【遺留分とは?】遺言があっても相続できる最低限の権利と「放棄」の注意点

2025年5月18日 管理人

【遺留分とは?】遺言があっても相続できる最低限の権利と「放棄」の注意点

こんにちは。富士市・富士宮市の飯野明宏税理士事務所です。

被相続人が自由に財産を遺せるとはいえ、相続人には生活保障の観点から「最低限の取り分」が法律で保障されています。
それが「遺留分(いりゅうぶん)」という制度です。

本記事では、遺留分の基本から放棄の方法、家庭裁判所の許可、相続税や負債のリスク、未成年の扱いまでを徹底解説いたします。


第1章|遺留分とは?〜法定相続人に認められた最低限の取り分

遺留分とは、**被相続人の財産のうち、一定の相続人に法律で保障された「最低限の相続分」**のことです。

たとえ遺言で「財産はすべて他人に渡す」と記されていても、以下の相続人は一定割合を請求する権利があります:

  • 配偶者
  • 子(または代襲相続人)
  • 直系尊属(父母など)

ただし、兄弟姉妹には遺留分は認められていません。


第2章|遺留分の割合はどれくらい?

相続人の構成により、遺留分の割合は次のように異なります。

相続人の構成と遺留分の割合
相続人の構成遺留分の割合
配偶者・子がいる場合法定相続分の 1/2
配偶者のみ・親のみなど直系尊属だけ法定相続分の 1/3
兄弟姉妹のみ遺留分なし

第3章|遺留分を主張するには?|遺留分侵害額請求権

以前は「遺留分減殺請求権」と呼ばれていましたが、現在は遺留分侵害額請求権とされています。

この権利は、

  • 相続の開始および侵害を知った日から1年
  • 相続開始から10年

のいずれか早い方までに行使しなければ、時効により消滅します。


第4章|遺留分の放棄とは?|相続放棄とは別の制度

「遺留分放棄」とは、遺留分のみを請求しないことを明確にする手続きです。

これは「相続放棄(遺産全体の放棄)」とは別制度で、次の点に注意が必要です。

遺留分放棄と相続放棄の違い
項目遺留分放棄相続放棄
放棄対象遺留分のみ遺産全体
タイミング生前 or 死後相続開始後のみ
手続き生前放棄は家庭裁判所の許可が必要
死後放棄は意思表示のみで可
相続開始後3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述
借金相続の扱い放棄しても借金相続の可能性あり(相続権は残るため)一切相続せず、借金も引き継がない

 


第5章|生前に遺留分を放棄する方法と要件

被相続人が生きている間に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です。
これは、無理な強要や不当な誘導を防ぐためです。

✅ 手続きの流れ

  1. 遺留分権利者が申立て(家庭裁判所)

  2. 必要書類:申立書・戸籍謄本など

  3. 家庭裁判所が審査(放棄の理由・代償の有無など)

  4. 許可されると「許可審判書」が送付

※許可には合理性が必要で、必ず通るとは限りません。


第6章|相続開始後の遺留分放棄とその注意点

被相続人の死亡後(相続開始後)に遺留分を放棄する場合は、家庭裁判所の許可は不要です。

  • 放棄する人が、請求先に対し意思表示すれば成立

  • 口頭でも可能だが、念書などの書面作成が推奨されます

ただし、書面があっても一律に法的効力があるとは限らず、争いの可能性もあるため、慎重に行う必要があります。


第7章|遺留分放棄のメリット・デメリット

メリット

  • 紛争の予防に役立つ
  • 相続関係の整理がしやすくなる
  • 相続開始後の放棄は手続きが簡便

デメリット

  • 生前の放棄は家庭裁判所の判断が必要で見通しが立ちにくい
  • 一度許可された放棄は原則として簡単には撤回できない
  • 放棄すると最低限の取り分も失うため、「代償」がないと損になる可能性がある

第8章|放棄を検討する際のチェックポイント

  • なぜ放棄してほしいのか、理由に納得できるか

  • 放棄の見返り(代償)はあるか、証拠として残せるか

  • 感情的な判断ではないか

  • 未成年者が放棄する場合は特別代理人の選任が必要か


第9章|相続税や負債との関係にも注意

遺留分を放棄しても、法定相続分による相続権は残ります
そのため、以下の点に注意が必要です:

  • 相続財産に負債があると、借金も引き継ぐリスク

  • 借金を放棄したい場合は、別途「相続放棄」が必要

  • 相続放棄の期限は相続開始を知った日から3ヶ月以内

相続税の専門院

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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