退職手当金が課税対象になるケースと非課税になるポイント
こんにちは、富士市の税理士・イイノです。
「退職手当金(退職金)」についてお話しします。
被相続人が勤務先から受け取るはずだった退職手当金や功労金は、相続税の課税対象になる場合があります。
例えば「父の退職金が支払われたのですが、これも相続税に含まれるんですか?」といったご質問をいただくことあります。
このコラムでは、富士市・富士宮市等で相続税申告をご検討の方に向けて、退職手当金が相続税の対象になるかどうか、またその非課税限度額や申告時の注意点について解説します。
🧾退職手当金とは?
退職手当金とは、会社などに勤務していた方が退職した際に支給されるお金で、一般的には長年の勤務に対する功労として支払われるものです。
ただし、被相続人が亡くなる前に退職金を受け取っていた場合と、亡くなった後に遺族に支払われる死亡退職金とで、税務上の取り扱いが異なります。
相続税の対象となるのは、「死亡退職金」です。
死亡退職金と相続税の関係
死亡退職金とは?
被相続人が亡くなったことにより、会社などから遺族に支払われる退職金や功労金を指します。これは、厳密には「本来は生きていればもらえたであろう退職金」を死亡により遺族が受け取るものです。
このような性質から、死亡退職金は「みなし相続財産」として、相続税の課税対象となります。
みなし相続財産とは、相続や遺贈によって取得する財産ではないものの、相続税の課税対象となる財産です。
🧮退職金にも非課税枠がある
「退職金にまで相続税がかかるのか」と不安に思われるかもしれません。
しかし、退職金には非課税限度額が設けられています。
非課税限度額の計算方法
退職金の非課税限度額は、以下の式で計算されます。
500万円 × 法定相続人の数
たとえば、法定相続人が3人いる場合、退職金のうち 1,500万円までは非課税となります。
この限度額は、死亡保険金と共通のルールです。
🧑💼退職金の非課税を活用した相続対策
具体例
ご主人を亡くされた奥様からのご相談で、会社から1,200万円の退職手当金が支払われる予定とのこと。相続人は奥様とお子様2人の計3人。
非課税限度額の適用
非課税限度額は、
500万円 × 3人 = 1,500万円
支給予定の退職金は1,200万円なので、全額が非課税となり、相続税の対象外です。
そのため、相続財産としては申告書に記載は必要ですが、相続税の計算には含まれません。
⚠️死亡退職金の申告で注意すべきポイント
会社からの支給時期に注意
死亡退職金として相続税の対象となるのは、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した退職金です。
つまり、もし会社からの支給が3年を超えて確定した場合は、原則、相続税の対象外になります。
その場合は、相続人の一時所得となります。