相続放棄と限定承認の違いと注意点

2025年4月15日 管理人

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

今回は「相続放棄」と「限定承認」という、相続における重要な選択肢について解説します。借金の有無や財産の内容によっては、相続そのものを見直すことが必要です。この記事では、それぞれの制度の仕組みや違い、手続き、注意点についてご説明します。


1 相続とは?まずは基本を押さえよう

相続とは、亡くなった方(被相続人)の財産に関する権利や義務を、その相続人が引き継ぐことです。

財産というと現金や土地・建物といったプラスの資産を想像しがちですが、借金などのマイナスの財産も相続されてしまいます。

特に「借金の方が多い」ケースでは、安易に相続すると大きな負担になります。そのような場合に検討すべき選択肢が、「相続放棄」や「限定承認」です。


2 相続放棄とは?メリット・デメリットと注意点

相続放棄とは?

相続放棄とは、相続人が「相続しない」という意思を家庭裁判所に申し立てることによって、一切の財産(プラスもマイナスも)を放棄する制度です。

似たような言葉で、「遺産分割協議で財産を受け取らない」といったケースがありますが、法的には全く異なります。

相続放棄のメリット

  • 借金などのマイナスの財産を引き継がなくて済む
  • 手続きが比較的簡易(家庭裁判所への申立てで済む)

相続放棄のデメリット

  • プラスの財産も一切相続できない
  • 相続人でなくなるため、その後の協議に参加できない
  • 原則として一度放棄すると撤回できない

手続きの流れ

  1. 被相続人の死亡を知った日から3か月以内に申立て

  2. 家庭裁判所に申立書と必要書類を提出

  3. 裁判所からの照会書に回答

  4. 相続放棄受理通知書を受領

相続放棄限定承認


3 限定承認とは?仕組みと特徴を解説

限定承認とは?

限定承認とは、「相続で得たプラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産(借金など)を返済する」制度です。つまり、「もらった範囲内で責任を負う」という考え方です。

限定承認のメリット

  • 借金があっても、それ以上の責任は負わずに済む

  • 財産の中に価値のあるものが含まれていれば保全が可能

限定承認のデメリット

  • 相続人全員の同意が必要

  • 手続きが煩雑で時間・労力がかかる

  • 利用者が少なく、周囲の理解を得にくい場合がある

手続きの流れ

  1. 相続発生から3か月以内に相続人全員で家庭裁判所へ申立て

  2. 財産目録などを作成

  3. 限定承認の審査後、家庭裁判所から認定

  4. 清算手続き(債権者への公告、債務返済等)を実施

相続放棄 (2)


4 よくある質問(Q&A)

Q1. 相続放棄と限定承認、どちらを選ぶべき?

A1. 借金が明らかに多い場合は「相続放棄」が適しています。
一方、プラスとマイナスのどちらが大きいかわからない場合や、高額な財産が含まれている場合は「限定承認」を検討しましょう。

※限定承認を行うには、3か月以内に財産目録の作成が必要です。早めに専門家に相談することをおすすめします。

Q2. 相続放棄や限定承認は他の相続人に影響する?

A2. はい、あります。
例えば、相続放棄をすると次順位の相続人に相続権が移ります。限定承認の場合は、相続人全員で同意して行うため、他の相続人との調整が不可欠です。

Q3. 相続放棄・限定承認の3か月期限を過ぎてしまったら?

A3. 原則として適用できません。
「知らなかった」では済まされず、3か月の熟慮期間内に判断する必要があります。状況によっては例外が認められる場合もあるため、すぐに専門家へ相談しましょう。


まとめ 「相続しない」も重要な選択肢

相続というと「財産をもらうこと」が前提になりがちですが、借金やリスクのある財産を無理に受け取る必要はありません。

「相続放棄」「限定承認」という選択肢を正しく理解し、ご家族の将来に不安が残らないよう、専門家とともに早めの対策を行いましょう。

 

コラム最下署名

相続税の専門院

飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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