相続した不動産を売却する前に知っておきたい!「取得費加算の特例」で税負担を軽減

2025年5月14日 管理人

相続した不動産を売却する前に知っておきたい!「取得費加算の特例」で税負担を軽減

こんにちは。富士市・富士宮市で相続に強い税理士の飯野明宏です。
相続によって取得した不動産を売却する際に、「思ったより税金がかかる」と驚かれる方も少なくありません。そんなときに知っておきたいのが「取得費加算の特例」です。

今回は、この特例の概要から具体的な適用要件、注意点まで、丁寧に解説します。


第1章|取得費加算の特例とは?

取得費加算の特例とは、相続や遺贈によって取得した不動産等を相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却した場合に、納めた相続税の一部を譲渡所得の「取得費」に加算できる制度です。

これにより、譲渡所得が圧縮され、結果として所得税・住民税の税額が軽減される効果が期待できます。

▷ 通常の譲渡所得の計算式

譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)

この「取得費」の金額に、相続税の一部を加算できるのが本特例のメリットです。


第2章|特例を受けるための3つの要件

この特例を受けるためには、次のすべてを満たす必要があります。

要件① 相続または遺贈によって財産を取得していること

法定相続分でも遺言による取得でも対象です。相続人以外でも遺贈を受けた人は該当する可能性があります。

要件② 相続税を実際に納税していること

相続税を納めていない(=基礎控除内や配偶者の税額軽減で非課税だった)場合は対象外です。

要件③ 相続開始から3年10ヶ月以内に譲渡していること

この期限を1日でも過ぎると、特例は使えません。


第3章|加算できる相続税額の計算方法(概要)

取得費に加算できる相続税の金額は、以下のように計算します:

取得費加算額 = 相続税 × 譲渡した財産の評価額 ÷ 相続財産の合計評価額(+債務控除)

※ただし、譲渡益を上回る相続税額は加算できません。

たとえば、土地・建物を相続し、両方を売却する場合、それぞれに対応する相続税を按分して算出します。


第4章|特例活用時の注意点

✔ 売却期限に要注意

売却準備に時間がかかるケースが多いため、「3年10ヶ月以内」という期限を見落とさないようにしましょう。

✔ 遺産分割は早めに

遺産分割が遅れると、売却スケジュールにも影響が出てしまいます。相続税の申告期限(10ヶ月)までの分割完了が理想です。

✔ 確定申告が必要

たとえ税金が0円でも、特例を受けるには確定申告が必須です。必要書類には「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」などが含まれます


第5章|併用できる特例・できない特例

特例名取得費加算との併用可否解説
マイホームの買換え特例譲渡益の課税を繰延べ
自宅3,000万円控除自宅を売却した場合の特別控除
空き家3,000万円控除×空き家特例と取得費加算は併用不可

空き家の売却かつ相続税の納税がある場合は、どちらの特例が有利かシミュレーションが必要です。


第6章|特例が使えない代表的なケース

以下の場合は、特例を使うことができません:

  • 配偶者の税額軽減で相続税が非課税だった

  • 譲渡所得ではなく、事業所得などで申告する場合

  • 法人が財産を取得して譲渡した場合


第7章|まとめ:早めの準備と専門家のサポートがカギ

取得費加算の特例は、相続税と譲渡所得税の“二重課税”の負担を軽減するための重要な制度です。適用期限内に売却を進めるためには、早めのスケジュール管理と遺産分割の合意が不可欠です。

また、他の特例との併用や最適な節税手法の選択には、税法に精通した専門家の判断が必要不可欠です。
不動産を相続して売却をご検討中の方は、ぜひ一度ご相談ください。

コラム最下署名

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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