相続税が払えないときの最終手段?「物納制度」

2025年5月20日 管理人

相続税が払えないときの最終手段?「物納制度」

こんにちは。富士市・富士宮市の相続税専門、飯野明宏税理士事務所です。

相続税の納税では、多額の税金がかかるにもかかわらず、現金や預貯金が少なく納税資金に困るケースが少なくありません。前回のブログでは、相続税の分割納付を可能にする「延納制度」について解説しましたが、今回はそれでもなお納税が困難な場合の「物納制度」について詳しくご紹介します。


第1章|相続税の物納とは?現物で納めるという選択肢

物納とは、相続税を延納でも支払えない場合に限り、相続財産そのものを現物で納付する制度です。原則として相続税は金銭での一括納付が求められますが、相続財産が不動産や株式ばかりで現金が乏しい場合、金銭での納付が現実的でないことがあります。そうした状況を考慮して設けられたのが、この「物納制度」です。

リンク 国税庁 相続税の物納


第2章|物納の適用要件とは?税務署に認められる条件

物納の適用を受けるには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 延納によっても納付困難であること

  • 相続税の申告期限内(10ヶ月以内)に物納申請書を提出すること

  • 対象財産が「物納適格財産」であること


第3章|物納に充てられる財産とその優先順位

物納に使える財産には順位があり、基本的には以下の優先順で納付することが求められます。

物納

さらに、これらの財産の中でも「物納劣後財産」などが定められており、原則として評価が安定しており管理が容易な財産が優先されます。


第4章|物納できない財産の具体例(管理処分不適格財産)

以下のような財産は、物納には使えません。

  • 抵当権などが設定された土地
  • 境界が不明な土地
  • 相続人間で争いがある不動産
  • 譲渡制限のある株式
  • 遺産分割協議が済んでいない財産

物納を検討する際は、早めに分割協議を済ませ、財産の法的整理を行っておく必要があります。


第5章|物納と売却、どちらが有利か?検討ポイント

物納財産の評価額は、原則として「相続税評価額」が用いられます。これは一般的な時価よりも低くなることが多いです。

物納にするか、財産を売却して金銭で納税するかはケースバイケースです。判断基準は以下の通りです。

物納と売却納税の比較
比較項目物納売却納税
評価方法相続税評価額(低め)時価(高め)
納税資金確保現物で対応現金化が必要
税金の種類譲渡所得税なし売却益に譲渡所得税が課税
手間・コスト実測・登記・書類整備などの要件を満たす必要あり仲介手数料・登記変更・譲渡税の申告などが発生

「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」が使えるかどうかも、売却納税を選ぶ際の大きなポイントです。


第6章|物納の注意点とスケジュール

  • 提出期限は「申告期限(10ヶ月)」内

  • 許可後の収納までの間に利子税が発生する場合あり


第7章|まとめ 物納は「最後の手段」?専門家のアドバイスを受けて判断を

物納は、現金納付や延納が難しい場合の「最後の手段」として認められる制度ですが、その要件は厳格であり、提出書類や財産の整備も求められます。また、相続税評価額での納付となるため、納税額と実質的な損得を冷静に判断する必要があります。

相続税の専門院

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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