こんにちは。富士市・富士宮市の相続・税務専門、飯野明宏税理士事務所です。
JA共済が提供する「建物更生共済(通称:建更)」は、火災だけでなく、台風や地震などの自然災害による建物・家財の損害にも対応できる保障制度です。一般の火災保険と異なり、掛金の一部が積立型となっており、満期には共済金が支払われ、途中で解約した場合も解約返戻金を受け取ることができます。
この「積立部分がある」点が、相続税における課税対象になるかどうかの分岐点となります。
1 建物更生共済の相続税上の基本的な取扱い
契約者が死亡した場合、その共済契約に関する権利は「相続財産」として相続税の対象になります。評価方法は、死亡時点において契約を解約したと仮定した「解約返戻金相当額」です。
申告に際しては、JA共済に「共済契約解約返戻金相当額等証明書」の発行を依頼し、相続税申告書に添付する必要があります。
なお、建物更生共済の共済掛金は「損金算入」や「必要経費」として処理されることが多いため、相続税評価額と実際の負担額に差が生じる場合があります。また、共済期間中に火災等の事故により共済金を受け取っていた場合は、その分を考慮した評価が必要となります。
【設定】
・20年間で総掛金800万円を支払い
・相続時の解約返戻金相当額:600万円
【実際の負担額の計算】
・総掛金800万円のうち、毎年40万円ずつ経費計上
・法人税率30%とすると:40万円 × 30% = 12万円の節税効果/年
・20年間の節税総額:12万円 × 20年 = 240万円
・実質負担額:800万円 – 240万円 = 560万円
【相続税での扱い】
・相続財産として計上される金額:600万円(解約返戻金相当額)
・実質負担額560万円 < 相続税評価額600万円
2 ケース別の相続税課税の可否
● パターン①:契約者=掛金負担者=建物所有者(すべて被相続人)
⇒ 相続財産となり、解約返戻金相当額が課税対象。
● パターン②:契約者=掛金負担者(相続人)、建物所有者=被相続人
⇒ 相続財産には含まれません。契約・掛金ともに相続人負担のため。
● パターン③:契約者=掛金負担者=被相続人、建物所有者=相続人
⇒ 相続財産に含まれます。契約者が被相続人であるため、解約返戻金相当額が対象。
● パターン④:契約者・建物所有者=相続人、掛金負担者=被相続人
⇒ 原則:贈与税の扱いとして、生前3年以内の掛金分を相続財産に加算。
● パターン⑤:複数の相続人が共同で契約・掛金負担している場合
⇒ 各相続人の負担割合に応じて按分計算。被相続人が負担した割合分のみが相続財産となります。
● パターン⑥:法人が契約者で、個人(被相続人)が実質的な受益者の場合
⇒ 実質的な受益関係を精査し、個人に帰属する経済的利益があれば相続財産として評価が必要です。
3 満期共済金・解約返戻金を受け取った場合の所得税課税
契約者本人が満期まで契約を維持し、満期共済金を受け取った場合、または中途解約で解約返戻金を受け取った場合は「一時所得」として所得税の課税対象になります。
計算式: 一時所得 = (受取額 - 積立掛金の合計 - 特別控除額50万円)÷2
※所得税が課税されます。
4 まとめ:申告上の注意点
必要書類の準備
相続税申告では以下の書類が必要となります:
– 共済契約解約返戻金相当額等証明書
– 共済契約証書の写し
– 掛金の支払履歴(掛金負担者の確認のため)
– 建物の登記事項証明書
申告漏れの注意点
建物更生共済は一般的な生命保険契約とは異なり、税務署での把握が困難な場合があります。そのため、申告漏れによる加算税等のペナルティを避けるため、契約の存在を正確に把握し、適切に申告することが重要です。
評価額の算定時期
相続開始時点での解約返戻金相当額が評価額となりますが、共済契約の内容や約款によって計算方法が異なる場合があるため、JA共済への照会を早めに行うことをお勧めします。
建物更生共済は積立機能があるため、保険契約とは異なる税務上の取扱いが求められます。契約形態によっては、相続財産として計上する必要があり、贈与税や所得税の検討も必要です。
少しでも不明点がある場合は、相続税に詳しい税理士へご相談されることをおすすめします。
富士市・富士宮市での相続税申告に関するご相談は、飯野明宏税理士事務所へお気軽にご連絡ください。