【中小企業・個人事業主向け】少額減価償却資産の3つの特例を活用しよう

2025年5月23日
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2025年5月23日 管理人

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

事業で使用するパソコンや什器などの資産を購入した際、一定額以上であれば通常は「減価償却」によって数年かけて経費化します。しかし、取得価額が比較的少額の固定資産については、購入した年に全額を経費にできる特例制度が用意されています。

本記事では、中小企業や個人事業主が活用できる3つの少額減価償却資産の特例について、それぞれの制度概要、適用条件、メリット・デメリットを解説します。


1 10万円未満の少額減価償却資産:誰でも使える基本の特例

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制度の概要

取得価額が10万円未満の資産は、購入年度に全額を即時に経費計上できます。

特徴

10万円未満の少額減価償却資産の税務上の取扱い

項目内容
対象者中小企業・大企業問わずすべての事業者
経理処理消耗品費または減価償却費で処理
年間限度額なし(件数制限なし)
添付書類申告書等への添付不要
償却資産税非課税(固定資産税の対象外)
貸付資産原則除外(ただし、事業の主要目的に供する場合は対象)

2 30万円未満の特例:中小企業向けの強力な即時償却制度

u8922936522_Japanese_businessman_receiving_small_office_equip_2623e4f9-297b-4fec-a13a-d94e112fd6cd_3制度の概要

30万円未満(※)の資産は、購入した年度に全額を損金算入できます。中小企業支援のための制度です。

※30万円未満という金額に消費税が含まれるかどうかは、経理処理の方法によって変わります。

特徴

少額減価償却資産の特例(30万円未満)の取扱い
項目内容
対象者青色申告をしている中小企業者・個人事業主
(資本金1億円以下などの要件あり)
年間限度額300万円(12ヶ月の事業年度基準)
※期首取得・合計で判定
添付書類
  • 法人:別表十六(七)への記載
  • 個人:青色決算書の備考欄 等に記載
償却資産税課税対象(固定資産税として申告必要)
貸付資産原則除外
ただし、事業の主たる目的で使用するリース資産等は例外

ポイント

  • ■即時償却により、利益が出ている年度の節税に有効

  • ■年間限度超過分は減価償却で処理が必要


3 20万円未満の一括償却資産:費用を3年間で分割

制度の概要

20万円未満の資産をまとめて取得し、3年間で均等償却する制度です。全額を初年度に落とす必要はなく、費用を分散できます。

特徴

一括償却資産の税務上の取扱い(10万円以上20万円未満)

項目内容
対象者すべての法人・個人事業主が対象(中小企業に限られない)
償却方法取得価額 ×(事業年度の月数 ÷ 36) を毎年償却(3年均等償却)
添付書類法人税申告書別表十六(八)などへの記載が必要
償却資産税非課税(固定資産税の対象外)
貸付資産原則除外(例外なく対象外)

ポイント

  • ■個別管理不要、資産を合計して一括処理

  • ■償却資産税回避を重視する場合に有利


4 中小企業が選ぶべき特例はこれ!

取得価額ごとに最適な選択肢を選ぶことで、節税効果を最大化できます。

取得価額ごとのおすすめ減価償却特例と選定理由

取得価額おすすめの特例主な理由
10万円未満10万円未満の即時償却制限なし・書類不要・その年に全額費用化が可能
10万~20万円未満状況に応じて選択利益があるなら30万円未満特例
赤字なら一括償却資産による分散処理が有利
20万~30万円未満30万円未満の特例中小企業限定/年間300万円まで即時償却が可能で節税効果大

5 制度選択の注意点と申告の実務

  • ■特例の要件を満たさないと税務調査で否認リスク

  • ■貸付資産の扱いや消費税の計算方法に注意

  • 正確な台帳管理・申告書添付が必須

  • ■繰越欠損金がある場合は即時償却の節税効果が薄れる可能性も


6 まとめ 少額資産の特例を使いこなしてスマートに節税!

少額減価償却資産に関する3つの特例比較
特例上限対象償却方法償却資産税
10万円未満無制限すべての事業者即時償却非課税
30万円未満の特例年300万円中小企業者等(青色申告)即時償却課税
一括償却資産制限なしすべての事業者3年均等償却非課税

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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