【特別縁故者】相続人がいない場合の遺産は誰のもの?
こんにちは。富士市・富士宮市の相続・税務専門、飯野明宏税理士事務所です。
相続人がいない場合でも、故人と特別な関係があった方が遺産を受け取れる可能性がある「特別縁故者制度」。しかし、その制度には通常の相続とは異なる数多くの手続きや税務上の注意点があります。
今回は、特別縁故者として遺産を受け取るための条件や手続き、相続税の計算方法や注意点まで、専門家の視点で分かりやすくご紹介します。
📚 目次
第1章|特別縁故者とは?~相続人がいない場合の救済制度~
特別縁故者とは、法定相続人がいない場合に、家庭裁判所の審判を経て遺産を受け取る可能性がある人物のことです。
1-1. 特別縁故者の定義と位置づけ
特別縁故者とは、故人と特別な関係性がある個人または法人を指します。具体的には:
被相続人と生計を同じくしていた者
療養看護に努めた者
その他特別の縁故があった者
1-2. 法人が認められるケース
公益法人や介護施設などが、被相続人と深い関係を持っていた場合にも認定されることがあります。
1-3. 特別寄与者との違い
「特別寄与者」は相続人がいる場合の制度であり、特別縁故者とは異なります。
第2章|特別縁故者が遺産を受け取るまでの5ステップ
特別縁故者として認められ、実際に財産を取得するまでには、家庭裁判所での複雑な手続きが必要です。
リンク 家庭裁判所「「相続財産管理人選任」の手続とは・・・ 」
2-1. 相続財産管理人選任の申立
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。
2-2. 相続財産管理人の選任と公告(2ヶ月)
家庭裁判所が管理人を選任し、官報で公告を行います。
2-3. 債権者・受遺者への公告(2ヶ月以上)
債権者や受遺者がいれば、管理人が清算を行います。
2-4. 相続人捜索の公告(6ヶ月以上)
法定相続人がいないことが確定するまで、追加の公告が実施されます。
2-5. 特別縁故者への財産分与の申立(3ヶ月以内)
相続人不存在確定後、家庭裁判所に申立てを行い、認められれば財産の分与が決定されます。
第3章|特別縁故者が負担する相続税とは?
特別縁故者も財産を取得した場合は「相続税」がかかりますが、通常の相続とは異なるポイントが多数あります。
3-1. 基礎控除額は3,000万円のみ
法定相続人がいないため、人数に応じた加算はありません。
3-2. 2割加算の適用
配偶者や直系血族でないため、税額が1.2倍になります。
3-3. 申告期限と評価基準日の違い
申告期限:分与を知った日から10ヶ月以内
評価基準日:審判確定日(通常、相続税の評価基準日は被相続人の死亡を知った日ですが、特別縁故者は被相続人の死亡直後に法定相続人として認められているわけではなく、家庭裁判所の審判で初めて分与が確定するため、評価基準日は審判確定日となっています。)
適用法令:被相続人の死亡日時点のもの
3-4. 適用できない控除・特例
小規模宅地、配偶者の税額軽減、相次相続控除などは一切使えません。
3-5. 不動産取得税・登録免許税も課税
不動産を取得した場合、法定相続人でないため税負担が増加します。
第4章|相続税の計算方法と具体例
4-1. 計算式の基本
4-2. 税率と速算表
課税遺産総額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | 0円 |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
4-3. 計算例:5,000万円の財産を取得した場合
課税遺産:5,000万円 − 3,000万円 = 2,000万円
税額(2割加算前):2,000万円×15% − 50万円 = 250万円
最終税額:250万円×1.2=300万円
第5章|まとめ:特別縁故者制度は“特別”だからこそ要注意!
法定相続人がいないとき、特別縁故者として遺産を受け取れる可能性あり
財産を取得するには家庭裁判所での厳格な手続きが必要
相続税は2割加算、特例・控除の多くは適用不可
財産評価や申告期限の扱いも通常相続と異なる
少しでも不安があれば専門家への相談を検討しましょう