知らぬ間に借金も引き継ぐ!?相続で怖い「法定単純承認」の落とし穴に注意!

2025年5月19日 管理人

知らぬ間に借金も引き継ぐ!?相続で怖い「法定単純承認」の落とし穴に注意!

こんにちは。富士市・富士宮市の飯野明宏税理士事務所です。

相続といえば、「財産を受け取る」というイメージをお持ちの方が多いかもしれません。しかし実際には、借金などのマイナスの財産も相続の対象になります。

特に注意したいのが、「知らぬ間に借金も引き継いでしまう」法定単純承認の制度です。今回はこの落とし穴について詳しく解説します。


第1章|相続人が選べる3つの方法

相続が発生すると、相続人には以下の3つの選択肢があります。

  1. 単純承認:プラスの財産もマイナスの財産も全て引き継ぐ(特別な手続き不要。放置=単純承認)。

  2. 限定承認:プラスの財産の範囲内で借金を引き継ぐ。家庭裁判所に申述が必要。

  3. 相続放棄:最初から相続人ではなかったものとみなされる。借金も相続しない。


第2章|法定単純承認とは?うっかり相続にご用心!

「相続放棄しようと思っていたのに、知らないうちに相続していた!?」

それが法定単純承認の怖いところです。

次のような行為を行った場合、相続放棄や限定承認をする意思がなくても自動的に「単純承認した」とみなされると定めています。

法定単純承認となる3つの行為

  1. 相続財産の全部または一部を処分したとき(保存行為を除く)
  2. 相続開始から3ヶ月以内に放棄・限定承認の申述をしなかったとき
  3. 放棄・限定承認後でも、相続財産を隠したり消費したりしたとき

第3章|「処分行為」と「保存行為」の違いとは?

✅ 処分行為とは?

相続財産に「手を加える行為」、つまり所有者としての意思を示した行為です。

例:

  • 預金の引き出し

  • 不動産の売却・解体・相続登記

  • 債権の回収

  • 株式の議決権行使 など

✅ 保存行為とは?

財産を維持・保全するための最低限の行為です。これに該当する場合は、法定単純承認にはなりません。


第4章|よくある事例で整理!これはアウト?セーフ?

相続開始後の行為と法定単純承認のリスク分類
行為内容処分行為?保存行為?説明
預金を引き出して生活費に使用処分借金を含めすべて相続したとみなされる
預金から葬儀費用を支払うグレー不当でない範囲なら保存行為扱いされる可能性あり
不動産の相続登記処分所有権を主張する行為とみなされる
不動産に鍵をかけた保存防犯目的の維持行為でセーフ
家賃の振込先を変更処分債権行使は相続の意思とみなされる
仏壇・墓石の購入保存社会通念上相当な支出と判断されることが多い
相続財産の形見分け保存通常はセーフだが、高額品は要注意

第5章|「準確定申告」はしても大丈夫?

「準確定申告」も、処分行為とみなされる可能性があるため注意が必要です。
相続放棄を検討している場合は、まず家庭裁判所での申述を先に済ませるべきです。


第6章|相続放棄を考えている場合の注意点まとめ

  1. 相続財産に手をつけない
  2. 必要最低限の行為(保存行為)にとどめる
  3. 相続開始を知った日から3ヶ月以内に放棄申述をする
  4. 判断に迷うときは専門家に相談する
  5. 借金が多そうな場合は、放棄期限の延長申請も可能

第7章|まとめ:知らないうちに借金を背負わないために

相続は財産を受け継ぐだけでなく、借金も引き継ぐ可能性があるという現実があります。
法定単純承認という制度により、「うっかり触れた」だけで借金を相続したことになるケースも珍しくありません。

特に、財産の全体像が見えないうちは、手を出す前に一度立ち止まって考えましょう。

相続税の専門院

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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