泉徴収義務の発生と年末調整での処理が必要

会社として適切な運用を行うためには、事前に明確なルールを策定し、全従業員に平等に適用される福利厚生制度を整備することが重要です。個人的な医療費は原則として個人負担とし、会社は適切な見舞金制度等で対応することをお勧めします。

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自社のレストラン等で接待をした場合の交際費の額はどう決めるべきか?

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。
今回は「自社のレストラン等で接待をした場合の交際費の額はどう決めるべきか?」というテーマについて、税務上の取扱いと実務上の注意点を解説します。


1 自社施設で接待した費用も交際費になる?

社内で飲食店やクラブを運営している会社が、自社の顧客をその施設に招いて接待した場合、その費用も交際費として取り扱われるのかという疑問があります。

まず、税法上の定義では、交際費とは「法人がその得意先、仕入先その他事業に関係ある者に対して行う接待・贈答・慰安等の行為に要する費用」とされています。

原則としては、一般のお客様から徴収する金額が交際費となりますが、以下の場合のように、提供した料理等の原価を正しく計算し、その原価を交際費としている場合にはその計算も認めらるものと考えています。

  • 製造原価を適正に把握している場合
  • 継続的に原価ベースで処理している場合
  • 合理的な原価計算に基づいている場合

接待の対象や目的に関係なく、その行為のために実際に支出した費用が「交際費」となります。たとえ自社で料理を提供したとしても、それに要した材料費や人件費は交際費に含めてよいとされています。

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2 計上する交際費は「原価」

自社レストランで提供した飲食物のうち、顧客接待のために使用されたものについては、「その飲食物の原価」が交際費の対象になります。
ここで言う原価とは、主に以下のような費用です:

  • 材料費(食材等の仕入原価)

  • 人件費(調理・提供に携わる従業員の給与)

  • その他、料理の提供に直接必要な経費

これらを集計した金額が、交際費として損金算入される対象です。

なお、原価の算出が困難な場合には、一般顧客に提供している販売価格に「原価率」を掛けた金額を交際費とすることも認められます。たとえば、販売価格が5,000円で原価率が60%であれば、交際費相当額は3,000円となります。

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3 店舗建物の減価償却費や固定資産税はどう扱う?

次に問題となるのが、「自社建物の中で接待をした場合、建物の減価償却費や固定資産税等の維持費も交際費に含めるべきか?」という点です。

これについては、以下のような考え方になります:

  • ■建物の減価償却費や固定資産税は、間接的な費用とみなされるため、交際費としての直接性が認められず、原則として交際費には含めません

  • 一方、接待専用に使用される資産については、例外的に一部の費用が交際費に含められる可能性もありますが、明確に区分されていることが前提です。


4 経理処理のポイント:交際費は「製品」扱いで処理

自社施設での接待費用については、会計上、以下のように処理します。

  • 提供した料理の原価 → 交際費「製品」(または売上原価)として処理

つまり、自社で飲食物を調理・提供して接待した場合には、実際にかかった原価を交際費として計上し、税務処理を行う必要があります。販売価格ベースではなく、必ず原価ベースで集計することが重要です。


5 まとめ:自社で接待する場合も原価ベースで交際費を計上

自社施設を利用した接待であっても、税務上は「通常の交際費」として原価ベースでの計上が必要です。
建物などの間接費を除き、材料費や人件費などの直接費用を正確に把握し、合理的に交際費として処理することがポイントとなります。

顧客サービスの一環として自社レストラン等を活用する場合も、税務リスクを回避するためには「費用区分の正確な把握」と「根拠ある原価計算」が不可欠です。

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