事業承継の第一歩|自社を「見える化」する重要性と方法

2025年5月14日 管理人

事業承継の第一歩|自社を「見える化」する重要性と方法

―ガイドラインに基づく現状把握の実践ポイント―


はじめに|事業承継は「見える化」から始まる

事業承継を成功させるためには、まず何よりも自社の現状を正確に把握すること=見える化が不可欠です。
これは「ガイドラインにおけるステップ2」にあたり、承継の基礎となる重要なプロセスです。

自社を見える化する目的は、経営者自身が現状を理解するだけでなく、後継者や関係者に情報を開示し、共通認識を形成することにもあります。情報の開示は正直かつ標準化されている必要があり、信頼のもとで承継が進む土壌を作ります。


第1章|なぜ「見える化」が事業承継に必要なのか?

事業承継は、多くの「見えにくい問題」を含んでいます。

  • 財務や資産の全体像が不明確

  • 経営資源の強み・弱みが曖昧

  • 後継者候補や関係者との認識のずれ

こうした曖昧さを解消し、“共通の土台”の上で承継プロセスを進めることが「見える化」の狙いです。


第2章|見える化①:会社の経営状況を可視化する

まず取り組むべきは、経営状況の見える化です。ここでは財務、事業、経営資源の3つの視点から整理していきます。

2-1. 財務状況の把握

  • 経営者個人と会社の関係(不動産の名義・借入・連帯保証など)

  • 決算の適正性

  • 株式数の確認と株価評価

これらを明確にしておくことで、相続税や贈与税の試算、株式の移転手続きにも備えることができます。

2-2. 事業状況の分析

  • 部門別の損益構造

  • 製造・販売プロセスの工程分析

  • 在庫の評価と棚卸精度の見直し

こうした分析により、自社の「稼ぎ頭」と課題を明確にし、今後の経営改善=磨き上げの方向性が見えてきます。

2-3. 経営資源の棚卸し(知的資産を含む)

  • 財務諸表に表れない資産(ブランド力、社員のスキル、顧客ネットワークなど)

  • ツール活用例:

    • 「事業価値を高める経営レポート」

    • 「知的資産経営報告書」

    • 「経営デザインシート」

特に、なぜ自社が選ばれているのか?という視点から、自社の「価値の源泉」を明確にすることが重要です。


第3章|見える化②:事業承継固有の課題を明らかにする

事業承継には、経営そのものとは別に独自の課題が存在します。

3-1. 後継者の検討

  • 候補者の有無・意思・能力・適性・年齢

  • 意欲やリーダーシップの有無

候補がいない場合には、社内外の人材探索やM&Aの検討が必要です。

3-2. 関係者の理解・合意の可能性

  • 親族内の株主、従業員、取引先などからの異論可能性

  • トラブル回避のためのコミュニケーションと合意形成

3-3. 相続課題の整理(親族内承継の場合)

  • 相続財産の棚卸し

  • 相続税額の試算

  • 納税資金の準備や納税方法の検討

これらの課題を初期段階で見える化しておくことで、後のトラブルを未然に防ぐことができます。


まとめ|見える化は事業承継の土台

事業承継を“単なる社長交代”で終わらせないためには、企業の価値を可視化し、関係者と共有することが何より重要です。

  • 経営状況・資産状況を客観的に把握する

  • 後継者や関係者に対して誠実に情報を開示する

  • 課題やリスクを明確にして、対策に着手する

この「見える化」こそが、次のステップである「磨き上げ」や「事業承継計画の策定」の実効性を高める起点となります。

相続税の専門院

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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