家庭用財産(家財一式)の相続税評価

2025年5月15日 管理人

家庭用財産(家財一式)の相続税評価

こんにちは。富士市・富士宮市の相続専門税理士、飯野明宏です。
相続税申告というと、不動産や預金、有価証券といった“目立つ財産”に目が向きがちですが、ご自宅にある家具や家電などの家財道具=「家庭用財産」も立派な課税対象です。

「使わないから」「価値がなさそうだから」といって申告しなかった場合、税務署から「財産隠し」とみなされるリスクもあります。
本記事では、相続税の対象となる家庭用財産の評価方法について、実務ベースで丁寧に解説していきます。


第1章|家庭用財産も相続税の課税対象です

相続税の課税対象には、現金・不動産・株式・保険金といった明らかな資産だけでなく、自宅にある生活用品も含まれます。具体的には、以下のようなものが該当します。

  • 家具(ソファ・タンス・机など)

  • 家電(テレビ・冷蔵庫・洗濯機など)

  • 衣類・装飾品(着物・バッグ・腕時計など)

  • 自動車

  • 貴金属(指輪・ネックレス・金地金)

  • 書画骨董(掛け軸・壺など)

  • 電話加入権

これらはすべて「一般動産」として分類され、原則として評価額に応じて相続税が課されることになります。


第2章|家庭用財産の評価単位と評価基準

■ 評価単位は「1個または1組」が原則

相続税の評価では、家具や家電などは1個または1組ごとに評価するのが基本です(財産評価基本通達128)。

ただし、価額が1個あたり5万円以下の動産については、「家財一式」として一括評価することが認められています。

■ 評価方法は次の2段階方式

  1. 原則評価:売買実例価額または精通者意見価格(中古売却価格・専門家の査定)

  2. 例外評価:新品の価格から減価償却費を控除して計算


第3章|財産の種類ごとの評価ポイント

◎ 家具類(タンス・ベッド・机 など)

  • 減価償却により価値が大きく下がるため、多くは「家財一式」にまとめて申告可能。

  • ただし、アンティークや高額家具は個別評価が必要です。

◎ 家電製品(テレビ・パソコン・冷蔵庫 など)

  • 購入価格が10万円超または中古市場で5万円超のものは個別計上

  • 高性能テレビやカメラ、パソコンは査定要。

主な耐用年数:

  • テレビ・カメラ:5年

  • エアコン:6年

  • 冷蔵庫:4年

◎ 衣類・装飾品(着物・バッグ・時計 など)

  • ブランド物や宝石付きの高級品は中古市場での価格を調査し、個別に評価

  • プレタポルテやユニクロ製品などは家財一式へ。

◎ 自動車

  • 中古市場の査定額を基に評価。

  • インターネットの無料査定を活用可能。

  • 耐用年数:普通車6年/軽自動車4年

◎ 貴金属・宝石

  • 専門業者の査定価格、またはネット買取価格などを参照。

  • 複数ある場合は「貴金属一式」としてまとめて計上も可能。

◎ 書画・骨董

  • 美術商や鑑定士の意見を反映した評価が基本。

  • 特にコレクターだった被相続人の場合は、専門家査定が推奨

◎ 電話加入権

  • 令和3年以降は「家財一式」に含めて申告。

  • かつては1,500円で評価されていましたが、現在は個別評価不要。

※仏壇や位牌などは非課税財産として相続税申告の対象外です。


第4章|申告書への記載方法

● 家財一式としてまとめて申告する場合

記載項目内容例
種類家庭用財産
細目家財一式
所在地自宅の住所
評価額例:30万円(状況に応じて10〜50万円程度が多い)

● 個別評価が必要な場合

  • 種類:その他の財産

  • 細目:家具(ソファ〇〇、テレビ〇〇 等)

  • 評価額:査定価格 or 減価償却後の残額


まとめ|家庭用財産も立派な「相続財産」です

家庭用財産は「価値がなさそう」と思われがちですが、相続税の対象であり、申告漏れがあると税務署から指摘される可能性もあります。

  • 5万円以下の家財はまとめて申告可能

  • 5万円超の動産は個別に評価

  • 家財の評価は精通者意見・減価償却・査定額で判断

万が一、価値あるものをうっかり見落としてしまうと、加算税や延滞税が発生する可能性もあるため、慎重な対応が必要です。

相続税の専門院

お問合せ

飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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