家庭用財産(家財一式)の相続税評価
こんにちは。富士市・富士宮市の相続専門税理士、飯野明宏です。
相続税申告というと、不動産や預金、有価証券といった“目立つ財産”に目が向きがちですが、ご自宅にある家具や家電などの家財道具=「家庭用財産」も立派な課税対象です。
「使わないから」「価値がなさそうだから」といって申告しなかった場合、税務署から「財産隠し」とみなされるリスクもあります。
本記事では、相続税の対象となる家庭用財産の評価方法について、実務ベースで丁寧に解説していきます。
第1章|家庭用財産も相続税の課税対象です
相続税の課税対象には、現金・不動産・株式・保険金といった明らかな資産だけでなく、自宅にある生活用品も含まれます。具体的には、以下のようなものが該当します。
家具(ソファ・タンス・机など)
家電(テレビ・冷蔵庫・洗濯機など)
衣類・装飾品(着物・バッグ・腕時計など)
自動車
貴金属(指輪・ネックレス・金地金)
書画骨董(掛け軸・壺など)
電話加入権
これらはすべて「一般動産」として分類され、原則として評価額に応じて相続税が課されることになります。
第2章|家庭用財産の評価単位と評価基準
■ 評価単位は「1個または1組」が原則
相続税の評価では、家具や家電などは1個または1組ごとに評価するのが基本です(財産評価基本通達128)。
ただし、価額が1個あたり5万円以下の動産については、「家財一式」として一括評価することが認められています。
■ 評価方法は次の2段階方式
原則評価:売買実例価額または精通者意見価格(中古売却価格・専門家の査定)
例外評価:新品の価格から減価償却費を控除して計算
第3章|財産の種類ごとの評価ポイント
◎ 家具類(タンス・ベッド・机 など)
減価償却により価値が大きく下がるため、多くは「家財一式」にまとめて申告可能。
ただし、アンティークや高額家具は個別評価が必要です。
◎ 家電製品(テレビ・パソコン・冷蔵庫 など)
購入価格が10万円超または中古市場で5万円超のものは個別計上。
高性能テレビやカメラ、パソコンは査定要。
主な耐用年数:
テレビ・カメラ:5年
エアコン:6年
冷蔵庫:4年
◎ 衣類・装飾品(着物・バッグ・時計 など)
ブランド物や宝石付きの高級品は中古市場での価格を調査し、個別に評価。
プレタポルテやユニクロ製品などは家財一式へ。
◎ 自動車
中古市場の査定額を基に評価。
インターネットの無料査定を活用可能。
耐用年数:普通車6年/軽自動車4年
◎ 貴金属・宝石
専門業者の査定価格、またはネット買取価格などを参照。
複数ある場合は「貴金属一式」としてまとめて計上も可能。
◎ 書画・骨董
美術商や鑑定士の意見を反映した評価が基本。
特にコレクターだった被相続人の場合は、専門家査定が推奨。
◎ 電話加入権
令和3年以降は「家財一式」に含めて申告。
かつては1,500円で評価されていましたが、現在は個別評価不要。
※仏壇や位牌などは非課税財産として相続税申告の対象外です。
第4章|申告書への記載方法
● 家財一式としてまとめて申告する場合
記載項目 | 内容例 |
---|---|
種類 | 家庭用財産 |
細目 | 家財一式 |
所在地 | 自宅の住所 |
評価額 | 例:30万円(状況に応じて10〜50万円程度が多い) |
● 個別評価が必要な場合
種類:その他の財産
細目:家具(ソファ〇〇、テレビ〇〇 等)
評価額:査定価格 or 減価償却後の残額
まとめ|家庭用財産も立派な「相続財産」です
家庭用財産は「価値がなさそう」と思われがちですが、相続税の対象であり、申告漏れがあると税務署から指摘される可能性もあります。
5万円以下の家財はまとめて申告可能
5万円超の動産は個別に評価
家財の評価は精通者意見・減価償却・査定額で判断
万が一、価値あるものをうっかり見落としてしまうと、加算税や延滞税が発生する可能性もあるため、慎重な対応が必要です。