🏡 相続放棄と限定承認の違いと注意点
相続放棄や限定承認といった手続は、非常に稀であるものの、必要な人にとっては極めて重要な制度といえます。
相続というと、誰もが財産を受け取ることを重視しがちですが、「相続放棄」や「限定承認」という選択肢もありえます。
本記事では、富士市・富士宮市近くにお住まいで、相続にお悩みの方に向けて、相続放棄と限定承認の基本知識、手続き方法、注意点を税理士の視点からわかりやすく解説します。
📘 1. 相続とは?まずは基本を押さえよう
相続とは、亡くなった方(被相続人)の財産に対する所有権を含んだ権利と義務を、その相続人が承継することをいいます。相続財産には、現金や不動産といった「プラスの財産」だけでなく、借金等の「マイナスの財産」も含まれます。
少額の資産と、多額の借金を残して亡くなった場合、それをそのまま相続してしまうと大きな負担になります。このようなときに選択されるのが「相続放棄」や「限定承認」です。
🚫 2. 相続放棄とは?メリット・デメリットを解説
🔍 相続放棄の基本
相続放棄とは、相続人が「一切の財産を相続しない」と法的に宣言する手続きです。これにより、プラスの財産もマイナスの財産も相続しなくなります。
相続放棄とよく誤解されるものに、遺産分割において、「財産は一切いらない」という意思を示すこと、があります。法的な効果が全く異なるので注意しましょう。
✅ メリット
借金などマイナスの財産を引き継がなくて済む
手続きが比較的簡単で、家庭裁判所への申立てのみで可能
⚠️ デメリット
プラスの財産も一切受け取れない
相続人でなくなるため、後の協議等に一切参加できない
一度放棄すると撤回が原則できない
📝 手続きの流れ
被相続人の死亡を知った日から3か月以内に手続きを行う
管轄の家庭裁判所へ申立て
申立書に必要書類を添えて提出
裁判所からの照会書に回答
相続放棄受理通知書の受領
⚖️ 3. 限定承認とは?知っておきたい仕組みと特徴
🔍 限定承認の基本
限定承認とは、「相続によって得た財産の範囲内でのみ債務を返済する」ことを前提に相続を受ける方法です。簡単に言えば、「もらった分の中で払える範囲だけ責任を負う」という制度です。
✅ メリット
借金があっても、プラスの財産の範囲内で返済すればよく、それ以上の責任は負わない
⚠️ デメリット
相続人全員での同意が必要
手続きが複雑で、時間と手間がかかる
相続放棄に比べて利用者が少ないため、金融機関等の利害関係者等から理解されにくいケースもある
📝 手続きの流れ
相続発生後、3か月以内に限定承認の申立てを家庭裁判所に行う
相続人全員が共同で申立てをする必要あり
限定承認が認められると、相続財産を使って債務を精算する「清算手続き」が開始される
債権者に対して公告(官報)を行い、債務の整理を進める
❓ 4. よくある質問(Q&A)
Q1. 相続放棄と限定承認、どちらを選べばいい?
A1. 借金の額が明確で、明らかにマイナスが多い場合は相続放棄がおすすめです。
一方、財産や債務の内容が不明確で、価値のある資産が残っている可能性があるなら、限定承認を検討しましょう。
限定承認を利用する場合は、3か月という期限があり、それまでに財産目録を作成しなければならないため、専門家を交えて、早めに検討に入りましょう。
Q2. 相続放棄や限定承認をすると、他の相続人に影響はある?
A2. あります。たとえば、第一順位の相続人が相続放棄をすると、第二順位の相続人に権利が移ります。限定承認の場合は相続人全員での同意が必要なため、関係者との連携が重要になります。
Q3. 相続放棄・限定承認を知らずに3か月が経過してしまったのですが、まだ適用できますか?
A3. 適用できません。相続放棄も限定承認も、「知らなかった」「期限を過ぎてしまった」では済まされない重大な選択です。特に3か月という期限内に判断・行動をしなければならないことに注意してください。