「相次相続控除」|相続が立て続けに起きたとき、相続税が軽減される?

2025年5月9日 管理人

1 「相次相続控除」とは?

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)とは、ある相続が起きたあと、10年以内に再度相続が発生した場合、2回目の相続税の負担を軽減できる制度です。

たとえば、父が亡くなり母がその遺産を相続し、数年後に母も亡くなって子が相続した場合、父の相続税を母が支払っていたとしても、母の死亡により同じ財産に再度課税されてしまいます。これを「二重課税」としないために、相次相続控除が設けられているのです。

相次相続 (2)

2 控除を適用するための3つの要件

相次相続控除を受けるには、以下の3つすべてを満たす必要があります:

  • ■法定相続人であること
  • ■過去10年以内に、被相続人が別の相続で財産を取得していること
  • ■その相続で被相続人に相続税が課税されていたこと

ポイント解説

  • ■遺言で財産を受け取っただけの友人や知人には適用不可
  • ■代襲相続人(たとえば孫)が法定相続人であれば対象になる
  • ■配偶者控除などにより1次相続で相続税が0円だった場合は適用できない

3 控除額の計算方法

控除額の算定はやや複雑ですが、概ね以下のポイントを押さえれば理解できます。

控除率は「経過年数」で決まる

償却資産における経過年数ごとの控除率
経過年数控除率
1年未満100%
2年未満90%
3年未満80%
4年未満70%
5年未満60%
6年未満50%
7年未満40%
8年未満30%
9年未満20%
10年未満10%
10年以上適用不可

計算式の概要(実務向け)

相次相続控除は、前回の相続において課税された相続税額のうち、1年につき10パーセントの割合で逓減した後の金額を今回の相続に係る相続税額から控除するものです。

簡単な計算例

例:父→母→子への相続ケース
– 父が死亡(1次相続):母が5,000万円を相続、相続税500万円を納税
– 3年後に母が死亡(2次相続):子が母の全財産8,000万円を相続

相次相続控除額の概算:
前回納税した相続税500万円 × 70%(3年経過の控除率)= 350万円

つまり、子の相続税から350万円を控除できます。

より詳しい計算が必要な場合の正式な計算式

各相続人の相次相続控除額は、次の算式により計算した金額です。

A×C(B‐A)[求めた割合が100/100を超えるときは、100/100とする]×D/C×(10-E)/10=各相続人の相次相続控除額

A:今回の被相続人が前の相続の際に課せられた相続税額

この相続税額は、相続時精算課税分の贈与税額控除後の金額をいい、その被相続人が納税猶予の適用を受けていた場合の免除された相続税額ならびに延滞税、利子税および加算税の額は含まれません。

B:今回の被相続人が前の相続の際に取得した純資産価額(取得財産の価額+相続時精算課税の適用を受ける財産(「相続時精算課税適用財産」といいます。)の価額(注)-債務および葬式費用の金額(以下、同じです。))

C:今回の相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得したすべての人の純資産価額の合計額

D:今回のその相続人の純資産価額

E:前の相続から今回の相続までの期間(1年未満の期間は切捨てます。)

(出典:国税庁)
情報元: 国税庁 相次相続控除

4 具体的に活用できるケースとは?

以下のような状況では、相次相続控除の適用を検討しましょう。

  • 配偶者の死亡後、数年以内に子が相続する場合

  • 兄弟姉妹間で短期間に続けて相続が発生した場合

  • 遺産分割が未了だが法定相続分で仮申告する場合

控除効果の大きいケース

最も効果が大きいのは:
– 1次相続で高額な相続税を納税した場合
– 2次相続が短期間(1-3年以内)で発生した場合
– 相続財産の大部分が現金・預金の場合

実際の節税効果例:
– 1次相続税1,000万円 → 2年後の相続なら800万円控除
– 1次相続税500万円 → 5年後の相続なら250万円控除
– 1次相続税300万円 → 8年後の相続なら60万円控除

5 控除を受けるための手続きと必要書類

申告期限は相続開始から10ヶ月以内です。その際、以下の書類を揃える必要があります。

  • 相続税申告書第7表(控除額の計算書)

  • 一次相続の相続税申告書控え(第1表、第11表、第15表など)

過去に申告を忘れていた場合

  • ■5年以内であれば「更正の請求」が可能です

6 控除を適用する際の注意点

  • 控除額は「法定相続人の取得割合」で自動的に按分され、任意での分配は不可

  • 遺言による遺贈者や友人は適用対象外

  • 控除額は経過年数に応じて確実に減少する

よくある見落としポイント

申告漏れを防ぐために:
– 1次相続の申告書控えは必ず保管する
– 配偶者控除で1次相続税が0円だった場合は適用不可
– 養子縁組による法定相続人の増加も影響する

税理士に相談すべきタイミング:
– 1次相続から5年以内に2次相続が発生した場合
– 1次相続税が500万円以上だった場合
– 遺産分割が複雑で按分計算が困難な場合

まとめ 10年以内の連続した相続には専門家の確認を

相次相続控除は、短期間に続いた相続における“過重な課税”を軽減するための制度です。しかし、適用には複雑な条件や計算が伴います。相続が重なっているご家庭では、必ず専門家にご相談ください。

「うちも相次相続控除が使えるかも?」と思ったら、富士市・富士宮市で相続税を専門に扱う税理士に、ぜひ一度ご相談ください。

 

 

コラム最下署名

相続税の専門院

飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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