こんにちは。富士市・富士宮の税理士、飯野明宏です。
相続が発生すると、悲しみに加えて様々な手続きが必要となります。特に、被相続人が収益物件(アパートやマンションなど)や預金などを持っていた場合、遺産分割協議がまとまるまでに時間がかかることがあります。
その間に、相続財産から家賃収入や預金の利子といった収益が発生します。これらの、元となる財産から生じる収益は「法定果実」と呼ばれ、誰がどのように取得し、税務上どのように扱われるのか、問題が生じることがあります。
今回は、この法定果実の税務上の取り扱いについて、特に共同相続人がいる場合の注意点を解説します。
1 法定果実とは何か?
1-1 法定果実の定義
法定果実とは、元となる財産(元物)から生じる収益のことを指します。相続における法定果実の具体例は以下の通りです:
- ■家賃収入(アパート、マンション、貸家等から生じる賃料)
- ■預金の利子
- ■株式の配当金
- ■地代収入
1-2重要な判例
法定果実が誰に帰属するのかについて、重要な見解が示されています。
この判例では、相続開始から遺産分割が確定するまでの間に発生した法定果実は、遺産そのものとは別個の財産であるとされています。
そして、これらの法定果実は、共同相続人がそれぞれの法定相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得すると解釈されています。
2 法定果実の原則的な取り扱い
2-1 遺産分割の対象外
法定果実は原則として遺産分割の対象にはならないということがポイントです。相続開始の時にさかのぼって遺産分割の効力が生じたとしても、この法定果実の帰属には影響しないとされています。
2-2 費用負担の原則
この原則に基づけば、不動産の維持管理にかかる費用なども、法定相続分に応じて共同相続人が負担することになると考えられます。
3 税務(所得税)上の取り扱い
3-1 各相続人の申告義務
法定果実を共同相続人が法定相続分に応じて取得するという最高裁の見解は、税務上、特に所得税の取り扱いに大きな影響を与えます。
共同相続人それぞれが法定相続分に応じて法定果実を取得することになるため、各共同相続人は、自身の法定相続分に対応する家賃収入や預金利子などをそれぞれの不動産所得や利子所得として申告し、所得税を納める必要があります。
重要: これは相続税の問題ではありません。
3-2 具体例
例: 長男と次男が共同相続人のケース
- ■法定相続分:それぞれ2分の1
- ■月額家賃収入:100万円
- ■各人の申告すべき不動産所得:月額50万円ずつ