代償分割とは?どういう場合に登場するのか。

2025年4月16日 管理人

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

今回は、遺産の中に「不動産」が含まれる場合に、特に活用される代償分割(だいしょうぶんかつ)について、実務上のポイントや他の分割方法との違いを含めて解説します。


1 代償分割とは?相続実務での基本的な位置づけ

相続では、現金や不動産、預貯金などの財産をどう分けるかが大きな問題になります。

とくに、遺産の多くが不動産で占められているケースでは、現物での分割が困難なためトラブルの原因になりがちです。こうした状況でよく利用される方法が「代償分割」です。

代償分割の定義

代償分割とは、ある相続人が特定の財産(たとえば不動産)を取得し、他の相続人には代わりに現金などで“代償”を支払う遺産分割方法です。

現物で分けられない財産を、金銭による調整で公平に分け合う点が特徴です。

代償分割 (2)


2 代償分割が選ばれる理由とは?

代償分割は、次のような実務的な理由からよく選ばれています。

1. 不動産の共有を避けたい

富士市・富士宮市を含む地方部では、相続財産の中心が自宅などの不動産であることが多くあります。
不動産を複数人で共有すると、売却やリフォームなどの意思決定が煩雑になり、後々の紛争につながりやすくなります

代償分割を用いることで、不動産は1人が単独で取得し、他の相続人は金銭で補填されるため、スムーズな管理・処分が可能になります

2. 事業や農地を守りたい

事業用資産や農地などは、分割してしまうと経営や運用に支障をきたす場合があります。
このようなケースでは、後継者となる相続人が一括して相続し、他の相続人には代償金を支払うことで、事業承継と公平性の両立が図れます

3. 遺言がない場合の柔軟な解決策になる

遺言書がない場合、すべての財産は遺産分割協議によって決める必要があります。
代償分割を選ぶことで、現物分割や換価分割が難しい場面でも、代償金によりスムーズな合意形成が可能となります。


3 代償分割の具体例:よくある実務パターン

たとえば、以下のようなケースです。

  • 相続財産:自宅(土地・建物)2,000万円、預貯金100万円

  • 相続人:長男・長女の2名

  • 遺言:なし(平等に分けたい)

不動産を半分に物理的に分けることは現実的でないため、共有にする、売却して現金化するなどの方法も考えられます。

ここで代償分割を選択し、長男が不動産をすべて取得し、その代わりに長女へ950万円の代償金を支払うことで、法定相続分(50%)の公平を保つことが可能になります。

妹に代償分割する兄


4 他の遺産分割方法との違い

代償分割は、次のような他の分割方法と比較されることがあります。

遺産分割の主な方法と特徴・問題点
分割方法内容特徴・問題点
現物分割財産を現物で分ける預貯金など分けやすい財産には有効だが、
不動産には不向きな場合が多い
換価分割財産を売却して、代金を分ける売却価格が市場に左右されるため、
金銭的・感情的なトラブルの原因になりやすい
共有分割複数人で共有名義にする将来的な使用や売却で意思統一が難しく、
管理負担や紛争リスクが高くなる
代償分割一人が取得し、他に代償金を支払う公平性を確保できる柔軟な方法だが、
代償金の調達に課題があることも

まとめ|代償分割は「実務と公平」を両立させる相続方法

代償分割は、不動産や事業資産が中心となる相続において、法定相続分の公平性を守りつつ、実務的な運用も考慮した分割方法です。

不動産をめぐる相続争いを避けるためにも、遺産の構成に応じて最適な分割方法を検討することが大切です。

「共有にしたら後々面倒かも」「長男が住み続ける方が自然かも」といった実情をふまえ、代償分割を取り入れることで、円満な相続を実現できます。

 

コラム最下署名

相続税の専門院

飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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